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皮膚科のトリビア

皮膚科医になって20年以上がたちました。皮膚科の事ならだいたいはわかっているつもりですが、まだまだ知らないこともたくさんあります。ここでは、学会や講演会で聞いた「へぇ〜」をご紹介していきたいと思います。私自身の覚え書きにもなりますので。なお、講演内容からの耳学問で、ご講演の先生のご承諾はいただいておりませんので、あしからず。

OHIOチェンバーで抗ア剤の効果を評価する

某抗アレルギー剤発売記念講演会から(平成19年9月15日)

花粉抗原暴露室の話。湿度45%、気温22℃に保たれた、5m四方のガラスで密閉された部屋で中央に煙突があり、そこから8000個/m3のスギ花粉が出て、四隅の空調機で室内をグルグル回っている。12人までの被検者がほっかむりをして入室し、抗ヒ剤の内服前後のくしゃみの回数、かんだ鼻水を含んだティッシュペーパーの重量などを比較するという臨床試験を行うことが可能。

花粉は市販の袋詰めのものを買ってくるとのこと。売っているとは知らなかった。ほっかむりをしなければ、まぶたに皮膚炎が生じる人もいるのではないだろうか。

創底の細菌感染とNERDS&STONES

神奈川県皮膚科医会在宅医療勉強会から(平成19年9月13日)

褥瘡・下腿潰瘍などの慢性皮膚潰瘍の創底管理で問題になる細菌感染症の臨床的なアセスメント法。創底の細菌負荷を、以下の4つのステージに分類する。1)contamination:創底に細菌がのっかっている状態、2)colonization:組織障害や治癒の遷延には至らない安定した状態、3)critical colonization:治癒がストップし、生体の免疫反応としての炎症の初期の状態、4)deep infection:細菌がより深部に、または周囲に向かって増殖し、強い炎症反応とともに組織障害が進行する状態。3)のcritical colonizationでは以下のサインに注目し(NERDS)、局所的な抗菌剤を使用する。 Nonhealing wound:傷がよくならない(4週で20%〜40%の縮小がない) Exudative wound:滲出が多く、創周囲が白く浸軟する Red and bleeding wound:肉芽が盛り上がりすぎて、易出血性 Debris in the wound:黄色ないし黒色の壊死組織 Smell from the wound:緑膿菌ないし嫌気性菌の腐敗臭 4)のdeep infectionでは以下のサインに注目し(STONES)、全身的な抗菌剤を使用する。 Size is bigger:細菌感染による深達性ないし表在性の潰瘍拡大 Temperature increased:細菌感染による周囲の発熱 Os(probe to or exposed bone):骨髄炎の危険がある骨の露出 New areas of breakdown:主病変の周囲の潰瘍新生 Exudate, erythema, edema:炎症に伴う滲出、紅斑、浮腫 Smell:緑膿菌ないし嫌気性菌の腐敗臭

critical contaminationではAg含有の被覆材、外用剤が推奨されている。横文字の略語はともかく、今までの臨床的な経験から、だいたい見当がつく。

車いす用の褥瘡予防クッション

神奈川県皮膚科医会在宅医療勉強会から(平成19年9月13日)

寝たきりの褥瘡予防は体圧分散エアマットで飛躍的に進歩した。しかし、車いすに長い時間座りっきりが原因で生じる座位褥瘡は対応が遅れていた。特に施設入所の高齢者で、尾骨部周囲、臀列部上方の左右の褥瘡をよく経験する。そこで可視化車いす(ガラス張りで下からカメラを撮ることができる)を作成し、体圧分散と姿勢保持の両方を兼ね備えた車いす用エアーセルクッションが開発された。エア調整を自動化し、底付きを感知するセンサーを置き、体圧分散を行うとともに、両サイドに大きくやや硬いセルを配置し、座位の姿勢が不安定になるのを解消している。Medi-Airという商品名で近々商品化されるとのこと。

さっそく介護保険の適応になればと思う。なかなかうまい治療法がない、臀部角化性苔癬化皮膚にも有効か。

乾癬のcoral reefは外用していない証拠である

乾癬治療フォーラムから(平成19年9月4日)

coral reef psoriasisとは、厚くて岩のような鱗屑がガチッと付いている乾癬のplaqueをさす。一般的に外用に抵抗性といわれているが、鱗屑を剥がすような薬剤を使用しなくても、ステロイド軟膏の外用だけで改善することがわかった。つまり、coral reef plaqueをみたら、それはadherenceがpoorな証拠、つまり外用をしていないということを意味する。皮膚科医自身は外用の指導が不十分であったことを認識しなければならない。

われわれが反省しなければならないというのは、たしかにその通りかもしれない。頭の厚い鱗屑は、某先生に教えてもらった親水軟膏パックを入浴1時間前にやってもらうことが多いが、他の先生方はいかがであろうか

NBI内視鏡で毛細血管をみる

第14回 Alliance Hodogayaから(平成19年9月1日)

消化器内視鏡の話。2006年6月から販売されている内視鏡では、狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)ができるようになった。血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された2つの波長(390〜445nm/530〜550nm)の光を照射することにより、粘膜表層の微細構造や毛細血管を観察でき、拡大内視鏡とともに使うと、赤血球が動く様子さえみえる。これによって、上部消化管では咽頭癌、喉頭癌早期食道癌、バレット食道癌、大腸では平坦型病変などの前癌病変の発見が飛躍的に進歩した。

他科領域だが、先進的でおもしろかった。ダーモスコピーの先から出る光の波長を変えるなど、皮膚病変にも応用できるのではないかと思った。

在宅での褥瘡ケアの問題点とその対策

横浜市立市民病院研修会から(平成19年8月30日)

日本在宅褥瘡創傷ケア推進協会が設立された。多職種の在宅医療従事者同士が互いに情報交換することにより、在宅褥瘡の現状を把握し、問題点を抽出して、対策を立てることを目標としている。重要な項目としては@利用者、家族の意向の尊重、A在宅と施設間の適切な連携、B在宅における褥瘡治療法、C在宅栄養療法、D有効な体圧分散法、E寝たきりにさせない予防的運動療法、F壊死組織除去や難治化した創に対する有効な局所療法、を挙げている。

講師として参加したが、この協会の存在は知らなかった。活動を期待したいところだ。褥瘡学会からも在宅のマニュアルがでるらしい。

ストレスの定量とストレス感受性

第25回日本美容皮膚科学会から(平成19年8月18日

ストレスの定量は、従来は血中あるいは尿中コルチゾールを指標としていたが、日内変動が大きく評価が難しい。最近では、ストレスに際してのステロイド合成に重要といわれている末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)の計測が可能となり、有用である。ヒトの場合には血小板が測定に用いられる。血小板PBRの値は個人によって大きく異なり、最大20倍の開きがあるが、不安の心理テスト(STAI)を用いて検証すると、PBR値が高い人は不安になりやすく、PBR値が低い人は不安になりにくいことがわかった。血小板の寿命は8日から10日なので、測定されたPBR値は過去1週間にわたり血小板に写し撮られたストレス履歴と言える。また、日本人のPBR遺伝子485における遺伝子多型をみると、G/A置換のないGGの人が60%、GA置換をもつ人が33%、AA置換をもつ人が6%であったが、GAないしAAの人の血小板PBR値は置換のないGGの人の半分ほどで、ストレスに強いことを示唆している

アトピー性皮膚炎や蕁麻疹ではどうなのか。臨床に使えそうだが、どこで測ってくれるのだろう。当院でもcocoro meterで唾液中アミラーゼの計測を行っていたが、あまり症状と相関せず、また、日内変動を考慮するといつ測ればいいのかがわからず、データを出すまでには至らなかった

ダーモスコピーでプクプクをみたら、皮膚ウジ症と診断できる

第813回東京地方会から(平成19年7月21日)

コスタリカへ旅行、帰国後に側腹部の結節に気づく。粉瘤の疑いで切開すると、中からヒトヒフバエのウジが出てきた。ウジは、皮膚に穴を開けて尾端の気門を外に出して呼吸しているので、ダーモスコピーでみると、プクプクと泡が出てくるので、これだけで確定診断可能とのこと。

術前検査による術前診断も大切だが、ゆっくりみていないで、早く取ってあげた方が、、と思った。

経過の長い重症の乾癬に下痢と腎不全、何を考えるか?

第25回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成19年7月19日)

数10年来の重症な関節症性乾癬の患者。下痢に加えて血清中クレアチニンの上昇をきたした。腎障害は進行し血液透析に至る。診断は、慢性の皮膚の炎症によって、血清中amyloid A蛋白が持続的に高値であったことが原因のsecondary systemic amyloidosisだった。皮膚にはアミロイドの沈着はないが、十二指腸と腎に沈着があった。ただし、全例そうなるわけではなく、アミロイドの沈着を処理できない遺伝的背景が発症に関与しているらしい。先天性表皮水疱症でも同様の合併症があるので、注意が必要。

SAAは皮膚疾患においても、やはり大事な炎症マーカーだと思う。皮膚疾患でルーチンに測るようにして3年ほどたつが、そろそろまとめる必要があるかもしれない。

HAIR-AN症候群・SAPHO症候群

第25回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成19年7月19日)

HAIR-AN症候群:女性に生じる。hyperandrogenism(HA)、insulin resistance(IR)、acanthosis nigricans(AN)の頭文字。黒色表皮腫が診断の契機になり、U型糖尿病の診断に至ることがある。 SAPHO症候群:Synovitis、Acne、Pustulosis、Hyperostosis、Osteitisの頭文字。骨関節病変を伴う好中球の関与する疾患は、日本では膿疱性乾癬ないし掌蹠膿疱症、欧米ではacneの患者が多い。

頭文字症候群は冠名症候群以上にすぐ忘れる。知っていると症状・合併症が思い出せるので便利なのだが。CREST、POEMS、TORCH、HELLPなどなど。RUDやJOBは人名だったか、症状を思い出そうにも出てこない。だれかがまとめてくれるとよいのだが。

角化型足白癬は終局病態ではない!

第56回神奈川医真菌研究会から(平成19年7月14日)

高齢者施設からの報告。足白癬を治療しないで放置するとどうなるかという話。入所者80%に足の爪白癬をみとめるが、角化型足白癬はほとんどいない。足白癬は、その終局像として、角化型足白癬に至る、という経過を想像するが、実はそうではなく、寝たきりになると足蹠は、逆につるつる、ふにゃふにゃになってしまうという。小水疱を伴うことも少なく、薄い鱗屑ついている程度だが、鏡検ではしっかり糸状菌が認められる。寝たきりのため、表皮にも廃用が生じているのであろう。言い換えれば、角化型足白癬は、健康サンダルの使用に代表されるように、たえず足蹠に物理的な刺激が加わった状態で発症すると言える。

確かにその通りだと思った。つるつるふにゃふにゃ型足白癬という呼称が広く普及することを期待する。

涙による蕁麻疹

第2回横浜皮膚免疫アレルギー懇話会から(平成19年6月29日)

コリン性蕁麻疹の患者で時に眼瞼の浮腫をきたす例があり、時に開眼不能になる場合もある。これらの患者では、コリン性蕁麻疹を伴っており、涙に対する過敏症状がある。涙がやや黄色っぽいのが特徴。涙を採取して、それを薄めて点眼すると、症状の誘発が可能。運動をした際に出る涙の方が、タマネギで誘発した涙よりも症状が強い。汗によっても誘発されることがある

汗過敏は聞いたことがあるが、涙過敏とは恐れ入った。神戸系の講演はいつも楽しく聞いている。ところでクインケの浮腫ではどうだろう。眼瞼の患者は涙過敏、口唇の患者は唾液過敏?今度調べてみよう。

組織でリンパ毛細管が拡張している時に考えること

第32回横々会から(平成19年6月28日)

正常の皮膚組織では、真皮のリンパ毛細管は見えない。これが見える時には、1)組織液をうまく吸収できない場合(浮腫)と、2)弾性線維が変性してしまっている場合(pseudoxanthoma elasticum、Pringle病、SLEなど)がある。リンパ毛細管の拡張を見逃さないことが大切。Nonne-Milroy-Meige 症候群という先天性の足背のリンパ浮腫を来す疾患があることも留意しておくこと

先天性のリンパ浮腫は今まで経験がないが、外胚葉奇形を伴う遺伝性の疾患がいくつもあるようだ。今後は注意してみていこう。

蛇行性穿孔性弾力線維症の治療にビタミンA外用が用いられる

第812回日本皮膚科学会東京地方会から(平成19年6月16日)

ウィルソン病に対して使用中の、D-ペニシラミン内服によって腋窩に生じた、特有の皮膚病変。D-ペニシラミンは結合織の架橋形成の阻害作用があり、elastinのアルデヒド型に直接結合するため、経表皮的排泄をきたすことがある。治療では、tazarotene外用が有効な症例があるとのこと。

tazaroteneはビタミンA誘導体で、TazoracあるいはZoracという名前で欧米でacneに使用されているようだ。2008年に発売されるadapaleneではどうだろうか

PRP(platelet rich plasma)による難治性潰瘍・瘻孔の治療

第22回日本皮膚外科学会から(平成19年6月10日)

自家血を採血し、遠心分離して得られたplatelet rich な血漿分画に、KClとトロンビンを加え凝集、活性化し、ゲル状となったPRP(platelet rich plasma)を難治性の下腿潰瘍や褥瘡の瘻孔に外用、注入する治療法があり、有効である

これは知らなかった。PDGFやTGF-βなどの成長因子を多く含み、創傷治癒が促進されるとのこと。機会があればやってみよう。疣贅に液体窒素凍結を行ったあとにできる血疱をはがした時のねっとりした感じを想像した。調べてみると、歯科口腔外科のほか、しわ伸ばしなどの美容目的でも盛んに使われているようだ。

乳児の頭部脱毛斑ではcranial meningoceleに注意

第27回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成19年6月6日)

脱毛をきたす脱毛症以外の皮膚病の話。乾癬、掌蹠膿疱症、DLE、SLE、PSS、尋常性天疱瘡、癌の皮膚メタ、粘液水腫、Cronkhite-Canada症候群、aplasia cutisなど。色々な疾患を鑑別する必要がある。また、乳児の限局的な脱毛斑では、meningoceleが下にある可能性があるので、安易な処置や治療を行わないようにすることが大事。

経験はないが、触診が大事だろう。穿刺などしたら大変なことになる。

光毒性反応、春のアワビのキモには今でも注意が必要である

第12回横浜南西部皮膚科勉強会から(平成19年5月31日)

クロレラ加工品で有名になったな光毒性反応。クロロフィルからMgが抜けて、フェオホルバイトになると皮膚に光毒性反応を生じる。現在はフェオホルバイトの含有量を規制しているので、少なくなった。そのほか、最近はやりのアロマオイル、春のアワビのキモ、野沢菜の浅漬けなどには注意が必要。

アワビのキモは昔から有名らしい。私だけが知らなかったようだ。春先のphotodermatosisでは貝類の摂取を聞いてみよう。意外に、micropapular light eruptionなどでも関係がある?

多型慢性痒疹はピロリの除菌でよくなる

第23回日本臨床皮膚科医会総会から(平成19年5月20日)

多型慢性痒疹の患者14例で、便中のヘリコバクター・ピロリ抗原の有無を検索した。14例中10例で陽性だった。そのうち7例に対して、AMPC、CAM、PPIによる除菌治療を行った。5例で除菌終了後、3〜14日後に皮膚症状が軽快し、さらに4例では再発を認めなかった。

再燃を繰り返すため、当院では症例がたまっている。抗原の検出をやって、陽性なら除菌をお願いしてみよう。ただし、CAM自体が色々と免疫調整作用を持っているため、という可能性も否定できないと感じた

「ステロイド軟膏を塗ると黒くなる」は文化結合症候群である

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月22日)

アトピー性皮膚炎の外用剤のEBMの話。ステロイド軟膏を塗ると色が黒くなるという、よくある患者さんからの不安に対し、炎症が治まった後の色素沈着であると常識的に答えるよりは、火事の焼けあとが黒いのは、火が燃えたためで、消防士が水をかけたからではないと答える方がわかりやすい。なお、ステロイド軟膏を塗ると色が黒くなると思っているのは全世界的には日本人だけで、これは文化結合症候群である。

ある地域・民族・文化環境によって発生しやすい精神疾患を文化結合(依存)症候群というらしい。その辺もおもしろかった。

特化則による皮膚検診とタールピッチ皮膚症

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

足背・下腿・手背などの多発性の有棘細胞癌と表皮細胞異形を伴うびらん。職業は漁師で50年にわたり、網の補強のためコールタールを素手で塗っていたことが原因のタールピッチ皮膚症と診断された。労働安全衛生法に基づき定められた、特定化学物質障害予防規則(特化則)では、タールピッチを使用する労働者には半年に一度の皮膚検診が義務づけられているとのこと。

電離放射線検診は大学時代に行っていたが、恥ずかしながら、法規自体を知らなかった。法律にはなかなかなじめないが、安全衛生情報センターのHPに詳しく書かれているので、ひまがあったら勉強しておこう。

寒いと体幹から多量の汗をかく遺伝性疾患

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

cold-induced sweating syndromeというまれな疾患がある。幼児期から生じる発汗異常で、夏には汗をかかず、冬になると体幹、腋窩などからの発汗が顕著となる。外気にさらされている顔や手足には発汗がない。脊柱側弯、外反肘、手指のPIP関節の腫脹・変形などの骨格異常を伴い、また指間の皮膚が水かき状で、歯牙の脱落も認めた。ciliary neurotrophic factor (CNTF) receptorの第2リガンドであるCRLF1の遺伝子変異が原因の常染色体劣性の遺伝性疾患であることがわかっている。

よくぞ、このような症例を見つけたものだと感心した。それにしても遺伝子変異まですでに見つかっているとは驚きである。

ペリシットはニコチン酸アミドのプロドラッグである

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

高齢者の水疱性類天疱瘡に対して、ステロイド全身投与前に試みてよい治療にミノサイクリン+ニコチン酸アミドの併用があるが、高脂血症治療薬であるペリシットはニコチン酸アミドのプロドラッグで、体内で代謝されニコチン酸アミドとなる。ペリシット1000mgが885mgのニコチン酸アミドに相当する。ただし、耐糖能異常の副作用があるので、血糖には注意しなければならない。

これは知らなかった。今度使ってみよう。特に高脂血症を伴う口唇炎や口角炎などにも使えそうである。

イトラコナゾールパルス後にウイルス性の急性発疹症がおこることがある?

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

イトラコナゾールパルス終了後に生じた発熱を多型紅斑の2例のうち、1例は内服テスト陽性。1例は内服テスト陰性で、その後の2クールでは発疹の出現なし。後者では一時的に白血球減少を伴い、イトラコナゾールによる免疫系の変調?が引き起こしたウイルス感染症かもしれない。

2例目は、よく残りの2クールを施行できたものだと感心する。白血球の低下が鑑別に重要なのかもしれない。

帯状疱疹の数年後に生じた肉芽腫

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

高齢者の腰部・下腹部(右Th11領域)に帯状疱疹が生じ、通常通りの治療を受けた。その2年後、罹患部位、およびそれからやや離れた背部にも、痒みを伴う多数の扁平に隆起する、やや硬い、大豆大までの赤い小結節が生じた。組織学的には類上皮細胞・多核巨細胞を伴う肉芽腫性病変で、帯状疱疹後肉芽腫(postzoster granuloma)と診断した。

これだけ帯状疱疹の患者をみているのに、1例の経験もない。組織も瘢痕ではないし、肉芽腫であることは間違いない。巨細胞中にvaricella-zoster virusを証明した報告もあるようで、いわゆる異物反応か。

亜急性結節性遊走性脂肪織炎という疾患

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

亜急性結節性遊走性脂肪織炎(Vilanova's disease)は、30〜60歳の女性に生じ、多くは片側の下腿伸側の無痛性の紅斑で始まり、2〜3週間で10〜20pの局面に変化し、古い病変は硬化を伴ってくる。潰瘍化や静脈炎の合併はない。生検では脂肪小葉間結合織に種々の程度の肉芽腫性、線維性の変化を認める。治療ではヨードカリが有効で、数週間で治癒するが、再発をきたすこともある。原因は不明だが、溶連菌感染や甲状腺疾患に伴うことがあるとのこと。

これは、初めて聞いた病名であった。今まであったかもしれないが、静脈瘤性症候群や結節性紅斑と診断しているだろう。記憶にとどめておこう。

水和が皮膚炎を起こす!

第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)

おむつや生理用ナプキンで生じる皮膚炎には高湿度環境による水和(hydration)が原因のひとつと考えられる。水和閉塞負荷が及ぼす影響を検討するため、生食を含ませた綿を健常人の膝膕部皮膚に24時間貼付密閉し、検討した。その結果、70%に皮膚炎が発症した。皮膚炎発症群では水和閉塞直後のTEWLが高く、角層の厚さの増加が少ない傾向にあった。また、皮表では皮膚炎の有無にかかわらず、Staphylococcus属の菌が増加したが、皮膚炎のない被検者では速やかに減少して通常状態に戻るのに対し、皮膚炎が生じた被検者では、細菌の減少が遅れる傾向にあった。したがって、水和閉塞による皮膚炎の発症には、角層の水分保持能の低下および、ブドウ球菌属の関与が示唆された。

もともと水分保持能のよくない、アトピー性皮膚炎やドライスキンがあると、高度湿潤環境で湿疹が誘発されやすいということ。細菌の増殖も関与しているようだ。これはまさに、サッカーシンガード皮膚炎で経験した状況であり、興味深かった。

疥癬虫は水尾(みお)の先にいる

第30回横浜西部皮膚科臨床懇話会から(平成19年4月14日)

疥癬トンネルの詳細な観察。疥癬虫は、角層が柔らかくて掘りやすいため、皮膚の皺を好む。また、角層に潜って前に進んでいくため、水面に水鳥が残すような水尾の先、Y字型鱗屑の根もと、ないし涙型の痂皮のとがった所にいる。また、ダーモスコピーでは、茶色い「ほっかむり」として成虫そのものを確認できる。

これは指摘の通りである。水尾・ほっかむり・涙型の痂皮など、表現が大変ユニークで忘れがたい。

ビタミンD3製剤は酸性の軟膏と一緒に使ってはいけない

アトピー性皮膚炎と抗アレルギー薬講演会から(平成19年4月12日)

乾癬の治療薬、ビタミンD3外用剤は酸に不安定なため、混合はもちろん重擦もしてはいけない。角質溶解剤のサリチル酸ワセリン、ウレパール軟膏(0/W)、また、デルモベート軟膏の後発品であるマイアロン軟膏にもクエン酸が入っているので、注意が必要。

当院でも足蹠の乾癬や掌蹠膿疱症で併用処方している例があるかもしれない。気をつけよう。

アフラビノーシス(ビタミンB2欠乏)による口唇炎と腺性口唇炎

第116回横浜市皮膚科医会から(平成19年4月8日)

糖尿病などでビタミンB2が欠乏した際に生じる、粘膜病変の臨床例。紅斑局面の中央にびらんがあり、その周囲に乾いた鱗屑を付着するのが特徴。また、これに似た疾患に腺性口唇炎(cheilitis grandularis)があり、下口唇粘膜の小唾液腺開口部に点状のびらんや陥凹を認め、分泌管の拡張と種々の程度の炎症を伴い、小児に多い。

口唇炎も原因の鑑別が難しい。口唇炎や口角炎は、広く一般的にもビタミン不足と思われているが、なかなかそれが原因だと確信をもって診断することはほとんどない。口唇炎の治療では、慣習的にB2とB6を用いることが多いが、実際の血中濃度を調べたことはそういえば、一度もない。今度調べてみようか。

DIHSはDIHS/DRESSで報告した方がよい?

第4回相模原皮膚科学セミナーから(平成19年4月7日)

DIHS(Drug-induced hypersensitivity syndrome)の診断基準は、日皮のHPにある通りで、1)限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑で、多くの場合、紅皮症に移行する。2)原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3)38℃以上の発熱。4)肝機能障害。5)血液学的異常。6)リンパ節腫脹。7)HHV-6の再活性化、である。この診断名は患者の救済を目的として提唱された診断名という一面があるが、これに対して、国外からは、薬剤性アナフィラキシーなどの即時型のアレルギーを想像させるという批判があるようで、欧州では、DRESS(Drug Reactions with Eosinophilia and Systemic Symptoms)という、臨床を重視し、HHV-6の再活性化を伴うことを条件としない病名が用いられている。DRESSの中に、HHV-6の再活性化を伴うDIHSが含まれると考えてかまわないが、横文字の報告は、DIHS/DRESSとして報告した方がよいとのことである。

米国ではDIDMOHS(Drug Induced Delayed Multi-Organ Hypersensitivity Syndrome)という病名もあるようだ。全世界的にDIHSでいいと思うが、政治と同様に、総意が必要ということか

タバコが原因の口腔粘膜病変

Dermaフォーラム2007から(平成19年3月10日)

ヘビースモーカーの硬口蓋に生じる白板症(leukokeratosis nicotinica palati)、時に頬粘膜、下口唇粘膜にも発生する(stomatitis nicotinica)。早期には粘膜が乳白色に混濁し、その中に唾液腺開口部に一致する点状の赤い斑、ないし光沢のある白色の病変を伴う(粘膜上皮細胞の空胞変性)。慢性に移行すると不規則な白色角化局面となり、粘膜上皮は肥厚し表面が皺状に凹凸するが、全経過を通して炎症性の潮紅は伴わないとのこと。

そういう診断をつけたことがない。ただ、当院の電子カルテで使っているICD10にも、ニコチン性口蓋白色角化症、ニコチン性口内炎という病名がちゃんと入っていた。

ANCAに影響を与える因子

第8回関東皮膚脈管懇話会から(平成19年3月11日)

顕微鏡的多発血管炎の疾患マーカーであるMPO-ANCAに影響を与える因子のまとめ。1)シリカ:重症の肺・腎障害が多い。阪神大震災で倒壊した建造物の撤去作業に従事した症例がある。2)薬剤:プロパジールでは21例中13例(48%)、メルカゾールでは34例中3例(9%)で陽性になるという報告がある。3)黄色ブ菌:細菌感染がトリガーになり、MPAが発症することがある。

シリカについては知らなかった。なお、PR3-ANCA陽性のWegener肉芽腫症が欧州に多く、MPO-ANCA陽性のMPAが日本に多いという、人種、遺伝的要因も関連しているとのこと。

爪白癬のイトリゾールパルスは喫煙、飲酒、運動不足で効きが悪い?

Dermaフォーラム2007から(平成19年3月10日)

爪白癬のイトリゾールパルス療法の改善度を生活習慣によって比較した。パルス療法6ヶ月後の改善度は、著効・治癒が喫煙者で33%、非喫煙者で44%、また飲酒の週間がある患者では36%、ない患者では48%、また、スポーツ習慣のある人に治癒症例数が多い傾向があり、飲酒・喫煙・運動不足で効きが悪いという結果だった。

何となく、わかる気がする。治療に熱心かどうかの性格と生活習慣の関連か。

mutiple benign lichenoid dermatosesという病名

墨東病院オープンカンファレンスから(平成19年3月8日)

露光部に発生し、老人性色素斑に炎症を伴い、組織学的に苔癬型反応を認めるlichen planus-like keratosis、あるいはbenign lichenoid keratosisと考えられる個疹が、四肢の露光部に多発する疾患に対して、mutiple benign lichenoid dermatosesという病名がある。文献によると、比較的高齢の女性に多く、先行する老人性色素斑の完全ないし部分的な消褪をみることが多いようだ。

これは最近よく目にする疾患である。当院ではLPLK like LPと呼んでいたが、既報告に従うことにしよう。ただし、文献には自然消褪もあり、ステロイド外用で数週間で改善するということだが、それ以上にかかる例が多いような気がする。一度ちゃんとまとめてみよう。

ニキビをみたときに考えねばならないニキビ以外の疾患

第26回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成19年3月7日)

ニキビに似るがニキビでない疾患の話。perioral dermatitis、本態性のrosacea、油症、ヨード疹、クロールアクネ、ヒダントインやイソニアジドによるacneiform eruption、Nevus comedonicus、ざ瘡型の亜急性単純性痒疹、atrophoderma vermiculata、vascular spider、hydroa vacciniforme、eruptive vellus hair cystなど。このほか全身疾患の症状として、クッシング症候群、クローン病、ベーチェット病、副腎性器症候群を考えなくてはならない。

なるほど。「痒疹のざ瘡型」は印象的だった。顔に限局する痒疹で、血液透析に伴うことが多いらしい。さっそく明日からの診療に役に立つ。

表皮水疱症を骨髄移植で治療する!

第123回神奈川県皮膚科医会から(平成19年3月4日)

骨髄の中には造血幹細胞のほかに様々な臓器・組織へと分化する間葉系幹細胞がある。皮膚の再生に基底層にある幹細胞の他に、骨髄中の幹細胞が関与しているかどうかを調べるため、GFPという蛍光を発する蛋白の遺伝子を導入した骨髄を移植したマウス(GFP-BMTマウス)を作成した。そのマウスの皮膚にキズを作ると、特殊な条件下では半数近い表皮基底細胞がGFP陽性となった。生体には、組織が損傷した場合、その組織になる能力のある体性幹細胞を、骨髄から血流を介して引っぱってきて、できる限り短期間で組織の修復を行うという機構があることが証明された。また、皮膚が大量に欠損したときに、欠損部の皮膚が出す、骨髄幹細胞を呼んでくる因子(コイコイシグナル)も明らかになりつつある。先天性表皮水疱症や重症熱傷などに骨髄幹細胞移植が治療として用いられ、またコイコイシグナルの遺伝子導入によって皮膚の再生が短期間に行えるようになるかもしれない。

夢のある大きな仕事で感動した。再生医学と遺伝子治療の融合は、大きな可能性を秘めていると思った。

乾癬は10を超えたら全身療法の適応である

第1回横浜皮膚病免疫治療研究会から(平成19年2月22日)

乾癬患者では、特に衣服の選択、入浴、スポーツ活動においてQOLが障害されており、また、英国の調査ではうつ症状も62%の患者に認められた。また、QOLのスコアが高いほど服薬のアドヒアランスが低下し、それがさらに乾癬を悪化させる負のスパイラルが存在する。したがって、乾癬患者の治療ではQOLの評価が重要である。また、体表面積(BSA、手のひらが1%)、PASIスコア(self PASIスコアの方が楽)、PDI(Psoriasis Disability Index)のいずれかが10を超えた症例は重症と見なし、シクロスポリン内服などの全身療法を考慮する必要がある(10の法則)。

PDIのほかにもDLQI(Dermatology Life Quality Index)は知っておかないといけないようだ。さっそく準備しよう。

慢性皮膚疾患のセルフマネジメント

日本皮膚科学会東京支部総会から(平成19年2月18日)

糖尿病などの慢性疾患において、患者自身が管理しなければならないことは、以下の3つである。1.治療の管理:くすりの服用など、治療方針について医師と話し合い、自ら正しく実行していくこと。2.社会生活の管理:慢性疾患と上手につきあいながら、仕事をしたり、家事や育児をしたりといった役割をとっていくこと。3.感情の管理:病気があるために感じる怒りや疲労感、無力感、不安などと向き合い、対処すること。2005年秋に日本慢性疾患セルフマネジメント協会(http://www.j-cdsm.org/)が設立され、ワークショップの開催のほか、教材の開発、人材育成などの事業を行っているとのことである。乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚科の慢性疾患でも有意義なプログラムである。

当院の患者さんにも紹介していくことにしよう。社会的な活動として、学会や医会が取り組んでいく必要があると思った

女性のびまん性脱毛の原因と鑑別

日本皮膚科学会東京支部総会から(平成19年2月18日)

女性のびまん性脱毛は、@女性の男性型脱毛(female pattern AGA:FAGA)、A休止期脱毛(後頭部は起こりにくい)、B加齢(伸びるスピードが遅くなり、全体として少なくなる)C全身性疾患に伴うもの(polycystic ovary、粘液水腫など)があり、Aはさらに、(1)acute telogen effurium(出産後、ダイエット)、(2)chronic diffuse telogen effurium(内科的疾患)、(3)chronic telogen effurium(薬剤性など)にわけられる。原因となる薬剤には、抗癌剤以外では、三環系抗うつ剤、SSRI、リチウム製剤、βブロッカー、メチルドーパなどがあり、またベサフィブラート、シンバスタチンなどの高脂血症治療剤では内服して3〜4ヶ月たってから脱毛を生じることがある。また、閉経後にぐるりとハチマキ型に脱毛を生じる、post menopausal fibrosing alopecia(PMFA)という特殊なタイプの脱毛症がある。

いろいろあって難しい。薬剤性の脱毛症は診断が難しいが、具体的に名前が挙がったので、今後の診療に役に立つだろう。

シェーグレン症候群のリンパ球性血管炎

日本皮膚科学会東京支部総会から(平成19年2月17日)

下肢の筋肉痛、足関節の腫脹を伴う関節炎、しびれ、発熱。発疹は膨疹様の紅斑。ANCAは陰性。血管炎を疑ったが、細胞浸潤はリンパ球主体。抗SSA抗体陽性と下口唇の生検からシェーグレン症候群に伴うリンパ球性血管炎と診断した。PSL20mgの内服で軽快。関節症状が強いのが特徴のようだ。

病名はともかく、シェーグレン症候群のひとつの皮膚症状と考えよう。たしかに臨床症状は血管炎に似ていると思った。

花粉症ではクスリで眠くならない人の方がクスリが効いている?!

横浜市耳鼻科医会・花粉症講演会から(平成19年2月7日)

第2世代の抗ヒスタミン薬の効果の比較の話。3種類の抗ヒ剤を比較したところ、3者で優劣の違いはなかった。しかし、それぞれにおいて、日中の眠気があった患者となかった患者の2群間で医師の判定による改善度を比較すると、いずれも眠気がなかった患者の方が、眠気があった患者より改善度が高かった。これらの抗ヒ剤では「眠いと効かない」と結論できる。

同じことが蕁麻疹やアトピー性皮膚炎でもいえるだろうか。眠気と効果は必ずしも比例しないというエビデンスはアトピー性皮膚炎でも出ているようだが、患者さんに効いてみよう。眠くなる抗ヒ剤は、即変更の必要がある?

スギ花粉症予備軍とは

横浜市耳鼻科医会・花粉症講演会から(平成19年2月7日)

スギ花粉症には予備軍があり、無症候性スギ花粉症と呼ぶ。スギ花粉特異的IgE抗体の量とは関係がなく、閾値では説明できない。12月末に取ったTリンパ球と3〜4月に取ったTリンパ球それぞれにCriJ1抗原を加えた際のIL-4とIL-5の産生性を比較すると、健常人ではいずれも産生性の違いなし、鼻炎症状を伴う患者ではIL-4、IL-5ともに産生性が亢進、無症候性花粉症患者ではIL-4は産生するが、IL-5は産生しないという違いがあった。また、特異的減感作療法が奏功したスギ花粉症患者では、CriJ1に対するIL-5産生が生じなくなることが判明した

スギ花粉皮膚炎の無症候性患者もあるのだろうか。同様の検査をするとおもしろいかもしれないと思った。

抗菌薬の効果を引き出す秘訣−PK/PDってなんだ

日本皮膚科学会東京支部・生涯教育セミナーから(平成19年2月4日)

抗菌薬のPK/PDとは、血中濃度と効果の間の相関性を示す指標である。体内動態(Pharmacokinetics:PK)のパラメーターは、最大血中濃度(Cmax)および曲線下面積(AUC)、薬理作用ないし抗菌活性(Pharmacodynamics:PD)のパラメーターは細小発育阻止濃度(MIC)を用いることが多く、PK/PDのパラメーターはCmax/MIC、AUC/MIC、t>MIC(time above MIC: TAM)などで示される。一方、抗菌薬には、薬物濃度がMIC以下でも菌の増殖が抑制されるというPAE(post-antibiotic effect)のある薬剤がある。キノロン、アミノグリコシドは濃度依存性で、PAEあり。抗菌力を高めるためには、1回投与量を増やして、Cmax/MICを高くする必要がある。セフェム、ペニシリンは時間依存性、グラム陰性菌にはPAEなし。したがって、抗菌力を高めるには投与回数を増やして、TAMを長くすることが必要。また、カルバペネム、マクロライドは、時間依存性でPAEありとのことである。

内服の使い方の革新。キノロンは3錠分1の方が、3錠分3より有効と言うこと。また、眼科領域の抗菌点眼薬でも様々なデータがある。皮膚科領域の外用抗菌剤には、だれも興味を持っていないようだ。

帯状疱疹後神経痛の病態とアロデニア

半導体レーザー治療研究会から(平成19年2月1日)

帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の発症によって壊れた神経が、治癒過程で本来つながっていない神経線維に配線がつながり(エファプス)、触覚・圧覚を伝達するAβ線維の刺激がAδ線維やC線維に伝わることによる痛み(アロデニア)を起こすことが主な原因で、シャツに触れた時などに感じる痛みはこのためである。また、交感神経からは常に電気的信号が送られており、それがエファプスを通してAδ線維に伝わるため持続痛と関連している。

皮膚に分布する神経については、かゆみの神経生理の話で時々耳にするようになったが、エファプス、アロデニアなどの単語は始めて聞いたような気がする。生理学や麻酔科の授業で出てきたかどうか、記憶にない。

歯周病菌が動脈内膜炎の原因になる

第30回皮膚脈管膠原病研究会から(平成19年1月25日)

歯周病菌のほとんどはグラム陰性桿菌で、通常は歯垢として歯と歯肉の間にバイオフィルムを形成している。しかし、、特に癌や糖尿病などの疾患あるいは高齢者などの免疫低下の状態では、これが血中に入ると心内膜炎や動脈内膜炎を起こし、それが血管の粥状硬化を増長させ、重要な心血管イベントの引き金になることが報告されているとのこと。

TV番組的であるが、おもしろい討論であった。

深部静脈血栓症の原因として、アンチトロンビンIII欠損症がある

第30回皮膚脈管膠原病研究会から(平成19年1月25日)

若い男性の症例。足を捻挫、ギブス固定をしていたところ、同側下腿に腫脹をきたし、血管エコーで深部静脈血栓症と診断された。へパリン投与で改善。原因は、先天性のアンチトロンビンIII欠損症で、父にも同症を認めた。本疾患は先天的な異常にもかかわらず、20歳から50歳ぐらいに外傷や妊娠を契機に血栓を生じることが多い。治療はアンチトロンビンIIIの補充療法が用いられる。

なかなかそこまで調べられない。血管エコーは皮膚科でも有用な検査であり、当院でも最近これを導入し、現在勉強中である。

腎不全患者では血清5-S-cysteinyldopa(5SCD)が高い

第811回日本皮膚科学会東京地方会から(平成19年1月20日)

血清5SCDは転移性のメラノーマの腫瘍マーカーであるが、慢性腎不全患者、化学療法中の患者、レボドーパを内服中の患者、さらに健常人でも夏季には高くなることがあるということで、注意が必要。

開業医ではまずやらない検査だが、一応そういうことがあることは知っておこう。

osteoimmunologyの最新の話題−Th17と関節リウマチ−

第2回筑駒医師会から(平成18年12月29日)

破骨細胞をめぐる免疫学の話。RAでは、滑膜が異常増殖し、そこに破骨細胞が過剰に形成されて骨破壊を起こす。滑膜内で破骨細胞形成を促す分子が、T細胞の膜上に存在し、リンパ球を活性化する分子として既知のRANKLであるとわかっていたが、T細胞はRANKLと同時に破骨細胞を抑制するIFN-γも作るため、どのようなT細胞が破骨細胞を増やすのかが不明だった。しかし最近、IL-23によって増えるTh17細胞だけが破骨細胞を増やす作用をもつことがわかった。Th17細胞は、IL-17を作り出すことで、周囲の細胞の炎症を引き起こすと同時に、RANKLを増やすことで、破骨細胞の形成を誘導している。

Th1、Th2、Tregまでは聞いたことがあったが、Th17は知らなかった。皮膚科で扱う自己免疫疾患にも関与していそうでおもしろそうである。

成人アナフィラクトイド紫斑病と抗カルジオリピンIgA抗体

第810回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年12月16日)

成人のアナフィラクトイド紫斑病患者20例(男性12例、女性8例)で、血中抗カルジオリピンIgA抗体を計測した。15例で検出され、平均は9.6U(正常は4.0U以下)であった。抗カルジオリピンIgG抗体、IgM抗体、および、抗β2GPI抗体は検出されなかった。臨床症状と平均測定値との関連では、15例の陽性例のうち、関節痛のある9例では12.0、ない6例では8.9、蛋白尿のある7例では13.0、ない8例では6.6、腹痛のある5例では7.5、ない10例では10.6であり、腎障害、関節痛と相関していた。

病因とも関連している可能性もあり、貴重な報告だった。

hypertrichosis lanuginosa

第31回横横会から(平成18年11月30日)

全身性の多毛症だが、そのすべてがうぶ毛で、ずっとhair patternが変わらない状態をいう。先天性と後天性があるが、後天性の全身うぶ毛は肺癌などの悪性腫瘍に合併する、デルマドロームである。

始めて聞いた疾患であった。調べてみると、直腸癌・膵癌などに伴った症例もあった。めったにはないだろうが、今後は注意してみていこう。

サイトメガロウイルス感染で生じた肛門部の潰瘍

第809回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年11月18日)

ネフローゼでステロイド内服中の67歳、女性。肛門部に深い潰瘍ができ、急速に全周に拡大した。発熱などの全身症状なし。生検でサイトメガロウイルス感染症に特異的な核内封入体を有する巨細胞が証明され、診断に至り、ガンシクロビルの投与で軽快した。

なかなか生検をしようと思わない場所だが、生検をしないとわからない。貴重な報告であった。HIV感染に伴って起こることも多いらしい。これは既感染の再活性化か、新しい感染の血行性播種か、それとも皮膚への直接の感染か、質問するのを忘れてしまった。

糖尿病性足病変のハイリスク因子と神経障害

第115回横浜市皮膚科医会から(平成18年11月11日)

糖尿病患者のフットケアについての総論。切断に至るようなハイリスク因子としては、1) 糖尿病の経過が10年以上、2) HbA1Cが7.0以上、3) 合併症特に糖尿病性腎症に対するHD、4) 喫煙、5) 独居の男性、6) 教育不足、7)切断の既往歴、があげられる。また、糖尿病性の神経障害と皮膚病変の関連は、知覚神経障害→痛みを感じない→潰瘍・壊疽の悪化や進行、運動神経障害→支配筋の萎縮→足の変形、自律神経障害→発汗の低下→乾燥・キレツの3つの要素がある。

足の皮膚の乾燥、キレツが糖尿病性神経障害と関連するのは知らなかった。角化型足白癬が糖尿病患者で多いのも、易感染性だけではないのかもしれないと思った。

ドライマウスでは口腔内のカンジダが多い

口腔カンジダ症学術講演会から(平成18年11月9日)

口腔外科の先生の講演。ドライマウスを主訴に来院した690名の患者の唾液分泌量を測定し、安静時唾液分泌量が15分で1.5ml以下、刺激時唾液分泌量(ガムテスト)が患者10分で10ml以下を指標とした。690名中295名では安静時、刺激時ともに減少、66名では安静時減少、刺激時は正常、106名では安静時正常、刺激時に減少、223名ではいずれも正常だった。これらの患者で唾液からのカンジダの培養を行ったところ、安静時、刺激時ともに低下していた295名のうち、69%からカンジダが培養され、コロニーの平均が375個、安静時、刺激時どちらか一方が低下していた、172名のうち、カンジダが培養されたのは67%でコロニー数の平均は66.8個、安静時、刺激時ともに正常であった223名からは、カンジダが検出されたのは48%で、平均コロニー数は7.8個であった。

きれいなデータである。カンジダが原因で口腔内乾燥が生じているとは思わないが、ドライマウスが口腔内カンジダ症の誘因になることがわかった。ちなみにドライマウスは、唾液分泌の低下(唾液腺の破壊・神経伝達の障害)と唾液の蒸発が原因だが、歯ぎしりをする人は、下顎の筋が疲れて口が開いてしまい、夜間口腔乾燥を訴えることが多いらしい。

キャッスルマン病とトシリズマブ

第65回日本アレルギー学会から(平成18年11月3日)

キャッスルマン病に対する、トシリズマブ(アクテムラ)の有効性の報告。キャッスルマン病、特に多発性のリンパ節腫脹をきたす多中心性キャッスルマン病では、IL-6の過剰産生が原因となって、臨床症状(発熱、倦怠感、やせ、皮膚の形質細胞腫、間質性肺炎など)あるいは検査異常(CRPや血清アミロイドAなどの急性期蛋白の上昇、血中アルブミン、ヘモグロビン、総コレステロールなどの低下)が生じるが、ヒト化抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)8mg/kgの2週間隔での静注によって、症状、検査異常ともに改善した。それに加えて、治療前には高値であった、total IgE、血中IL-4、RAST scoreや、血中VEGFも正常化したとのこと。

モノクローナル抗体の治療は非常に興味深く、期待している。癌の悪液質もIL-6の過剰産生による病態であるとのことで、コストはかかるが使えるのではないか。

アスピリン不耐症の治療はアスピリンの継続投与

第65回日本アレルギー学会から(平成18年11月3日)

アスピリン不耐症はCOX-1阻害作用を持つNSAIDに対して、喘息や蕁麻疹などの過敏症状を呈する後天的な薬理学的変調体質である。アスピリン喘息では、COX-1阻害薬による誘発のあとに2-5日間の不応期が生じる。これを利用して、アスピリンを連続投与することによって、NSAIDに対する耐性を維持し、発症の予防が可能である。まず50mg程度で軽度の喘息発作を誘発し、翌2日目はそれと同量、さらにその数時間後に2倍量を負荷。3-4日目はさらにその4倍量(200mg)、8倍量(400mg)を3-4時間ごとに投与し、耐性を完成させる。維持はアスピリン300mg-600mg/日で行っていくとのこと。ただし、皮膚型のアスピリン不耐症(蕁麻疹など)では病型が複雑で、耐性誘導の評価も一致していないらしい。

理論的には「確かにその通りだ」と思う。蕁麻疹での耐性誘導、維持療法の評価も必要だろう。

小麦の負荷は「おやき」で行う

横浜皮膚疾患研究会から(平成18年11月2日)

運動誘発性食物依存性アナフィラキシーの原因で最も多いのが小麦であるが、誘発テストの場合には小麦粉で作った20gないし100gの「おやき」を利用する。20gでは出ず、100gで出る症例がある。なお、アスピリン負荷をかける場合には、20mg、50mg、100mg、200mgと少ない量から始める必要がある。症例によっては200mgのアスピリン内服で、血中グリアジン濃度が5倍にもなることがあるとのこと。

このような負荷試験は、実際はどうやっているか、わからないことが多く、参考になった。ちなみに100g「おやき」は中力小麦粉(それがない時は強力粉と薄力粉を半々) を100g、サラダ油を大さじ1/2、塩を少々、熱湯を1/3カップ混ぜて、よくこね、棒状にまとめてぬれぶきんをかけ30分以上置いてねかせ、切り分け丸め、麺棒などで伸ばし、蒸すあるいは焼いて作るそうだ。また生地を小さく薄く伸ばすと、餃子の皮として使えるらしい。

フタロシアニン加工繊維がアレルゲンを吸着する

第2回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成18年10月28日)

金属フタロシアニンが花粉、ハウスダストなどのアレルゲンを吸着することが判明。加工繊維を用いて花粉症用のマスクの他、寝具、下着を開発。アレルキャッチャーという名称で商品化した。アトピー性皮膚炎でこの下着を使用したところ、かゆみスコアの低下を認めた(http://www.jst.go.jp/pr/info/info293/index.html)。さらに、給気口や空気清浄機・エアコンなどの家電向けフィルターもすでに商品化されている。

かゆみの抑制は理解に苦しむが、エアコンフィルターはいいだろうと思った。これから有名になるかもしれないので、名前は覚えておこう。

APSに対するワーファリンの使い方

第2回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成18年10月28日)

抗リン脂質抗体症候群では臓器や大血管の血栓予防が重要であり、抗血栓療法についての知識が必要である。ワーファリンの使用法については、まず、少ない量(1mg)から始めて、1.5mg、2mgと増やしていく。最初は3日に1回はINR(プロトロンビン時間のInternational Normalized Ratio)を測定し、1.6から2.0ぐらい、トロンボテストでは20〜30%で維持していくのがよい。いつまで内服するかについては、血栓に対する予防投与なので、一生涯とのこと。

皮膚科で治療することもあるだろう。覚えておかなくてはいけない。恥ずかしながら、INRという評価法を知らなかった。

抗核抗体、蛍光抗体直接法どこまでわかるか

第2回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成18年10月28日)

抗核抗体の検査は血清を希釈し蛍光抗体直接法を行う。この検査では@抗核抗体が陽性か陰性か、A抗セントロメア抗体(discrete speckled pattern)が陽性か、B染色パターンから抗原特異性がある程度わかる。逆に、SSA、SSB、Jo-1、1本鎖DNAは抗原が不安定で溶出してしまうため、この方法では抗核抗体としては検出できず、結果としては陰性となる。

検査結果を読む上で、大事な復習であった。

皮膚筋炎の顔の紅斑はマラセチアの菌糸型寄生がみられる

第50回医真菌学会から(平成18年10月21日)

脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さ、皮膚筋炎、ざ瘡の患者で、顔面脂漏部位のマラセチアの寄生形態をKOH直接鏡検で調べた。脂漏性皮膚炎では79例中、陰性15例、胞子型55例、菌糸型15例。アトピー性皮膚炎では50例中、陰性11例、胞子型28例、菌糸型1例。皮膚筋炎では5例中、陰性なし、胞子型1例、菌糸型4例であった。

癜風以外にも、皮膚筋炎の顔面脂漏部でマラセチアの菌糸がみられるらしい。どういう意味があるのか考えてみたい。

爪の空洞形成の原因菌はメンタである

第50回医真菌学会から(平成18年10月21日)

爪の先から中枢側に進展するクサビ状の混濁で、爪甲下に空洞を形成するものをdermatophytomaとよぶ。通常爪白癬の原因菌は90%がTrichophyton rubrumであるが、dermatophytomaから検出された真菌は90%以上がT. mentagrophytesであった。

SWOもメンタが多いようだし、メンタと爪の関連はなかなかおもしろそうだ。

ヤケイロタケと慢性咳嗽

第50回医真菌学会から(平成18年10月21日)

アトピー性咳嗽あるいは咳喘息の一部の患者の喀痰培養から、環境真菌であるヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)が検出され、全例咳嗽に対して抗真菌剤が有効であった。即時型アレルギーを惹起する環境真菌として注目する必要がある。

サクラの木の幹にくっついているサルノコシカケのようなクチャっとしたキノコ。こんなのが病因になるとは知らなかった。アトピー性皮膚炎との関連もあったりするのだろうか。

napkin psoriasisの長期経過

第5回横浜デルマカンファレンスから(平成18年10月19日)

生後1ヶ月前後の乳児の股部に発症する炎症性角化症。乾癬なのか、脂漏性皮膚炎なのか、カンジダが関与するのかで、結論が出ていない。通常は1歳頃までに軽快・消褪すると言われている。しかし、その後6〜7年以上経過をみた11例のうち、3例で4歳、6歳、14歳で尋常性乾癬が発症した。napkin psoriasisではやはり乾癬の素因が関与していると考えられる。

脂漏性皮膚炎の特殊な形で、すべてが自然経過で改善すると思っていたので意外だった。

日本人では眼皮膚白皮症(OCA)2型の軽症例が多く存在する

第57回中部支部学術大会から(平成18年10月8日)

OCA2型(P遺伝子関連型)は日本人のOCAの10%に認められる。OCA1型(チロジナーゼ関連型)より症状が軽く、日焼けを起こしやすいことは自覚していても疾病として認識していない人が多い。100名ほどの調査では、メラノソームの生合成に関わる蛋白をコードするP遺伝子のA481T alleleの変異を有するキャリアーが、日本人健常人のうち、heteroが20%で、homoが2%で認められた。

美白変異とよばれてきたようだ。近くにもいるかもしれない。UVによる皮膚癌発症には注意が必要とのことなので、注意してみていこう。

パスツレラ感染症は猫に引っ掻かれてもおこる

第57回中部支部学術大会から(平成18年10月7日)

パスツレラ感染症は通常は犬や猫に咬まれたあとに発症する。ペットの口腔内の常在菌で、犬では75%、猫では97%に認められる。ただし、猫はグルーミングをする関係で、20%では爪にも菌の保有が認められる。したがって、猫に引っ掻かれたあとに発症することもあるので、注意が必要。

口腔内の菌という認識があったので、咬まれた後だけ注意すればよいかと思っていた。猫が前足の先をペロペロなめている姿を思い出した。

下痢用のおむつの開発秘話

第15回皮膚科在宅医療勉強会から(平成18年9月14日)

難治性の下痢を伴っている患者の仙骨部の褥瘡の汚染回避に対して有効なおむつ(軟便吸収パッド)を作って、すでに市販されている(http://www.elleair.co.jp/takecare/)。水様便が8g、10秒間連射であるという観察から、まず濾過して液体成分と固形成分に分離し、液成分を吸収することで便モレと便による一次刺激を軽減した商品とのこと。

8g、10秒連射を突き止めるまでがかなり大変だったと思われる。このほか、褥瘡のポケットを確認するために鑷子を差し込むのは野蛮との見解から、柔らかいファイバーで先端に赤いライトがつくポケット検査用ライトの紹介もあった。医者では考えつかない仕事にはいつも頭が下がる。

デング熱とデング出血熱の違いは?

横浜皮膚疾患研究会から(平成18年9月7日)

デング熱とデング出血熱は、いずれもネッタイシマカなどが媒介するデングウイルスが原因で、高熱とともに風疹様の中毒疹を生じる。東南アジアなどの流行地に行った人の急性発疹症では念頭に置く必要がある。デングウイルス感染後、デング熱と同様に発症して経過した患者の一部に、突然に血漿漏出と出血傾向を主症状とすることがあり、デング出血熱とよばれる。点状出血、鼻出血、消化管出血などをきたし死に至ることもあるので注意が必要。血小板数のフォローが大事。

デング熱とデング出血熱は違うウイルスかと思っていた。どうすれば出血熱にならないですむかが、臨床医としては知りたいところである。国立感染症研究所のHPに詳しい解説がある

急性陰門潰瘍

第24回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成18年9月6日)

若い女性の外陰部にみられる深い潰瘍で瘢痕を残す。通常は慢性再発性だが1回きりで治癒する例もあり、感染症の除外が必要。かつては膣桿菌が関与するといわれていた。一般的には年齢とともに改善。幼児での発症はない。必ずしもすべてが不全型ベーチェット病というわけではないが、結節性紅斑を伴ったら、それも考慮するというスタンスでフォローすること。

不全型ベーチェット病が最近また増加してきたという報告がある。ちなみにベーチェットの陰部潰瘍は通常はアフタで、急性陰門潰瘍はsweet病の外陰部潰瘍にあたるとのことだ。

手を見てDarier病を診断する

横浜労災病院症例検討会から(平成18年9月6日)

手背から手指背面に径1mmほどの白色〜淡紅褐色の小結節が多発。一見、青年性扁平疣贅。疣贅状肢端角化症(acrokeratosis verciformis Hopf)と診断。爪甲が全体的に乳白色で、透明な縦の線条を伴うこととともに、Darier病にみられる手の症状の特徴である。

忘れかけた病名を思い出した。手背に扁平疣贅と思われる角化性小結節をみたら躯幹の観察が必要だ。

顕微鏡的多発血管炎(MPA)の皮膚科としての考え方

第7回関東脈管懇話会から(平成18年9月3日)

MPAの概説。ANCA関連血管炎のひとつで、MPO-ANCAが陽性であり、急速進行性糸球体腎炎、肺出血、皮膚症状が主症状。ときに多発単神経炎(乏血性末梢神経障害)と消化管出血をきたす。発症機序は、MPO-ANCAと結合して活性化された好中球が細小血管の血管内皮を損傷することであるが、罹患血管が細小血管であるため、血管壁の壊死性変化はおこらず、フィブリンも外へ流れてしまうため、フィブリノイドにはならない。また免疫複合体は関与しないので、DIFも陰性である。かつてはhypersensitivity angiitisといわれ、急性に増悪して生命予後が不良で、病因として抗甲状腺剤などの薬剤との関連が深かった。

血管壁の壊死性変化は認めないというところに注目。ここが内科・病理の意見といつも食い違うところだ。診断基準もPNと一緒では無理があると思われる。

フィンカー5分割って何のこと?

第2回神奈川県皮膚科医会サマーセミナーから(平成18年8月26日)

自分の講演で恐縮だが、AGAの内服治療の話。わが国ではプロペシア0.2mg錠あるいは1mgが認められているが、実はフィナステリドはプロペシアだけではなかったという事実を知った。そもそも前立腺肥大の治療薬である、フィナステリド5mgのプロスカー、あるいはそのジェネリックであるフィンカー・フィスタイドといった薬剤がインターネット経由の個人輸入で出回っている。5mg錠をを4分割、5分割してプロペシア1mg錠の内服と同じ効果を期待している。特にフィンカー5分割はコストが安くすみ(1mgあたり15円〜20円)、若者に人気があるとのこと。

そういう薬があって、そうしている人がいるという情報として大事。ただし適正使用ではなく、全く薦められない。ファイザーがバイアグラで調査をしたところ、正規品以外を内服している人が22%あったという。ただし、インターネットで販売されているものの半分は中国や南アフリカで作られている偽造品だそうで、WHOもこれについては警告を発した。プロペシアでも同じことが起こってきそうで、心配である。

油症を忘れるべからず

日本臨床皮膚科医会中国支部学術大会から(平成18年7月30日)

PCB、PCDFなどのダイオキシンが混入した米ぬか油を食したために生じた食品公害。クロールアクネが有名だが、そのほか歯肉・爪の色素沈着やコーラベビー(全身が黒い色素沈着の赤ちゃん)、マイボーム腺肥大とチーズ様眼脂、乳頭モンゴメリー腺増大などの皮膚粘膜症状がある。油症と認定された患者の検診では、30年たった今でも3-4割にクロールアクネの症状が残っているとのこと。

皮膚科医が覚えておく必要のある、歴史的事件だと再確認した。九大皮膚科のホームページに詳しい解説と文献があることを最近知った(http://www.kyudai-derm.org/part/yusho/)。

ダニと皮膚病の複雑な関係

日本臨床皮膚科医会中国支部学術大会から(平成18年7月30日)

害虫専門家による皮膚疾患と関連するダニの話のまとめ。@ヒトの血を吸うダニ(マダニ、ツツガムシ、イエダニ、ワクモ、トリサシダニ、スズメサシダニ):イエダニはネズミにつくダニで越冬のため11月頃に住居に侵入した際に持ち込まれる。ワクモ以下は鳥につくダニだが、5-6月に雛が巣立った後、ヒトを刺すことがある。Aヒトの体液を吸うダニ(ミナミツメダニ、シラミダニ):血は吸わないが虫さされの症状を起こす。ミナミツメダニは畳についていて夏に発生。シラミダニはシバンムシなどの室内の虫に寄生して、時にヒトを刺す。チクリとはせず、遅延型反応を起こすらしい。チクリとした場合は、同じくシバンムシに寄生する、シバンムシアリガタバチの可能性が大。Bヒト寄生性のダニ(ヒゼンダニ、ニキビダニ)Cアレルゲンとなるダニ(チリダニ、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)

夏場の虫さされの患者さんに、何に刺されたかを聞かれて困ることが多いので、参考になった。シバンムシアリガタバチが大穴だろう。最近は鳥の飼育歴、近くに鳥の巣がないかも聞くようになった。

スキンバリアーと出生前診断

第23回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成18年7月20日)

魚鱗癬はバリア形成不全であるという当たり前だが、実は細胞生物学の最先端の話。表皮のバリアは@角層蛋白(ケラチン・フィラグリン)、Acornified cell emvelope、Binter cellular lipid layerからなるが、それぞれの形成不全が@では尋常性魚鱗癬と水疱型魚鱗癬様紅皮症、Aでは非水疱型魚鱗癬様紅皮症と葉状魚鱗癬、Bでは道化師様魚鱗癬とX-linked ichthyosisの表現型をとる。その中でも道化師様魚鱗癬では表皮細胞の脂質輸送に携わる蛋白であるABCA12の高度な機能異常で細胞間脂質の形成が妨げられることが病因であると確認された。これによって胎児皮膚生検(19週から可能)あるいは絨毛膜生検(10週から可能)で得た検体のDNA解析による、道化師様魚鱗癬の出生前診断が可能になった

アトピー性皮膚炎の乾燥肌にもフィラグリンの異常が関与しているとのこと。さらに一般的な疾患でも解明されていくに違いない。

加温で凝固するタンパク

第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月14日)

夏季に潰瘍をきたすlivedo racemosaの原因検索の話。通常加温で凝固する血清ないし血漿中の蛋白は、Bence-Jones蛋白ないし、pyroglobulineであるが、凝固にはいずれも56℃以上の必要である。しかし一部の夏季潰瘍をきたすlivedoの患者の血漿中には、42℃、6時間の加温で凝結する約40kDaの蛋白が認められた。これは、ESI-TOF/MSという方法による質量分析の結果、actinとくにβactinとの相関が示唆された。

生体内で夏季に何が変化するのかは以前から不思議に思っている。ただし、細胞に広く分布しているactin蛋白が、どのように血栓ないし塞栓と関連するのかは、解釈が難しいと思った。

βブロッカーを内服していると、アナフィラキシーの治療の妨げになる

第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月15日)

高血圧・心不全治療でβブロッカーを内服している患者では、アナフィラキシーを生じた際に通常の第一選択であるエピネフリンが効きにくく、この場合にはグルカゴンを投与する必要があるかもしれない。

めったに遭遇するわけではないが、覚えておく必要があると思った。ただし、どこの皮膚科外来にもグルカゴンは置いていないだろう。

fixed food eruption(食物摂取が原因の固定疹)

第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月15日)

四肢・腰部に色素沈着のある症例。ナタマメを煎じたお茶を飲んだあとにその部位に紅斑を生じた。組織も固定疹の反応。薬剤との因果関係は証明できず、お茶の再投与で、24時間後後に紅斑が誘発され、固定食物疹と診断。固定食物疹はこれまでに、アスパラガス、ラクトース、レンズ豆、チーズ、トニックウォーターによるものが報告されている。

確かにこういう症例はあってもいいだろう。固定疹をみたら、食物も原因として考えておく必要があると思った。

豆乳アレルギーは大豆アレルギーではなく、花粉症と関連している

第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月15日)

豆乳アレルギー3例の報告。すべて女性でいずれも春季花粉症を合併していて、ハンノキ・シラカンバの特異的IgEが陽性。豆腐の摂取は問題なし。症状は口腔内アレルギー症候群からアナフィラキシーまで様々。抗原としてはT型アレルギークラス2抗原であるBet v1 ホモログなどと関連があるとのこと。

豆乳アレルギーが花粉アレルギーだとは思わなかった。最近特に増えているとのこと。成人でなぜか女性?今度OASの症例があったら豆乳との関連も聞いてみよう。ハンノキ花粉症はスギと重なっているので忘れがちになる。

末期の乳癌・皮膚癌にはモーズペーストを試そう

第807回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年7月8日)

寝たきり高齢者の末期の乳癌・皮膚癌で、根治手術が行えないケースで、癌からの出血・疼痛・細菌感染による悪臭に対してモーズペースト(Mohs paste)外用を試み、それぞれの症状に対して有効であり、また癌組織のvolumeの減少にも効果があった。モーズペーストによるchemosurgeryは古くからある方法で、塩化亜鉛と亜鉛化デンプンを主成分とする外用剤による組織硬化作用を用いる方法である。

在宅や介護老人施設で時々遭遇するようになった。切除不可能なターミナルな症例に対しては、今まではお手上げだったが、今後は試してみる価値があると思った。なお、私の出向いている横浜労災病院では、開放創用ダラシンパテという院内製剤があり、特に悪臭には有効とのことだ。

クローン病の皮膚病変とレミケード

第807回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年7月8日)

結節性紅斑と肛門部潰瘍をきたしたクローン病の症例。ステロイド内服で結節性紅斑は消褪したが、肛門部痛と肛門部潰瘍は改善せず。消化器症状も不変であったため、レミケードを投与したところ、潰瘍・疼痛ともに軽快した。

TNFαの抗体による治療がいよいよ皮膚科にも入って来そうである。経過表からはステロイドでいったん消褪した後、再燃した結節性紅斑にもレミケードが効いたようにみえた。

褥瘡のポケット形成は初期型と遅発型がある

第13回皮膚創傷治癒フォーラムから(平成18年6月24日)

褥瘡のポケット形成には2通りがある。初期型は虚血によって生じた壊死組織の融解が原因で、これは起こってしまったことなのでさけられない。その後、経過中に除圧がうまくいかないと、外力がかかるのは皮膚の表面に近い所と、下床の骨や筋に接触している所で、ちょうど砂時計型に虚血状態になるため、遅発型のポケット形成に至る。遅発型は圧迫とずれの力を排除すれば予防が可能である。

確かに同じようなことを経験する。だたし治療はいずれも切除をおこなうということで、かわりはないようだ。

コリン性蕁麻疹の病型分類

第105回日本皮膚科学会総会(平成18年6月4日)

コリン性蕁麻疹は毛孔一致性のものとそうでないものの2型に分類できる。前者は自己血清の皮内反応が陽性で、汗の皮内反応が陰性のものが多い。後者は汗の皮内反応が陽性で、アセチルコリン皮内反応で衛星膨疹を認めるものが多い。

なかなかできない検査だが、機会があったらやってみたいものだ。毛孔一致性かどうかはダーモスコピーが役に立つと思うので、今度見てみよう。

シクロスポリンは食前内服の方が吸収がよい

第105回日本皮膚科学会総会(平成18年6月4日)

ネフローゼ症候群の患者で、通常は食後に内服されるシクロスポリンを食前にすると吸収が改善されたという報告があり、乾癬の患者でもこれを検証した。結果は、全例で内服4時間のの血中濃度−時間曲線下面積、最高血中濃度ともに食前投与が食後投与の1.8倍に増加し、吸収が改善することがわかった。

危険性の問題が気になるところだが、高い薬だし、食前にすることにより減量が可能であれば、その方が良いかもしれない。

老人性疣贅に活性型ビタミンD3軟膏外用が効く

第22回日本臨床皮膚科医会(平成18年5月21日)

顔面の老人性疣贅の治療として、活性型ビタミンD3外用を試みた。1日1から2回を3ヶ月以上続けて外用した症例116例のうち、35例が著効、54例が有効であった。腫瘍は炎症性変化を伴うことなく退縮し、自覚症状を伴うこともないので、高齢者のQOLの改善には有効な方法である。

たくさんあると処置に時間がかかるし、液体窒素では炎症後の色素沈着も気になるところだ。我慢強く続けてくれる患者さんにいいかもしれない。

ダーモスコープの用語に慣れよう!

第7回横浜皮膚悪性腫瘍研究会(平成18年5月18日)

ダーモスコープの所見を読む勉強会。まず、第1段階として、pigment network、aggregated plobules、branched streak、homogenous blue, pigmentation、parallel pattern(掌蹠の病変)があるかないかで、メラノサイト病変かどうかを見分け、次に第2段階としてパターン解析を行い、メラノーマ、境界部または複合型母斑、真皮内母斑、Spitz・Reed母斑、青色母斑を鑑別していくという流れが説明された。なお、顔の真皮内母斑では白いドットは毛孔と脂腺で、ネットワークが見えないので、pseudonetworkという。

まだ、用語に慣れていないせいか、忘れる。私的には、purpuraといわれたらこんな臨床、というひらめきが、まだダーモスコープ用語にはないのが現状。勉強が必要だ。

ピチロスポルム特異的IgE抗体は、M.symposialisの抗体である

横浜北部地区皮膚科クリニック懇話会から(平成18年5月17日)

マラセチアがアトピー性皮膚炎の悪化に関与することが指摘されていて、抗真菌剤の内服が併用治療として用いられることがある。コマーシャルでもピチロスポルムIgE抗体の測定が可能であるが、これはM.synposialisの抗体であり、評価には注意が必要である。しかし、M.restrictaおよびM.globosaにも交叉反応があるので少しは役に立つとのこと。

あいかわらず、malasseziaは混乱している。ピチロスポルムIgE抗体を測定して、アトピー性皮膚炎の治療にいかすための指針がほしいところだ。

とびひでのMRSA検出率

横浜皮膚疾患研究会(平成18年5月11日)

東京郊外の基幹病院からの報告。伝染性膿痂疹の細菌培養を行った結果、MRSAが26%に認められた。前医のあり、なしで分類すると、前医がなく直接来院の場合は15%であったが、前医で治療を受けた患児では46%と効率であった。したがって市中での感染例は15%、抗生剤の内服や外用を行ったためにMRSAの頻度が高くなることが明らかになった。

前医のあり、なしでこんなに違うものかと思った。とびひでの抗生剤の使い方はいつも難しいと思う。個人的には毎年、10例に1例ぐらいの割合で、表在性ではない、滲出性紅斑のような伝染性膿痂疹を経験するが、必ずしもMRSAとは関連がないようだ。これについては、どうも細菌を抗原とするDTHのように思うが、解決できていない。

皮膚筋炎を自己抗体で病型にわける方法

第2回皮膚膠原病研究会から(平成18年4月8日)

抗CADM-140抗体陽性例:clinically-amyopatic DMの略。筋炎症状が少なく、急速に進行する間質性肺炎を合併する例が多い。
抗ARS抗体陽性例:Jo-1抗体もこの仲間。皮膚症状を伴わない多発性筋炎の症例に多い。レイノー症状が強く、間質性肺炎が合併する例が多い。
抗Mi2抗体陽性例:皮膚のみの症例で、光線過敏症を伴うことが多い。間質性肺炎なし。悪性腫瘍の合併が多い傾向がある。

皮膚筋炎・多発性筋炎がこのような病型にわけられるとは知らなかった。非常に参考になる発表だった。

SLEの黄色腫型反応

第2回皮膚膠原病研究会から(平成18年4月8日)

SLEの皮膚生検組織には、時にリポフスチンを含む組織球が多数浸潤し、これを黄色腫反応と称する。リポフスチンは、過酸化脂質と蛋白質の複合体で、UVをあてると自家蛍光を発することで確認できる。臨床症状としては萎縮を伴うリベド様、浸潤性紅斑のことが多く、SLEの病勢とも相関する。

組織をよく見るとなるほどと思う症例がある。この臨床だと生検すれば黄色腫型反応があるだろう、という感触が何となくわかってきた。

インターロイキン7と腸管免疫

第120回神奈川県皮膚科医会例会から(平成18年3月5日)

IL-7は骨髄細胞や胸腺細胞から分泌され、胸腺細胞の増殖に関与するる糖タンパクであるが、これが腸上皮細胞からも分泌されていることが確認され、IL-7の欠損マウスではパイエル板が形成されないことがわかった。腸上皮が周囲の免疫環境を自ら整えているということである。また、IL-7のover expressionでは腸炎が発症、炎症性腸疾患との関連が考えられた。なお、皮膚の表皮細胞も同様にIL-7を分泌しているとのこと。

皮膚も周囲の免疫環境を自ら調節していることは想像できる。疾患との関連はどうなのだろう。関節リウマチと同様の慢性関節炎もIL-7のover expressionで発症するらしい。今後の展開を注目しておこう。

スギの雄花の落ち方には3通りある

中予アレルギー性鼻炎懇話会から(平成18年2月23日)

スギの雄花が落ちるのは、以下の3通りがある。1) 2月から4月の開花して花粉を放出したあとに落下する。2) 8月から5月、特に晩秋から冬季にかけて、開花せずに緑色のまま落下する。3) 古くなった暗褐色のものが、落下する。

実際、2004年の11月にスギ花粉の飛散が観測されたのも2)のためか。秋にスギ花粉症があってもいいようだ。

アクトスはアディポネクチンを上昇させる

神奈川県高血圧・糖尿病を考える会から(平成18年2月22日)

メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧、凝固亢進などが集積して、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患発症のリスクが高い。この疾患では、正常脂肪細胞が産生するサイトカインである血中アディポネクチンが低下していることがわかっている。インスリン抵抗性改善剤であるアクトスは、大規模なprospective studyで2型糖尿病のハイリスク患者で総死亡、大血管イベントの発症を抑制することが証明されたが、糖尿病患者で血中アディポネクチンを上昇させる働きがあること、また血管内皮に対する直接的な抗動脈硬化作用を有することがその理由である。

内科の話もたまにはいいものだ。糖尿病治療もずいぶん変わってきたと感じた。アクトスはおもしろい薬だ。necrobiosis lipoidicaや下腿潰瘍などの皮膚疾患の治療薬にもなるかもしれない。

PNとPNCを皮膚症状で鑑別するには

第4回関東脈管懇話会から(平成18年2月19日)

PNCは主として皮膚の小動脈に血管炎を生じ、皮内結節を初発症状としてヘモジデリンによる色素沈着、atorophie blanche、潰瘍、summer ulcerationなどの皮膚症状が主体で、時に筋、末梢神経の症状をきたす疾患である。これに対して、PNはそれに加えて、生命関わる主要な臓器(心、中枢神経、肺、腎)にも病変をきたす。病理学的にはPNCの方がPNより肉芽反応が強い。PNCよりPNを考える必要がある皮膚症状は、症状が多彩である場合、出血性の変化が強い場合、壊疽があげられる。

壊疽になりそうになったら注意。心、中枢神経、肺、腎を調べないといけない。

食物のパッチテストで食物アレルギーを診る

第29回小児皮膚科セミナーから(平成18年2月18日)

食物アレルギーを多く診ている小児科からの報告。食物アレルギーのガイドラインを日本小児アレルギー学会(http://www.iscb.net/JSPACI/)、厚労省(http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/index.html)がまとめている。この中に、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎の記載もあるが、検討した乳児のアトピー性皮膚炎の症例のうち、70%では食物抗原による即時型反応がみられ、30%では遅延型反応が陽性であった。パッチテストの試薬はキューピーが提供した乾燥粉末食物抗原を用いて、48時間後に判定したとのこと。

食物パッチが陽性ということは何を意味しているのか。IgE-dependentの反応なのか、食物によって口のまわりなどがかぶれたことのある乳児で陽性になるのかなど、疑問もあるが、非常に興味深い。食物アレルギー検査が保険適応になったこともあり、近々食物パッチテスト用のスタンダード抗原が試薬として提供されるらしい。皮膚科医がしっかりと反応を見る必要があるだろう。個人的には乳児の湿疹では、アトピー性皮膚炎と自信を持って診断できていないので、今後は是非やってみたいと思った。

皮膚科医はシューフィッターと仲良くしよう

第1回神奈川フットケア研究会から(平成18年2月16日)

特に糖尿病で問題になるフットケアの話題。体重による圧迫、動静脈やリンパ系のトラブルが生じやすいこと、靴によるむれによって、足は特別なケアが必要である。鶏眼・潰瘍などのトラブルに対しては、シューフィッターに適合靴を使ってもらう必要がある。シューフィッターの所在は「足と靴と健康協議会」のHP(http://www.fha.gr.jp/)で検索できるとのこと。

近くにいないと紹介できないのが問題だ。最上級のスキルを持ったいわゆるマスターは全国に13名しかいないらしい。

パルボウイルス感染症後の慢性疲労症候群

第69回日本皮膚科学会東京支部総会から (平成18年2月12日)

慢性疲労症候群(CFS)は、日常生活を妨げる重篤な疲労(通常6カ月以上継続)にリンパ節の腫大、咽頭痛、頭痛、関節痛、筋肉痛、微熱のほか、認知障害、睡眠障害を伴う疾患であるが、ウイルスの持続感染や再活性化が発症誘因と考えられている。経過を追った154例の伝染性紅斑患者のうち、2名がCFSを発症、いずれも女性であった。

成人女性のパルボウイルス感染は、膠原病的な変な症状がおこる。妊娠の有無にかかわらず注意しないといけないし、経過を追う必要もありそうだ。治療、CFSの発症予防はどうしたらよいのだろうか。

喫煙で誘発される全身性湿疹

第69回日本皮膚科学会東京支部総会から (平成18年2月12日)

禁煙目的のニコチンパッチの部位に接触皮膚炎が生じて、その後、喫煙すると全身性の湿疹をきたすようになってしまった、systemic contact dermatitisの症例報告。1日5本に減らすと改善して、喫煙量によって湿疹が悪化するという。

湿疹が出てはたまらんと言うことで、結果的には禁煙に結びつくかもしれないが、ちょっと気の毒だ。これから多くなるかもしれないので、注意していこう。

後頭部のブラシュコラインは渦巻きだった

第805回東京地方会から(平成18年1月21日)

汗孔角化症の症例報告。項部をやや斜めに上向する線状の汗孔角化症であった。線状汗孔角化症は母斑性と考えられ、表皮母斑などと同様、ブラシュコラインに沿って生じる疾患である。示されたブラシュコラインの説明図をみると、後頭部は、なんと渦巻きであった。

後頭被髪部の症例報告を探してみよう。

透析患者に生じた帯状疱疹の治療には注意が必要

神奈川県皮膚科医会広報委員会から(平成18年1月15日)

HD中の患者に生じた帯状疱疹の治療で、バルトレックスを添付文書にしたがって1回1000mgを使用したところ、ふらつき、ろれつがまわらないなどの精神神経系の副作用が出現した。HD中の患者では、推奨容量以下の500mgの単回投与でも同様の副作用の報告があって、添付文書の量では明らかに過量であると考えられる。

重要な報告である。HD中の患者では、血中濃度の上がりにくいゾビラックスの方が安全かもしれない。なお、血中アシクロビル濃度の測定には血漿が必要で、SRLで測定可能とのこと。副作用が起こったら血漿を採ることにしよう。

刺激性皮膚炎の評価は難しい

22回神奈川皮膚科免疫アレルギー疾患懇話会から(平成18年1月7日)

パッチテストでアレルギー反応と刺激反応を見分けることは、本邦基準に沿った臨床教育のため、信頼性、再現性が高まってきた。しかし、皮膚刺激性の評価についてはさらに高いスキルが必要とされ、0から6までの7段階のスコアリングを試みたが、専門家の間でもばらつきがあるとのこと。また、肉眼所見と写真での評価の間にも、相違があって、今後の標準化が待たれるところである。

皮膚刺激の評価のためのパッチテストの際には、まず濃度の調整をどうするかで悩む。開業医の日常診療では、希釈系列をたくさん作ることや、正常人コントロールで行うことも容易ではなく、ついつい遠慮してしまうのが実情である

retention hyperkaratosisとproliferation hyperkeratosis

第3回相模原皮膚科セミナーから(平成17年12月3日)

扁平苔癬など、基底細胞がターゲットになる疾患では、角化のスピードにブレーキがかかるため、角層剥離遅延が生じて、顆粒層の肥厚を伴う角化が生じ、これをretention hyperkaratosisと呼ぶ。反対に、乾癬のように表皮細胞全体がターゲットの疾患は、角化のスピードが速くなるために、顆粒層の喪失した角化を生じ、これをproliferation hyperkeratosisと呼ぶ。

病変の経過を考えると納得がいく。acneのcomedo形成の時にもretentionという言葉が使われるが、意味は若干異なるようだ。

自己免疫疾患のステロイドパルス療法中は血中IgGをモニターするとよい

第3回相模原皮膚科セミナーから(平成17年12月3日)

自己免疫性水疱症の治療の話。ステロイドパルス療法を施行する際には、non specificな血清中IgGをモニターするとよい。ステロイドパルス療法施行の2−3週後になると、血中IgGは20−30%低下する。この減少の傾向と、自己抗体のtiterが解離していれば、効果があったことになる。IgGと自己抗体のtiterの変動に差がない時には、2週間後にもう1回ステロイドパルスを行ってみる。1回目が無効でも、2回目に有効なことはまれではない。

なるほど、今後の治療の指針になる話だった。

IVRに伴う頭部の脱毛斑

横浜皮膚疾患研究会から(平成17年12月1日)

くも膜下出血のために、血管造影とintervensionを計9時間半にわたって施行、後頭から側頭にかけて4Gy、一部は8GyのX線の照射を余儀なくされた。施行後3週間後ぐらいから脱毛を生じてきた。4Gyの所は3ヶ月後から徐々に発毛、8Gyのところは脱毛斑として残った。難しいことができるようになった反面、処置に時間がかかるようになっているIVRの現状があるようだ。しきい線量が3Gyで一時的な脱毛斑、7Gyで永久脱毛斑になるということである。2004年にはガイドラインができて、皮膚障害の追跡調査を行うことを勧告している。

生検組織には慢性放射線皮膚炎の像はなく、脱毛の原因が放射線とは言えないという意見が多かったが、圧迫などの他の要素もなく、やはり被爆が原因ではないかと思った。皮膚科でフォローすることになるので病院勤務では重要かも。

FOYの静注による皮膚潰瘍と、遅発型皮膚障害

横浜皮膚疾患研究会から(平成17年12月1日)

不明熱で入院中の患者。治療としてFOYが右前腕から投与された。そのしばらく後に静脈に沿って皮下硬結。中央は潰瘍となった。ステロイド局注で加療し潰瘍は一旦消失、硬結もやや改善。2ヶ月後、FOYの投与は行っていないが、再び同じ部位に硬結と潰瘍が出現。遅発型の皮膚障害と考えられた。最初の硬結と潰瘍は、薬剤の血管内皮に対する障害で、若干の薬剤がにじみ出て、皮膚に損傷を与える機序。遅発型は、1〜2ヶ月後に生じる皮膚障害で、FOYのパッチテストで陽性となる例もあり、生検部の組織で好酸球が多いので、アレルギー性の機序も考えられると結論づけた報告もある、ということであった。

何もしないのに何ヶ月も後に、同じ部位に潰瘍が再発するのは納得できない。潰瘍や硬結の部分に薬剤が残っていて、その場でじわっと感作が成り立つと言うこと?アレルギーではないと思うが、、。

白髪は太い!

第13回毛髪科学研究会から(平成17年11月26日)

正常人の白髪の統計である。白髪のある人の全体を通してみると、後頭部は男女差なく頭頂部や側頭部に比べて白髪が少ない。個々を抜いて調べてみると、白髪はふつうの毛に比べると太く、のびが早く、成長期毛率が高かったが、60μm以上の太さの黒い毛と比較するとそれぞれについての有意差はなくなり、つまり、細い毛には白髪が少ないということであった。なお、白髪はふつうの毛よりもやや平べったい傾向があった。

白髪だけがピンとはねることがあるのは、ふつうの毛より扁平だからだということがわかった。自分の髪を見ても、細い白髪はあまり見かけない気がする。おもしろい観察であった。

デスモグレイン4の遺伝子変異による連珠毛を伴う乏毛症

第13回毛髪科学研究会から(平成17年11月26日)

先天性乏毛症の症例報告。ちぎれやすい毛で、毛孔性丘疹と連珠毛(monilethrix)を伴うがhair keratin遺伝子は正常。しかしDSG4遺伝子の病的変異が見つかった。DSG4は正常のhair cortexに分布しているので、ここでの細胞接着が不十分なために、毛の発育に異常をきたすのであろうとのこと。DSG4は表皮顆粒層にも分布しているが、落葉状天疱瘡のような紅斑・水疱などは見らず。国外の報告ではひげや体毛には影響しないという。atrichia with papular lesionsという先天性疾患にも似ているが、完全な無毛症ではないことが鑑別点。

なかなか見る機会はないが、連珠毛や先天性乏毛症の病因解析がここまで進んでいるとは知らなかった。hairに異常をきたす遺伝性の疾患は、奥が深くて難しい。

萎縮性脱毛症の分類

第13回毛髪科学研究会から(平成17年11月26日)

萎縮性脱毛症は、最近ではcentral centrifugal scarring alopecia(CCSA)という名称で包括され、この中にpseudopelade、folliculitis decarvans、follicular degeneration syndromeなどの名称で呼ばれていた疾患が含まれる。組織所見の違い(炎症の多い・少ない、膿疱がある・ない)は生検した時期や部位が違うためで臨床的には明確に鑑別できない。また、眉から始まり上行して前頭部髪際の脱毛を来す、frontal fibrosing alopecia(FFA)という疾患の報告があった。

CCSAなどという難しい名前は使わず、萎縮性脱毛症や瘢痕性脱毛症でいいだろう。FFAについては心当たりの症例があるので、今度よく見てみよう。これは何で起こるのだろうか。

知っていないとお母さんに説明できない、忘れそうな病名

第21回日臨皮三支部合同学術集会から(平成17年11月23日)

小児期、特に新生児に見られる、生理現象に近い皮膚の疾患(変化)のまとめである。
・新生児生理的落屑(胎児期の周皮の落屑で、生後数日後まで見られる)
・陰嚢生理的色素沈着(約30%にあって、数ヶ月で正常になる)
・sebaceous hyperplasia of the nose in newborn(病名の通り、鼻尖部の脂腺増殖)
・大理石様皮膚(機能的な血管の変化)
・infantile perianal pyramidal protrusion(肉芽腫性炎症で自然に消褪する)
・Epstaein's pearl(歯肉の角質嚢腫で自然治癒)
・neonatal adonexal polyp of skin(乳輪部に単発するmilium)
・新生児中毒性紅斑(膿疱に好酸球が多いのが特徴)
・traumatic anserine folliculosis(学童期のあごの毛孔性丘疹、別の名称で既出)

アメリカ式の名前に占領されている。protrusionはでっぱり。anserineはガチョウ?

尿膜管遺残の盲点

第21回日臨皮三支部合同学術集会から(平成17年11月23日)

尿膜管(urachus)は臍と膀胱頂部をつなぐ線維筋性索状構造で、発生学的にはアラントイス管に由来し、その退縮が不完全である場合に尿膜管遺残がおこる。その全長が開存すると尿膜管開存、膀胱側の一部が遺残すると尿膜管憩室、臍側の一部が遺残すると尿膜管洞、尿膜管中央の嚢胞状拡張を尿膜管嚢腫(urachal cyst)とよぶ。このうち尿膜管嚢腫がもっとも頻度が高く、通常は無症状であるが、時に腹部違和感、腹痛、臍からの出血、皮下膿瘍、膀胱炎様症状、血尿・膿尿を来すので臍の皮膚病をみたらこれも念頭に置く必要がある。

実は症例の経験がなく、見落としているかもと思って、焦った。ヘソの周りには注意しよう。

EBERは痂皮の中でも局在が確かめられる

第21回日臨皮三支部合同学術集会から(平成17年11月23日)

慢性活動性EBウイルス感染症のスペクトラムの話。種痘様水疱症、蚊刺過敏症、血球貪食症候群などを見た際に重要な検査として、血中のアズール顆粒をもったLGL(large granular lymphocyte)の確認、再活性化に伴うEBウイルス抗体価の上昇の有無、EVウイルスのDNAコピー数、EBER(EBV-encoded small nuclear RNA)の局在がある。EBERは皮膚生検を施行しなくても、種痘様水疱症の痂皮の中にも存在が確かめられ、1〜2ヶ月間は常温で保管しても検出できる。疑わしいときには、痂皮を剥がして、テープで固定し、岡山大学に郵送すれば、検査をやって下さるとのこと。

種痘様水疱症では、水疱の時期をとらえるのはなかなか難しく、しかも子供に多いことを考えれば、痂皮を剥がすだけの処置ですむということは、大きなメリットだと思った。

superficial white onychomycosisと認知症

第112回東京地方会神奈川分会から(平成17年11月19日)

爪甲が膜様に白くなる爪真菌症の異型で、爪甲の肥厚を伴わない。療養型病床に入院している認知症を伴う患者64名のうち、全体の40%にみられ、手の爪に多かった。この施設では手の爪白癬の81%、足の爪白癬の9%がこの病型(SWO)であった。白く混濁した部分は表面からスライドグラスなどで容易に剥離でき、KOH直接鏡検では菌糸とともに分節胞子が多数みられるのが特徴。培養ではT.mentagrophytesがT.rubrumより多く、通常の爪白癬と反対である。削って外用するだけで改善するので抗真菌剤内服の必要はない。

認知症があることや拘縮があって手を握ったままにしていることと関連があるかもしれない。時々高齢者で見かけるが、私の往診している特養や老健では、全体の10%以下だと思う。これについては機会があったら回診をして、しっかり調べてみよう。

外用ステロイドの吸収に関する話題

第112回横浜市皮膚科医会から(平成17年11月12日)

角層にはreservoir(レザバー)機能があって、外用したステロイドは5日間はそこにとどまるが、その後は角層と共に排泄される。この間吸収されるステロイドの量は前腕で約1%である。ステロイドはもともと脂溶性なので、脂腺が多いところは吸収が良い。吸収率が部位によって差があるのは1967年にMeibachが報告した通りだが、C14でラベルし、アセトンに融解したステロイドを外用したのち、5日間蓄尿中に排泄されたC14を測定した結果であり、その後追試は行われていない。また副腎抑制を来すにはどのくらいの外用が必要かというと、strongestで1日10g、very strongの単擦では1日30g、very strongのODTでは1日10gが目安とのこと。

5日間そこにとどまるというのは初耳だった。湿疹でも軽い場合は5日に1回塗ればいいと考えていいのだろうか。確かに光かぶれをおこすケトプロフェンでも、もっと長く表皮に残っているようだし、皮膚の生理も簡単ではない。

「アフタ性潰瘍」はまちがった使い方である

横浜労災病院症例検討会から(平成17年11月9日)

アフタは直った後に瘢痕にならない、つまり粘膜のびらんと定義される。これに対して粘膜でも潰瘍は瘢痕を残す。したがってアフタ性潰瘍という言葉はまちがい。皮膚に置きかえると、びらん性潰瘍になってしまう。また口内炎は口腔内の炎症の総称で、ヘルペス性歯肉口内炎などは、アフタ性口内炎を来す疾患と呼んでよい。クローン病では腸外症状として口内炎が生じるが、この場合はアフタよりも潰瘍が多い。

自分で使う事はないが、確かにたまに耳にする用語である。定義をしっかりとすれば、なるほど、理解しやすい。

APSは家族によく説明しておくことが大事

第1回皮膚膠原病研究会から(平成17年11月5日)

SLEに合併した、抗リン脂質抗体症候群の症例。皮膚症状としては手掌の皮内結節があり、組織学的に血栓が認められた。経過中、家族が患者の行動や言動が普段と若干異なり、やや反応が遅いことに気づいたため、大事をとって入院したが、その直後に急性腹症を発症。APSが原因で生じた、上腸間膜動脈閉塞症が原因だった。APSの患者に生じる急性動脈閉塞症は、SLEなどの合併症の増悪とは関係なく、また、APSの検査異常(β1GPT抗体など)とも平行しないので、余地が難しい。しかし、頭痛、数分程度の半盲、めまい、さらに不定愁訴が初発症状となることがあり、今回の症例のように、何か普段と違う、ということが初発症状のこともあるので、家族によく説明をして、日常を管理することが大変重要であると思われた。

家族が偉い。家族に何か変だったらすぐ連れてきて、というムンテラをしていた医者も偉い。

抗CD20抗体(リツキシマブ)によるループス腎炎治療

第1回皮膚膠原病研究会から(平成17年11月5日)

ステロイド、シクロスポリンなどの免疫抑制剤に反応しない中枢神経症状とループス腎炎をともなったSLEに、B細胞リンパ腫の治療薬であるリツキシマブを投与して、劇的に症状が改善した症例のレポートが出たという情報。B細胞をリセットすることで、自己抗体の産生に抑制がかかったということであった。SLEの新しい薬として期待されており、欧米ではすでに治験が進行中とのこと。

皮膚科ではSLE以外にも多くの自己抗体と関連する疾患がある。ステロイドや免疫抑制剤で管理できない水疱症にも効果がありそうで、今後注目していきたい。

マラコプラキアって何?

第57回日本皮膚科学会西部支部学術大会から(平成17年10月30日)

腰部の深いところに生じた膿瘍を考えた高齢の女性。切開で排膿を認め、培養では大腸菌が陽性。また周囲の組織に、豊富な細胞質を持つ組織球の反応性増殖を認め、特徴的なVon Hansemann細胞の出現とその胞体内にPAS染色陽性のMichaelis Gutmann小体が認められ、マラコプラキアと診断した。マラコプラキアは膀胱、前立腺などの泌尿器科領域に多く、今回のように後腹膜に生じることもある。慢性膀胱炎を繰り返す高齢女性に多い。組織で認められる空胞化した細胞質を要する組織球が特徴で、これは尿の細胞診でも検出可能らしい。

初めて耳にした。皮膚科領域では聞いたことがない。確かに組織は1回見たら忘れないほど特徴的。ただし大腸菌の感染が証明され、しかも実際に排膿があるにも関わらず組織に好中球がないのが納得できなかった。

血管炎のようで血管炎でない疾患

第57回日本皮膚科学会西部支部学術大会から(平成17年10月30日)

血管炎診断の条件としては1)好中球の核破潰を伴う浸潤と出血、2)血管壁のフィブリノイド変性の両方が必要。血管壁のヒアリン変性が主体で、Leucocytoklasie がない場合や、血管内腔および壁のフィブリン沈着が主体で、Leucocytoklasie がない場合、また、強い線維素性炎症で、Leucocytoclasieがあるが、フィブリノイド変性のない場合は血管炎に似るが、血管炎ではない。こういった病理組織を呈する疾患に、livedo racemosa、SLE、PSS、RA、心粘液腫、亜急性心内膜炎(Osler結節)、コレステリン結晶塞栓症、多血症、血小板増多症、抗リン脂質抗体症候群などがある。

理屈ではわかっていても、臨床的には大変苦労する分野である。開業医としても色々な鑑別疾患に対して充分な検査をしていかなければならないと思った。

ふつうの腱黄色腫ではない、脳腱黄色腫

第57回日本皮膚科学会西部支部学術大会から(平成17年10月30日)

小児期からアキレス腱部に黄色腫があった。それに加えて精神発達遅延、錐体路症状、小脳機能異常、若年性白内障がある成人例。検査では血中コレステロール値はなんと正常。そのかわり血中コレスタノールが異常高値で、これだけで脳腱黄色腫症と診断できる。脳腱黄色腫症はsterol 27-hydroxylase遺伝子 (CYP27)の変異が原因で生ずる常染色体劣性遺伝の疾患。コレスタノールが皮膚・腱・脳・目・肺に沈着するのが特徴で、腱黄色腫と知能低下は学童期前半から、小脳症状は思春期ごろから生じる。

経験がなく、知識としても持ち合わせていなかった、知っていそうで知らない、古そうで新しい病名であった。

ATLはTregの、セザリー症候群はTh2の腫瘍である

第1回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成17年10月22日)

T細胞のマーカーのおさらい。ケモカインレセプターの解析が進み、CD4陽性T細胞(Th)は、表面マーカーから以下の通りに分類されるようになった。
Th1:CD7陽性、CXCR3陽性。Th2:CD7陰性、CCR4陽性。Treg:CD28陽性、CTLA-4陽性、Foxp3陽性、G1TR陽性。T細胞の増殖する疾患を、細胞のプロフィールから分類すると、セザリー症候群はTh2の腫瘍、ATLはTregの腫瘍であると考えられる。

最近はずいぶんと進んだものだ。リンパ腫だけはどうも苦手で、なかなかついて行けない。大学病院にお任せしよう。

抗酸菌の増殖至適温度は、菌がどこから来たかを知っておく

第4回横浜デルマカンファレンスから(平成17年10月20日)

抗酸菌は、もともとの宿主が何かを考えると、培養の至適温度がわかる。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)はもともとヒトを宿主としているので37℃、海水魚についていて皮膚に肉芽腫をおこすM. marinumは海水なので30℃、24時間風呂で繁殖し、皮下膿瘍を生じるM.aviumはもともとは体温の高いトリが宿主なので、40℃。

なるほど、わかりやすい。インキュベターを置くところがないので、抗酸菌培養までは自院ではしないが、検査の指示を出すときに、役に立つはずである。

静脈血栓塞栓症と周術期のケアについて

メディカルフォーラム2005から(平成17年10月15日)

肺血栓塞栓症(pulmonary thrombo-embolism: PTE)と深部静脈血栓症(deep venous thronmosis: DVT)はまとめて、静脈血栓塞栓症(venous thrombo-embolism: VTE)と呼ばれることが多い。古くは横綱玉ノ海が虫垂炎の術後の肺梗塞で死亡、少し前には、いわゆるエコノミークラス症候群(ロングフライト症候群)でサッカー日本代表の高原選手が肺梗塞を発症。また、昨年の新潟県中越大震災で車内での長時間生活を余儀なくされた方でも問題になった。最近ではe-thrombosis(電子血栓症)といって、オフィスで長時間座っているだけでもVTEの危険とは背中合わせらしい。しかし、もっともVTEが多く発生するのは、危険因子が重複しやすい病院内で、ことに周術期である。これを受けて、2004年にはVTE予防ガイドラインが公表された。最近の病院の手術現場では、麻酔科医、循環器内科医が術前のリスクレベルの評価を行い、それに応じて、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法(IPC)、低容量未分画ヘパリン投与(LDUH)などを行うのが常識になっている。

開業医はこういうことを知らないから、よくない。ガイドラインにさっそく目を通した。

タクロリムスにはMalasseziaの増殖抑制効果がある

第49回医真菌学会総会から(平成17年10月6日)

Malasseziaがアトピー性皮膚炎の湿疹、特に顔面の病変に対して、増悪因子になることが知られている。ケトコナゾールクリームの外用やイトラコナゾール 100mg/日の4週間内服で、Malasseziaの菌量の減少、Malasseziaに対する特異的IgE抗体価の減少と平行して臨床症状もかなりの割合で改善した。また、タクロリムス軟膏にはMalasseziaの増殖抑制効果があり、特にケトコナゾールやイトラコナゾールと相乗的に作用し、MICを低下させることが示された。

癜風にタクロリムスを外用すると、症状が改善するかどうか。脂漏性皮膚炎でタクロリムスを使用してdemodexが増殖し、rosaceaを生じた経験がある。その辺がよくわからないところである。

Imiquimodの使用経験

北里大学特別講演会から(平成17年9月22日)

ドイツ人Proffesorの講演。日本ではまだ使われていないImiquimodクリームの使用経験の話。この薬剤はtoll-like receptor(TLR)に直接結合し、免疫担当細胞を活性化させる働きがあり、尖圭コンジローマの治療薬として欧米ではすでに用いられている。しかしコンジローマ以外のウイルス性疣贅や伝染性軟属腫にはもう一つ効果が明らかではない。しかし、日光角化症と表在性の基底細胞上皮腫には有効で、単純に外用するだけなので、特に高齢者では手術に代わる有効な治療法である。

日光角化症に対する効果は5FU軟膏と同等とのこと。個人輸入で入手は可能なので、機会があれば使用してみたい。

円形脱毛症は「免疫学的特権」の破綻によって生じる

第21回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成17年7月21日)

免疫学的特権部位(immunological privileged site)とは、容易に自己に攻撃されることがないように、免疫学的に保護されている部位のことをさし、1)古典的MHC-1分子を発現しない、2)TGF-βの恒常的発現がある、3)Fas-ligandを常時発現しているという特徴を持ち、脳、精巣、卵巣などがこれにあたるが、正常毛包もこれらの特徴を備えている。円形脱毛症ではこの「免疫学的特権」が何らかの理由で破綻し、自己のeffector細胞(CD4+-killer cellか?)によって攻撃を受けるために脱毛になってしまう、という可能性がある。

ちょっとわかりにくいが、頭の片隅に入れておこう。確かに寒いところのほ乳類ではhairも生命の維持に必要な大事な臓器といえるかもしれない。

乾癬がなおってしまうってどんな時?

北里大学皮膚科同門会講演から(平成17年7月18日)

全身性汎発性の乾癬が完全緩解した症例の報告でそれぞれ、1)加齢によって自然軽快した症例。2)乳癌の手術後に改善した症例。3)心筋梗塞・大動脈瘤で人工血管バイパス術を受けた後に改善した症例。4)生活習慣病のコントロールを厳重に行った症例。5)病巣感染の除去によって改善した症例。6)膿疱性乾癬から紅皮症化したあとに改善した症例。7)合併するnon-Hodgikin lymphomaに骨髄幹細胞移植を行った症例であった。

大きなストレスがかかった時に乾癬が消えてしまう場合があることは全く予想外であった。乾癬は完治しないということが間違っている証拠で、今後も長く患者さんたちとつきあっていきたいと思った。

蕁麻疹と蕁麻疹の合併!

第35回日本皮膚アレルギー学会から(平成17年7月17日)

数ヶ月前に公表された蕁麻疹・血管性浮腫の治療ガイドラインでは、「特定の刺激ないし負荷により、皮疹を誘発できる蕁麻疹」を可能な限り鑑別していくという方向性が再確認された。これに伴って、特発性の蕁麻疹に、特定誘因のある蕁麻疹が合併することが多いことが報告され、特に、慢性蕁麻疹+機械的蕁麻疹、慢性蕁麻疹+アスピリンイントレランスの合併は多く、アスピリンイントレランスは慢性蕁麻疹の30%に合併しているということであった。

慢性蕁麻疹の患者さんはたくさんあるが、個人的にはアスピリントレランスの経験は少ない。ちゃんと悪化因子を聞いていないからだろう。もっと問診をしっかりしないといけないと思った。

重症薬疹でDLSTが陽性となる時期

第35回日本皮膚アレルギー学会から(平成17年7月17日)

Stevens-Johnson症候群(SJS)やdrug-induced hypersensitivity syndrome(DIHS)などの重症薬疹では、再投与試験が難しく、DLSTが原因薬剤の被疑薬検索に用いられるが、陽性となる期間は一時的であり、この時期を逃すと陰性になってしまい、原因薬剤の同定ができなくなってしまう。SJSでは発症後2から3週までの間、一方DIHSでは病初期には陽性にならず、発症後1ヶ月以上たってから陽性となる。

SJSとDIHSの免疫学的違いとは何だろう。薬疹も実に奥が深い。

マイクロリベド(micro-livedo)をはやらそう

第4回関東脈管懇話会から(平成17年7月10日)

マイクロリベドは主として手掌・足蹠あるいは手指・足趾などに部分的、限局的にみられる、非閉鎖性のリベドで、末梢の皮膚小動脈ないしそれよりも小さい血管の閉塞性変化を示す状態で、血栓(抗リン脂質抗体症候群など)や塞栓(コ