
皮膚科医になって25年がたちました。皮膚科の事ならだいたいはわかっているつもりですが、まだまだ知らないこともたくさんあります。ここでは、学会や講演会で聞いた「へぇ〜」をご紹介していきたいと思います。私自身の覚え書きにもなりますので。なお、講演内容からの耳学問で、ご講演の先生のご承諾はいただいておりませんので、あしからず。
ムンプスにみられる皮膚症状−Gellis signとは?
日本皮膚科学会第824回東京地方会から(平成21年6月20日)
発熱と両側耳下腺腫脹でムンプスと診断された男児。3病日から胸骨前部に淡い赤みを伴い、圧痛のある腫脹を生じた。臨床からは皮下軟部組織の浮腫と考えられた。無治療で経過を見たところ5日目には自然消褪。これを、Gellis signといい、ムンプスの1〜6%にみられる症状であり、顎下腺腫大のために生じるリンパ浮腫が原因と考えられている。
聞いたことも見たこともなかった。耳鼻科や小児科のドクターはたびたび遭遇しているのであろうか。近所の先生に聞いてみて、もしあったら紹介してもらおう。これは是非、触れてみたい症状である。
シェーグレン症候群の小唾液腺の細胞浸潤はいつまで続くか
第7回皮膚膠原病研究会から(平成21年6月13日)
シェーグレン症候群の下口唇生検における病理所見の時間的経過の報告。発症初期に分泌部周囲のリンパ球浸潤があるのは周知の通りだが、20年後にあらためて生検を行った数例の症例では、1)現在でも細胞浸潤がある例、2)細胞浸潤が少なく導管が拡張している例、3)小葉が完全に萎縮している例に分類できた。ステロイドの内服がdry mouthの発症や増悪に有効であったと考えられる症例もあり、下口唇生検を複数回行い、組織反応の変化を見ることも、臨床上有用であると思われた。
指摘の通りであろう。初回の診断の時にしか行わない施設がほとんどではないだろうか。どんな疾患についても当てはまるので、長く経過を見て、臨床と病理を比較していくのが皮膚科臨床医の努めと感じた。
CNS lupusはもう古い
第7回皮膚膠原病研究会から(平成21年6月13日)
従来、CNS lupusと呼ばれていた経過中に神経・精神症状をきたすSLEを、最近ではNeuropsychiatric SLE(NPSLE)と呼ぶ。主たる症状は、歩行障害を含む局所的な運動神経障害、うつ、認知障害、けいれん、頭痛などで、SLEの40%ほどに認めるという。髄液中のIL-6の上昇(4.3pg/ml以上)のほか、自己抗体としては抗リボゾームP抗体、抗グルタミン酸受容体(NR2)抗体、抗ニューロナル抗体などと関連が深いとされるが、疾患活動性の指標、たとえば抗DNA抗体や血清補体価とは相関しない。ステロイド精神病との鑑別が重要である。治療はステロイドパルス、エンドキサンパルス(IVCY)に加えて、最近ではリツキシマブの有用性を指摘する報告が多い。
あまり皮膚科の文献でもお目にかからず、古い知識で固まっていたので、ドキッとした。若い先生に教えてもらうこともたくさんあるものだ。病棟勤務の頃の悩み・迷いを思い出した。
膠原線維attack型組織反応をきたす紅斑の特徴
第7回皮膚膠原病研究会から(平成21年6月13日)
SLE、シェーグレン症候群、MCTD、皮膚筋炎を基礎疾患とし、臨床的に好中球性紅斑、滲出性紅斑、あるいはやや浅めの結節性紅斑が生じた場合、これを生検すると、真皮中層に膠原線維の変性があり、それを取り囲むように、一見好中球の核破砕にも似た細胞浸潤(CD68陽性のマクロファージ・組織球系の細胞が主体)を認めることがあり、これを膠原線維attack型組織反応と称した。この紅斑は、発熱とともに生じることが多く、通常2週間で消褪する。反応の機序は不明であるが、ウイルス感染などが引き金になり、マクロファージの活性化が起きて生じるのではないかと考えている。膠原病に伴う皮膚症状の一つとして、認識しておく必要がある。
何度かみたことのある組織だった。RAに合併する手指の皮内結節(rheumatoid papule)も同様の組織反応だと思う。おそらく、いわゆるcollagen diseaseの、まさに真皮collagenが、病変部組織反応のターゲットなのではないかと感じた。今後のさらなる検討が楽しみである。
インターフェロン-γと水疱症治療
神奈川県天疱瘡講演会から(平成21年6月11日)
ステロイド抵抗性の天疱瘡ないし類天疱瘡に、Th2型の免疫状態をTh1に戻すことを目的として、インターフェロン-γが用いられていた。ビオガンマの200JRUを7日間点滴静注、あるいは、オーガンマ100万単位を5日間連日筋注を2クールという治療指針があって、有効であった。いずれも菌状息肉症、ATLの適応を有していたが、残念ながら現在は製造中止になっている
腎癌に適応のある、イムノマックス-γが、現在では唯一のインターフェロン-γ製剤である。これが自己免疫性水疱症に有効かどうかは報告がなかった。かつてあった治療、消えていく治療も記憶にとどめ、記録に残しておく方がよさそうだ。なお、犬のアトピー性皮膚炎の治療には、現在インタードッグというインターフェロンγの注射剤が用いられていると知った。さらに、インターキャットというのもあるが、これは猫の風邪(猫カリシウイルス感染症)の治療薬だそうだ。
歯性感染症は成人のアナフィラクトイド紫斑の重症化に関連している
第4回北摂皮膚科病診連携の会から(平成21年5月30日)
成人のアナフィラクトイド紫斑の症例28例のうち、根尖病巣があった患者が14例、なかった患者が14例であった。根尖病巣のない症例では、腎障害が5例、腹部症状が5例であったのに対し、根尖病巣のある症例では、腎障害が12例、腹部症状が9例といずれも多かった。抜歯を7例に施行したところ、紫斑のflare upが5例にみとめられた。歯根部のα-streptoccoccusがアナフィラクトイド紫斑の重症化に関連していると考えられる。
RAなどの合併症がなく、咽頭炎・扁桃炎のない成人例では検討する余地があると思った。今後は積極的に歯科受診を勧めよう。
イボにハンミョウ
第26回日本臨床皮膚科医会総会から(平成21年5月10日)
虫の話。ツチハンミョウ、アオカミキリモドキは、その体液が皮膚に触れると、痛みとともに水疱を形成し、2日後には潰瘍となり、上皮化に3週間を要する。カンタリジンという有機化合物がその主成分である。以前はツチハンミョウを乾燥させて作ったカンタリスという生薬が日本医薬品集にも収載されていた。皮膚に水疱をきたす働きをあえて利用して、イボの治療や植皮などに用いていたとのこと。
メルクマニュアルをみると、イボの治療の一つにカンタリジンの名前が挙がっていた。まさに「イボにハンミョウ」である。
もらった湿布の使いまわしをしてはならない
第26回日本臨床皮膚科医会総会から(平成21年5月9日)
当院における湿布かぶれのまとめ。約2年間で82例の症例があった。処方箋医薬品が原因だった58例の湿布かぶれのうち、モーラステープないしモーラスパップによる光接触皮膚炎が32例と過半数を占めた。年齢的には10歳代が12例、20歳代が6例と両者で過半数となり、屋外のクラブ活動などによる日光暴露を受けやすい若年に生じていた。さらに、10歳代の12名のうち、整形外科で診察の上、モーラスの処方を受けた患者は1名のみで、ほかの11例は、自宅にあった、祖母からもらったなど、使いまわしが原因であった。
整形外科医に対して、お年寄りの患者さんにモーラスの処方をするのはかまわないが、余ったものをお孫さんのうちみや捻挫への使いまわしはしないように伝えてもらうよう、働きかけていく必要があると考えている。
アトピー性皮膚炎のハイリスク児には加水分解乳を用いた方がよい
第26回日本臨床皮膚科医会総会から(平成21年5月9日)
乳児アトピー性皮膚炎における栄養介入のエビデンス。発症のリスクが高いと考えられる、アレルギー疾患を有する親兄弟をひとり以上持つ乳児において、栄養介入が、アトピー性皮膚炎の発生を予防または遅延させるかどうかのコホート調査。完全母乳のグループ、生後4カ月まで母乳でそれ以降を加水分解乳としたグループ、母乳+通常の調製粉乳のグループ、の3群を比較すると、1歳までのアトピー性皮膚炎の発生率はそれぞれ、9.5%、9.8%、14.8%で、加水分解乳は調整乳に比べ、発症が2/3になり、完全母乳と同様であった。ただし、6歳以降の小児アレルギー性喘息を予防することは確認されなかった。また、アレルギー素因のない乳児では、栄養介入による発症率の差異はなかった。
一般的にはとか、何パーセントはとかが通用しないのが臨床である。一応、お母さんに対する情報提供には、よい内容であった。なお、石垣島ではアトピー性皮膚炎の子供は冬生まれが多いらしい。
皮膚型ATLLの定義と問題点
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月25日)
ATLLの病型は、1.急性型、2.リンパ腫型、3.慢性型、4.くすぶり型に分けられている。皮膚のみに病変が限局する皮膚型は、くすぶり型に含められており、未だに明確な基準は示されていない。しかし、皮膚病変を伴うくすぶり型は皮膚病変のないくすぶり型より予後が不良で、皮膚型でも腫瘤型の方が紅斑丘疹型より予後が不良である。皮膚型ATLLを、白血病、節性リンパ腫および皮膚以外の節外性リンパ腫がなく、臨床的に認められた皮膚病変にHTLV-1 proviral DNAが証明されることを診断基準とすると、HTLV-1抗体が陽性でproviral DNAが証明されない菌状息肉症があることがわかった。
なんとも複雑だが、HTLV-1の感染が原因で発症するT-cell lymphomaはATLLだけではないということである。厳密な診断にはサザンブロットが必要ということは認識しておこう。
papular mucinosisではC型肝炎の検索が必要である
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月25日)
貴重な症例報告。顔面・手指背などに生じたかゆみを伴う紅色小結節。生検では真皮、皮下組織にムチンの沈着を認めた。慢性C型肝炎の合併があり、ペグインターフェロン・リバビリン併用療法でかゆみは速やかに消失、皮膚病変も軽快した。甲状腺疾患を伴わないpapular mucinosisでは21例が肝疾患を伴っていたが、そのうち16例がC型肝炎であった。
C型肝炎の肝外症状として認識しておこう。ちょっとした皮膚病変なので見落としている可能性がある。積極的に皮膚生検を行う必要がありそうだ。
掌蹠のダーモスコピーにホワイトボードマーカーを利用する
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月26日)
掌蹠の色素性病変の鑑別には、皮溝・皮丘と色素細胞の関連が重要で、ダーモスコピーでの観察もその点にもっとも注意を払う必要がある。特に、皮溝を目立たせたい時には、ホワイトボードマーカーをさーっと塗り、乾いたティッシュペーパーで拭き取ると、インクが皮溝部のみに残るので、観察が容易になる(furrow ink test)。
これは確かに見やすくなる。色は赤がいいようだ。皮膚科医に広く知ってもらう必要があるだろう。
遺伝子疾患としてのサルコイドーシス
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月25日)
4歳以下で発症するまれなサルコイドーシスがあり、若年性サルコイドーシスと呼ばれている。皮膚、関節、眼病変を3主徴とし、肺、肺門リンパ節は侵されないが進行性で、失明、関節拘縮、内臓浸潤を来す。皮膚病変は播種状の小結節が多く、組織は典型的な類上皮細胞肉芽腫。また、これと同様の症状を呈し、常染色体優性遺伝の疾患はBlau症候群と呼ばれている。いずれも領域は異なるが、クローン病と同じ、常染色体16番にあるNOD2遺伝の子変異に基づく疾患であることがわかった。Nod2は細菌の細胞壁成分(muramyl dipeptide:MDP)を認識し免疫反応を活性化させる機能があるが、これらの疾患では、MDPが存在しなくても、Nod2の変異自体がNF-κBの活性化を引き起こし、肉芽腫が形成されると考えられている。
なかなかお目にかかれないが、肉芽腫の発生に関連する分子機構を少し理解できた。通常のサルコイドーシスでは、巨細胞内にMDPが存在することが確かめられていて、アクネ菌や抗酸菌が発症に関与する可能性が指摘されているそうだ。顔面播種状粟粒性狼瘡でもおそらく同様だろう。
MRIの造影剤は透析患者ではむやみに使用しないこと
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月25日)
開業医の工夫の話。pincer nailの治療では、硬く厚い爪に40%尿素軟膏を外用して爪を柔らかくすると、ゆがみが改善して痛みもなくなり、7-8割は弾性ワイアーなどの矯正を行わなくても改善する。
これは造影剤との関連に、よく気がついたと思う。すでに2009年9月に、日本医学放射線学会・日本腎臓学会合同で「腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン」が定められている。透析患者の重要な皮膚症状として、常に念頭において診察しよう。
IPEX症候群とアトピー性皮膚炎
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月25日)
2例の症例報告でいずれも腎不全で透析中。四肢の硬化と膝・足関節の拘縮が徐々に増悪してきた。既往にガドリニウム造影剤(オムニスキャン、マグネビスト)を用いたMRI検査を受けており、腎性全身性線維症(Nephrogenic Systemic Fibrosis)と診断した。進行は緩徐であるが、皮膚、関節以外にも肺、心筋、横隔膜の線維化を来す例もあるので、不必要な造影剤使用は避けるべきである。
制御性T細胞、Th17陽性T細胞はホットな領域で、これからも様々な皮膚疾患との関連がわかってくるにちがいない。なかなかついて行けないので、簡単な総説がほしいものだ。今後はFOXP3を治療に応用する流れになるかもしれないと思った。
真性多血症のかゆみには、アスピリンが効く
第108回日本皮膚科学会総会から(平成21年4月24日)
真性多血症では、特に水に触れる、風にあたるというありふれた刺激のあとに、全身にかゆみが生じることが知られている。増多している流血中の好塩基球がヒスタミンを放出するためと考えられているが、抗ヒスタミン剤は無効なことが多い。症例によってはアスピリンなどのCOX阻害薬が有効であることから、プロスタノイド、特にトロンボキサンA2、プロスタグランディンE2が起痒因子ないし、かゆみの増強因子として働いている可能性がある。
逆に、プロスタグランディンD2はかゆみを抑制する働きがあり、NSAIDでかゆみが増強する場合もあるとのこと。帯状疱疹後神経痛が、のちにかゆみに変わる症例があり、神経痛が軽くなったもと説明しているが、NSAIDとの関連もあるのだろうか。
採血によるヒヤリ、複合性局所疼痛症候群(CRPS)
第122回横浜市皮膚科医会から(平成21年4月4日)
採血や手術の際に神経を損傷することによって生じる難治性疼痛。タイプTは神経損傷が明かでないもの、タイプUははっきりした神経損傷のあるものをいう。症状としては原因となる刺激に不釣合いな強い痛み、皮膚に触れるだけでも感じる痛み(アロデニア)で、消炎鎮痛剤は無効である。早期に判断し、受傷直後から局所への神経ブロック、上肢の場合は星状神経節ブロックなどの適切な処置を行わないと治癒が遷延する。早急にペインクリニックへの紹介が必要である。
覚えておかなければならない疾患で、早期の対応が必要だと知った。採血時の正中神経損傷によるCRPSは6.000回に1回の頻度で起こるといわれていて、臨床検査技師賠償責任保険の最重要項目になっているそうだ
かゆみに有効な冷刺激は20℃前後である
第2回横浜皮膚病免疫治療研究会から(平成21年4月2日)
かゆみの対応として有効な冷刺激は20℃前後であって、冷やしすぎると毛細血管の収縮の後に反応性の充血が生じ、かえって処置前よりかゆくなることがある。かゆみに対しては氷や冷凍した保冷剤より、ぬれタオルの方が有効である。
今までは氷嚢や保冷剤をタオルでまいて、などと薦めていたが、ちょっと考え直さなければならない。実際はどちらがよいのだろうか。自分自身で虫さされなどのかゆみに対してくらべてみよう。
プロトピック週3回外用はアトピー性皮膚炎の無再発状態維持に有効
第2回横浜皮膚病免疫治療研究会から(平成21年4月2日)
中等度以上の成人および小児のアトピー性患者で、16週のプロトピック外用を継続し寛解した197名で、寛解後に週3回のプロトピック外用が再燃予防に有効かを白色ワセリンを対象に行ったRCTの結果。flare-freeの平均期間は、プロトピックで177日、白色ワセリンで134日であった。また、初回再燃の中央値は、プロトピックで169日、白色ワセリンで43日であり、プロトピック軟膏外用はアトピー性皮膚炎の寛解維持に有用である。
これは、何となく想像はしていたが、しっかりしたRCTが行われたことは開業医にとってもありがたいことだ。具体的には、改善した後もいつも湿疹病変が出てくるhot spotに対して、患者さんに週3回の外用を継続してもらう、というのがよいらしい。
クラミジア肺炎に伴う血管炎
第10回北里臨床皮膚フォーラムから(平成21年3月5日)
糖尿病と睡眠時無呼吸のある成人男性。熱発に続発し両下腿に皮内〜皮下の小結節を混じる紫斑を呈した。組織では小動脈の血管炎で、好酸球浸潤を伴っていた。皮膚科的にはPNCに近い病態。最近、C. pneumoniaeが血管に慢性感染を起こし、動脈硬化性疾患に関わる疑いが指摘されている。 また、内科から全身性血管炎、結節性紅斑がC. pneumoniae感染症で生じた症例の報告がある。
C. pneumoniae肺炎は、飛沫感染で伝播して非定型肺炎の病態を示すらしいが、不顕性感染もあるらしい。血管に病変を起こすことがあるので、PNCや結節性紅斑では原因として念頭に置く必要がありそうだ。診断には上気道からの病原体検出が試みられるが、分離は困難で、酵素抗体法やPCRが用いられる。通常は血清中の抗体価をペア血清で比較する。STIの原因となるC.trachomatisとは別の種で、C.pneumoniaeは、1999年から、Chlamydophila pneumoniaeと種の名前が変わったとのこと。
Mali syndrome とエリスロシン
第10回北里臨床皮膚フォーラムから(平成21年3月5日)
立ち仕事の長いパン職人の内踝に生じた褐色のなだらかに隆起する局面。組織では毛細血管拡張と線維芽細胞の増生、ヘモジデリン沈着があり、pseudo-Kaposi sarcomaと診断。arteriovenous malformation(AVM)はなく、慢性の静脈性循環障害が原因と考えた。AVMのないpseudo-Kaposi sarcomeをMali syndoromeと称し、AVMがあるものをStewart?Bluefarb syndromeと呼ぶ。治療としてシャント後のpseudo-Kaposiに有効だったと報告のあるエリスロシン内服を試みた。
確かに静脈うっ滞だけでも起こりそうな病態である。Mali syndromeという病名は初めて聞いた。覚えておこう。なお、エリスロシンには血管拡張を押さえる薬理作用がある?ということであった。別の病態でも使えるかもしれない。
爪を柔らかくさせて、やっとこ爪を治療する
皮膚病診療医会取材(NDC)から(平成21年3月14日)
開業医の工夫の話。pincer nailの治療では、硬く厚い爪に40%尿素軟膏を外用して爪を柔らかくすると、ゆがみが改善して痛みもなくなり、7-8割は弾性ワイアーなどの矯正を行わなくても改善する。
これは簡便でよい方法だ。pincer nailは末節骨が変形し、上にとがっているのが原因で、骨を削って平らにする手術をしないと根本的にはなおらないと思っていた。40%尿素軟膏をさっそくためしてみよう。まずは院内製剤用の材料を手配をしないといけない。
重症虚血肢における、メタボパラドックス
第7回日本フットケア学会から(平成21年2月27日)
603例のPAD患者の生命予後の話。平均年齢は71歳で観察期間の中央値は7年5カ月。死亡は204例で、全体の5年生存率は62%、10年生存率が38%であった。BMI別に比較すると、低BMI群(18.5未満)では、5年生存率が41%、10年が13%と低く、正常BMI群(18.5以上25未満)では5年が66%、10年が40%、高BMI群(25以上)では、72%、52%と生命的な予後がよく、BMIは死亡率と負の相関が認められ、太っている方が予後がよいと言う結果だった。
逆に、重症虚血肢で栄養状態が不良だと、さらに生命予後がよくないという結論になる。往診患者でも栄養状態の評価が必要だが、体重などのフォローができないことがほとんどだ。それにしても多くの症例でたくさんのfactorを解析した、貴重なデータだった。
右大腿に限局した多形紅斑の病変部にVZV?
第72回日本皮膚科学会東京支部学術大会から(平成21年2月21日)
帯状疱疹の既往が2回ある中年男性。鼻孔部の単純性疱疹罹患後、2週間で右大腿に多形紅斑を生じた。単純性疱疹後多形紅斑と診断してアシクロビルの内服を行い、約1週間で色素沈着を残し消褪した。病変部の汗腺に免疫組織学的にVZV抗原を認めた。紅斑の原因としてHSVだけでなくVZVの関与も示唆された。
汗腺にVZVが陽性だと紅斑に至るかが不明。しかし病変部以外の皮膚ではどうだったか知りたい。帯状疱疹罹患者すべての患者で、汗腺にVZV抗原があるとも思えず、不思議。こういった、「まさか」が時がたって常識になることもあるかもしれない。
血小板は慢性接触皮膚炎の白血球遊走に重要な役割を果たしていた
第72回日本皮膚科学会東京支部学術大会から(平成21年2月21日)
ハプテン反復塗布による慢性接触皮膚炎モデルで、ブスルファン投与によって血小板を6万/μlから1万/μlに減少させたマウスでは、皮膚の肥厚、掻破回数、血清IgE、白血球浸潤、Th-2リンパ球に関連する遺伝子発現レベルがいずれも低下した。ここに血小板を静注すると、すべてが増加したが、P-セクレチン欠損血小板の静注では増加がみられなかった。血小板が慢性接触皮膚炎の白血球の遊走に関連していると考えられる。
意外な話であった。アトピー性皮膚炎など、血小板と臨床が関連するか、念頭に置いてみていこう。
接触過敏反応を抑制するBリンパ球の存在
第72回日本皮膚科学会東京支部学術大会から(平成21年2月21日)
接触過敏反応は樹状細胞とTリンパ球による免疫反応と考えられてきたが、Bリンパ球も一連の反応に重要な役割を持っていることがわかった。CD19はBリンパ球に特有のシグナル伝達分子で、抗原と接触することにより、活性化シグナルを増強させる機能がある。したがってCD19の過剰発現は自己免疫を引き起こし、反対にCD19の欠損では、免疫不全となる。しかしCD19欠損マウスではハプテン外用後の接触過敏反応が、正常よりも長く遷延し、耳介腫脹が72時間後でも残っていた。遷延した反応は、脾臓のmarginal zone B cellを移入することによって抑制された。以上から接触過敏反応を抑制する働きを持つBリンパ球(regulatory B cell)が存在することがわかった。
おもしろい発見である。regulatory B cellとeffector B cellのバランスが乱れることで、色々な疾患や病態が起こってきそうである。やはり自己免疫疾患の方に向かっていくのであろうか。
熱性けいれんの小児の約半数が抗ヒスタミン剤を内服していた!
某製薬会社主催講演会から(平成21年2月10日)
発熱で救急外来を受診した小児(平均年齢1.7歳)の統計。熱性けいれんが認められた群では、抗ヒスタミン薬を45.5%が内服しており、発熱はあったが熱性けいれんを認めなかった群の抗ヒスタミン薬の内服率22.7%の約2倍であった。脳内ヒスタミンは覚醒↑・認知↑・運動↑・摂食↓などの機能を有するが、またGABAとならぶ代表的なけいれん抑制物質である。したがって、特に脳内H1受容体占拠率の高い、眠くなる抗ヒスタミン薬では、けいれんを誘発する可能性があるので、注意が必要。
これは日頃から念頭に置かねばならない大事な話だった。2歳未満でも安心して使用できる、味のよい非鎮静性の抗ヒ剤の開発が望まれるところだ。
執着からの解放とアトピー性皮膚炎治療
アトピー性皮膚炎治療研究会第14回シンポジウムから(平成21年2月7日)
アトピー性皮膚炎の精神療法の話。患者の生き方に注視する森田療法を外来で実践している。失敗をおそれ、現実の問題に取り組めず、不安や心理的ストレスがかゆみと掻破を増強させ、皮膚炎が悪化する症例には、変えられないものは変えようとせず、変えられるものだけを変えていくという生活を促すよい。具体的には、1) まあいいや(完全主義からの脱却)、2) とりあえず(行動本位の生活)、3) 幸せさがし(観照)を提案することで、自己肯定感、自己実現、感謝の念、貢献が生まれ、皮膚に対する執着・こだわりから解放され、皮膚炎改善の一助となる。
個人的には、毎日の診療の中で、患者の生き方にまで目をむける時間的、精神的余裕があったことが一度もない。こういった診療にはあこがれるが、私には到底できそうもない。
湿疹とmatrix metalloproteinase(MMP)
2008年度東京支部主催教育セミナーから(平成21年2月1日)
MMPsと呼ばれる酵素が、様々な疾患と関連している。皮膚ではMMP-2(gelatinase A)とMMP-9(gelatina B)およびそれらの内因性特異的阻害蛋白であるTIMPsが重要である。湿疹の局所ではMMP-2、MMP-9がともに上昇している。その際、血中のMMP-2、MMP-9は正常であるが、寛解期には血中TIMP-1が上昇する。また接触皮膚炎の感作刺激の後には、表皮のLangerhans細胞はMMP-9を強く産生する。
結局すべての疾患、病態と関連がありそうでつかみにくいが、炎症にしても腫瘍にしても、組織の障害と修復の過程に関与すると言うことだろう。MMPs阻害薬で組織の障害を減らす、というのが臨床応用への道筋か。
前脛骨部粘液水腫をサンドスタチンの局注で治療する
2008年度東京支部主催教育セミナーから(平成21年2月1日)
ムチンの話。バセドウ病に伴う甲状腺機能亢進症でまれにみられる前脛骨部粘液水腫は、線維芽細胞にあるTSH-receptorとそれに対する自己抗体の作用により、ヒアルロン酸が過剰に産生されるために生じる。これに対しては、ソマトスタチンのアナログ製剤である酢酸オクトレオチド(サンドスタチン)の局注が有効。サンドスタチンは局所の線維芽細胞に働き、ヒアルロン酸の産生を抑制し、併せて甲状腺ホルモンの分泌を抑制することが、その理由と考えられる。
通常はアクロメガリー、内分泌産生腫瘍、消化管内外分泌抑制の目的で使われる薬剤であるが、薬理作用からはまさにこの疾患に効きそうだ。名前ぐらいは忘れないでおこう。
歩行障害質問票(WIQ)による歩行機能評価
某製薬会社主催講演会から(平成21年1月28日)
閉塞性動脈硬化症の下肢虚血では、その初期症状として間歇性跛行があるが、ABPIによるスクリーニングとあわせて、歩行機能の主観的評価も重要であり、WIQが国際ガイドラインで推奨されている。WIQは痛みの程度、歩行距離、歩行スピード、階段を上る能力の4項目を患者が回答するもので、WIQのスコアーが低値だと心血管イベント発症率が高く、生命的予後も悪く、これらはABPIとも相関している。また、アンプラーグ300mg/dayの内服を24週間継続させ、WIQの変化を見たS-WIQスタディでは、WIQの4項目はすべて改善し、30〜40%上昇した。
数値で表すことのできる主観的評価法は、薬剤の有効性の評価として、様々な分野で盛んだ。治療の有効性=QOLの改善、ではない気もするが、世の中の流れのようだ。なおWIQ日本語版は日本脈管学会のHPからダウンロードが可能である。
伴性遺伝性魚鱗癬とエストロゲンの関係
第823回日本皮膚科学会東京地方会から(平成21年1月17日)
生後20日男児の典型例。ステロイドスルファターゼ(STS)遺伝子領域に欠損。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)もこの酵素の器質であり、STSの欠損により、胎盤内でのエストロゲン生合成障害が生じ、子宮内膜の成熟が阻害されるため、児は難産になることが多いとのこと。
STSの役割を久々に思い出した。エストロゲンと関連する子宮内膜癌や乳癌で、STSの阻害剤による治療が試みられているらしい。治療を受けた女性に魚鱗癬の症状が出るかもしれないので、覚えておこう。
アカコッコマダニは空から降ってくる
第823回日本皮膚科学会東京地方会から(平成21年1月17日)
アカコッコマダニ刺症は頭頂部や頚部に発生することが多い。このダニは主に伊豆諸島などに生息するアカコッコという鳥に寄生している。アカコッコは、冬期になると本土に渡って越冬するが、まれに寄生しているダニが飛んでいる間に落下し、それがヒトに寄生するために、頭や頚部に多いと考えられている。
ダニが空から降ってくるとは思わなかった。鳥が運ぶため、市街地でも発生する可能性があるらしい。どのくらいの確率で生じるのだろうか。
脂質ラフトとアトピー性皮膚炎
第28回神奈川皮膚科免疫アレルギー疾患懇話会から(平成21年1月10日)
細胞膜のミクロドメインである脂質ラフト(lipid raft)はスフィンゴ糖脂質とコレステロールに富み、細胞のシグナル伝達に関わっている。高親和性IgE受容体(FcεRI)もこのlipid raft内に存在する。外来性コレステロールの添加で、lipid raftを不安定化させると、IgE依存性TARC産生が抑制された。試みにアトピー性皮膚炎患者に10%コレステロール軟膏を外用させたところ、皮膚症状の改善がみられた。lipid raftを修飾する医薬品でアトピー性皮膚炎が治療できる可能性がある。
コレステロールの外用でアトピー性皮膚炎が改善する可能性があるとは、初めて聞いた。第一三共ヘルスケアのロコベースリペアは5%コレステロール含有とのこと。機会があればためしてみよう。
シャンプーかぶれの原因抗原
神奈川県皮膚科医会新春勉強会から(平成21年1月8日)
理美容師の職業性接触皮膚炎についてのアンケートとフィールド調査。理容師1.058名のうちの115名(10.9%)、美容師675名のうちの166名(24.6%)に手の湿疹があるとの回答があった。悪化因子となる作業は洗髪、パーマ、染毛の順で、洗髪の際の手袋着用率が、髪に絡まって痛がる、温度がわかりにくいなどの理由で7.4%と低いためと考えられる。パッチテストではパラフェニレンジアミンが73.5%に陽性でもっとも多く、次にシャンプーに含まれる界面活性剤であるコカミドプロピルベタインが39.6%、パーマ液の還元剤であるシステアミン塩酸塩が18.8%であった。
理美容師の洗髪作業による手の接触皮膚炎の原因が、多くはコカミドプロピルベタインだと知った。被髪頭部のかぶれの症例でもこれに感作されている場合があるのだろう。
糖尿病とAGE化コラーゲン
第822回東京地方会から(平成20年12月20日)
糖尿病では様々な生体内タンパク質が血糖値のに比例して非酵素的な糖化をうけることが知られている(HbA1cもその結果をみている)。一方、糖尿病に伴うperforating collagenosisではAGE(advanced glycation products)レセプターとして知られているCD36が、表皮細胞に発現していることが酵素抗体法示された。AGE化したI型collagenがAGEレセプターを介して経表皮排泄される可能性が示唆された。
糖尿病性腎症についても、AGE化したW型コラーゲンがメザンギウムに蓄積した結果であるという報告がある。皮膚のW型コラーゲン(表皮基底膜)が厚くなる病態も、糖尿病に合併しておこるのであろうか。
真珠母口内炎とは
第128回神奈川県皮膚科医会から(平成20年12月7日)
金製剤の投与後に生じる口内炎で、上皮の肥厚が主体で浸軟性。炎症は比較的軽く、しっかりした角質増殖もまれ。頬粘膜では縫合部に沿った、境界不鮮明で縦じわが目立つ、白色の混濁した病変を呈する。この状態を真珠母口内炎(Perlmutterstomatitis)という。カンジダ症、粘膜苔癬、後口角部白板症との鑑別が必要。
初めて聞いた。粘膜苔癬の角化とは異なる、白く浸軟した病変が特徴とのこと。よくよく注意深く観察しないとその違いはわからないだろう。頬粘膜を見て、内服している薬剤がわかるという達人の観察眼に感動した。粘膜は奥が深い。
潰瘍性大腸炎に伴ったpalisaded neutrophilic granulomatous dermatitis
第2回神奈川臨床皮膚病理組織検討会から(平成20年12月6日)
潰瘍性大腸炎の患者の手指に生じた圧痛のある皮内結節。同時に手指の腫脹と多関節痛を伴っていた。病理組織はdebrisを伴う好中球浸潤と膠原線維の変性があり、一部には組織球の浸潤を認めた。症状が進行するとpalisading pranulomaに移行する病態の早期病変と考えた。
いかにもアメリカンな、聞いたことのない病名だったが、rheumatoid papuleやrheumatoid neutrophilic dermatitisに近い病変と思われた。記憶にはとどめておこう。不思議な臨床と組織である。
リンパ管硬化症によるリンパ浮腫
第58回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成20年11月27日)
乳癌や子宮頚癌の術後に生じることの多い、リンパ浮腫は、特にリンパ管炎を繰り返すような状況では、動脈硬化と同様に、リンパ管硬化症が生じ増悪する。通常は弾性ストッキングなどの圧迫で治療することが多いが、難治例では顕微鏡下リンパ管静脈吻合術が有効である。
つなぐだけで改善するとは驚いた。もちろん0.5mmのリンパ管を探してつなぐテクニックがあっての話だが、困っている症例も多いので、場合によっては紹介しよう。リンパ管硬化症という病名については反論もあるだろうが、考え方としてはとてもおもしろいと思った。
秋のスギ花粉飛散が実測された!
第58回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成20年11月27日)
大分での検証。10/1〜12/31の間にダーラム型捕集器で計測した実測値。平成15年以降の総飛散数は5.4個〜37.0個/cm2で、飛散が確認された日数は3カ月のうち14〜47日であった。秋にもスギ花粉が少数ながら飛散することが実測された。
これは参考になるデーターだった。まぶたの皮膚炎が11月に増えることを経験しているが、一部の患者は、おそらくスギ花粉に対するhigh responderなのではないかと確信した。
魚のアレルギーはコラーゲン?
第58回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成20年11月27日)
魚によるT型アレルギーの抗原は何かという話。特異的IgEとプリックテストから魚アレルギーがはっきりしている3例のうち、2例でコラーゲンに対する陽性反応が証明された。欧州のタラアレルギーなどで原因抗原の主体と考えられているパルブアルブミンよりも日本の魚アレルギーにおいては重要な抗原と考えられる。
魚のアレルギーはアニサキスが主役と考えていたが、コラーゲンにも注意が必要だとわかった。ただし魚のコラーゲンには牛・豚・鶏のコラーゲンとの交叉反応はないとのこと。また、コラーゲンは低温では抽出できないため、RASTやプリックの抗原抽出液には含まれていない可能性が高いらしい。RASTや試薬を用いたプリックの評価が難しくなると感じた。
アートメイクによって生じたサルコイドーシス?
第821回日本皮膚科学会東京地方会から(平成20年11月15日)
眉のアートメイク(人工眉)を6年前から3回施行。その部分に一致して黄褐色の肉芽腫性結節を生じた。組織は類上皮細胞性肉芽腫。その後背部や外陰部にも結節が生じ、両側肺門リンパ節腫脹(BHL)もあり、皮膚のサルコイド反応だけではなく、全身性のサルコイドーシスと診断した。国外の症例で、入れ墨を除去したら、サルコイドーシスの肺所見とBHLが改善した症例や、ぶどう膜炎が軽快した症例の報告があり、それと同様、注入した色素に対するhostの特殊な免疫反応が発症の原因と考えた。
不思議な症例であった。確かに局所的な異物反応、皮膚サルコイドではないようだ。アートメイクは表皮直下の0.01〜0.03mmに色素を注入するので徐々に色が薄くなり、数年ごとに繰り返し施行する必要があることが、入れ墨との違いで、また入れ墨のような金属は使われていないらしい。
高齢者へのミノマイシン投与は、間質性肺炎に注意
第821回日本皮膚科学会東京地方会から(平成20年11月15日)
テトラサイクリンとニコチン酸アミドが有効であった、肺結核の既往のある68歳の落葉状天疱瘡の症例。アクロマイシンV(テトラサイクリン)1000mg/日、ニコチン酸アミド900mg/日を使用した。水疱性類天疱瘡の治療のファーストラインは、この両者の併用療法で、ミノマイシンを用いることも可能だが、間質性肺炎の併発の懸念から、最近はアクロマイシンVが主流になっているとのこと。
高齢者、特に施設入所者や在宅患者の水疱性類天疱瘡では、いままでミノマイシンを使ってきた。副作用の経験はないが、施設や在宅の寝たきり患者では、息切れなどの自覚症状を聞くことも難しく、胸部X線も撮れないので、アクロマイシンに変更するべきなのだろうと考えた。日皮の皮膚科Q&Aでもアクロマイシンの使用を勧めていることに気づかなかった。
HPV16型が検出されたbowenoid papulosis、パートナーにはHPVワクチンが必要か
第821回日本皮膚科学会東京地方会から(平成20年11月15日)
24歳の男性の外陰部に多発性に生じた黒褐色結節。組織はBowen病に類似し、bowenoid papulosisと診断した。組織のPCRから、子宮頚癌のハイリスク群として知られるHPV16型が検出された。パートナーから感染したかどうかは不明。
HPV16型陽性の異性からの感染が疑われる。少なくとも現在のパートナーには、HPVのワクチン投与ができるとよいだろう。ちなみに、メルクのガーダシル、GSKのサーバリックスの2種類が日本でも承認待ちの段階で、まもなく使用できるようになるらしい。また、子宮頚癌の健診でも細胞診に加えて、HPVの定性テスト(PCR)を行った方がよいという意見もあるようだ。bowenoid papulosisでも定性、型判定が必須ということがわかって、よい報告であった。
振動で血流を改善する!
平塚市医師会講演会から(平成20年11月6日)
踵やくるぶしのT度褥瘡に対して、振動が有用であり、ベッドのマットの下に置く機器を開発したと言う話。振動は四肢末梢では、逆に血行障害を起こすイメージがあるが、血管エコーと酸素分圧の測定から、傷害を起こさず血行を改善する振動条件(600mV、47Hz、変調周期15秒)を定めた。下肢の筋肉あるいは皮膚を刺激したことで軸索反射やシアストレスによって生じたNOによる血管拡張作用により、血流が改善すると考えらた。臨床的には1日3回、15分の加振で、足のT度褥瘡が平均3.3日で改善した。
超音波検査では静脈の還流改善が示されていた。治療に困っている静脈うっ滞性の皮下脂肪織炎によいのではないかと考え、導入した。現在、週に1回通院していただいている患者さんに使用中で、少し良さそうな感じである。症例を増やして報告したい。なおこの機器はマツダマイクロニクス株式会社からリラウェーブの商品名で販売されていて、科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業で評価されている。
褥瘡の絶対的評価、深さは予後に関係なし
平塚市医師会講演会から(平成20年11月6日)
褥瘡の経過を評価するDESIGNは個別の評価には有用であるが、別々の患者の絶対的評価には使用できなかった。DESIGNPのそれぞれに重み付けを行うことで、この問題点を解決したDESIGN-R(R:rating)を作成した。3601例の症例の経過から、Eが6まで、Sが15まで、 Iが9まで、Gが6まで、Nが6まで、Pが24までの点数をつけた。ポケットのあるなしが、重症度に大きく影響することが証明された。なお、D(深さ)はほかのすべての要素と関連するため、評価には含めないことになった。また、Deep Tissue Injuryを考慮し、深さ判定不能(DのU)が加わった。
深さが関連しないというのは意外だったが、ポケットの有無が大きいことは予想通りだった。ポケットの切開によって、S(大きさ)が大きくなっても、ポケットがなくなれば総合評価としては点数が減るというのも、実際の臨床にあった重み付けになった。評価表は真田弘美先生のHPにPDFが用意されている。
老人の乾癬はみんな薬剤性かも?
第121回横浜市皮膚科医会から(平成20年11月1日)
高齢者で乾癬を見たら、まず薬疹を疑うべきという話。薬剤が中止されないまま、難治な病変として経過が長くなっている症例が多い。特にCa拮抗薬、β遮断薬には注意が必要。乾癬型薬疹には、@薬剤の投与で発症し、中止によって消褪する症例、A薬剤投与で発症し、中止で軽快はするが、完全には消失しない症例、B乾癬の既往があり、薬剤の投与で増悪する症例、の3種類がある。特に、A、Bは乾癬の素因が発症や悪化に関与し、徐々に増悪した場合は薬剤の関与がいつからかが明らかでない症例もある。
最近は特養の超高齢者でも乾癬と診断することが増えたような気がする。確かに多くの症例で、高血圧治療薬が投与されているかもしれない。ダラダラと内服している場合が多いので、因果関係を見落としている。薬剤中止を指示しないといけない症例があるに違いない。
トリクロロエチレンもDIHSに似た症状を起こす
第121回横浜市皮膚科医会から(平成20年11月1日)
金属部品などについた油脂に対する脱脂洗浄剤として、町工場などで使用されている、有機塩素化合物。発癌性の問題から徐々に使用されなくなってきたが、中国や東南アジアではまだ使われているらしい。働き始めて1ヶ月ぐらいから症状が出現し、肝障害、発熱などを伴い、皮膚症状もDIHSに似る重症例があり、HHV6の再活性化も1/4で見られるとのこと。
1980年代には日本にもあって、急性中毒による死亡例もあったようだ。貴重な写真を見せてもらった。
pitted keratolysisにはアクアチムクリームが効く
第121回横浜市皮膚科医会から(平成20年11月1日)
当院の集計を報告した。pitted keratolysisは、多汗のある人に生じる足蹠の点状角質欠損で、夕方になると靴下に足が張り付く、においが気になるなどの主訴で来院する。表在性の細菌感染症で、原因菌としてはCorynebacterium属、Streptomyces属などといわれている。決してまれな疾患ではなく、当院での3年間の集計では、101例の症例があり、男性が75例、女性が26例。年齢分布では10代が11例、20代が30例、30代が29例、40代が17例と若年成人男性に多かった。細菌培養が陽性だった症例が14例あり、混合感染が目立つが、その内訳は、Corynebacterium sp.が3例、Staphylococcus epidermidisが7例、MSSAが3例、そして、Acinetobactor sp.が7例と半数もあり、疾患との関連があるのではないかと考えられた。治療は、表在性細菌感染であるから当然だが、アクアチムクリームの外用が有効で、切れ味がよい印象を持っている。
教科書的にはCorynebacteriumだとばかり思っていたが、Acinetobactorとは、一体何者?今後も細菌培養の検討は続けていこう。なお、真菌との混合感染もあるが、その際は、イミダゾール系の外用抗真菌剤を用いると、細菌に対してもある程度抗菌活性があるので、併用はしなくてもよいかもしれないとのこと。
持続するストレスがIgEを高くする?
第4回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成20年10月11日)
アトピー性皮膚炎と精神的ストレスの話題。85人のアトピー性皮膚炎患者に対して、不安の高さを定量的に評価できるstate-trait anxiety inventory(STAI)を用いて、健常人との比較、さらにストレスと皮膚炎の程度、血中IgE値などの各種ファクターとの相関を調べた。アトピー性皮膚炎患者では、変化するストレス(SA)、持続するストレス(TA)の両方とも健常人より高く、特にTAの値が高かった。また、SAが高いと、IgEが低い傾向があり、また、TAが高いとIgEが高かった。TA/SA比とIgEには正の相関があり、TA/SA比が高いほどTh2にシフトしていると考えられる。
結果と原因の関係が理解しにくい感じがした。症状の強さと特性不安の数値が相関しそうな雰囲気も、日々の診察から何となく伝わってくる。心理テストも時間があったらやってあげたいところだ。
表皮の海綿状態はヒアルロン酸の増加と関連する
第4回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成20年10月11日)
ヒアルロン酸は生体内において、水分を引き込む作用があると考えられている。接触皮膚炎の病理学的特徴である、海綿状態では、局所でのヒアルロン酸の増加とヒアルロン酸合成酵素活性の増強があることが証明された。また、培養表皮細胞にIL-4、IL-13、INF-γを添加すると、ヒアルロン酸の産生が増強した。接触皮膚炎局所に浸潤するT細胞が分泌する炎症性サイトカインがヒアルロン酸産生に関わっていると考えられる。さらに、海綿状態では、E-カドヘリン、アクアポリンも局所的に減少しているが、これらも炎症性サイトカインの調節を受けている。
ヒアルロン酸といえば真皮のものという認識があったが、表皮細胞が合成しているとは知らなかった。接触アレルゲンに対する合目的的な反応だとすれば、局所での抗原を希釈する働きだろうか。
口唇の接触皮膚炎で注目すべき配合成分
第38回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成20年10月8日)
リップクリームないし口紅による接触皮膚炎の症例で成分パッチテストを施行した2演題。いずれもリンゴ酸ジイソステアリルが陽性だった。また1例ではイソステアリン酸グリセルが陽性であった。いずれもエモリエント剤(皮膚柔軟剤)として多くの化粧品に使用されているとのこと。
リップクリームや口紅のかぶれは多いが、いつも何が原因なのかわからず、興味があった。l-メントール以外にも色々ありそうで、開業医にはパッチテストは難しそうである。
DIHSではHHV-6以外にも他のヘルペス属ウイルスの再活性化が起こる
第38回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成20年10月8日)
DIHSの症例報告2演題。1例はアロプリノールによるDIHSで、経過中外陰部に潰瘍を生じた。生検ではウイルス性巨細胞があり、単純疱疹ウイルスの局在が証明された。単純疱疹ウイルスのIgG抗体の上昇を伴っていた、同時に、HHV-6とサイトメガロウイルス(CMV)のコピー数増加した。もう1例は、ゾニサミドによるDIHSで、CMVだけのコピー数増加を認めた。CMVの再活性化による症状としては皮膚潰瘍、消化管出血、心筋炎が知られているが、それらの症状はなかった。DIHSでは、HHV-6以外のヘルペス属ウイルスについても再活性化されることに注意する必要がある。
DIHSを見たときに注意すべき臓器障害、行うべき検査が付け加えられた、大事な報告であった。
新しい抗癌剤と手足症候群
第38回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成20年10月8日)
進行性腎癌に2008年1月から使用が認可された、ソラフェニブ(ネクサバールR)という経口抗癌剤。内服4日目から口腔内の違和感、6日目には手足のしびれ、圧痛。7日目には指尖、手掌に水疱を伴う紅斑が出現し、手足症候群(hand-foot skin reaction)と診断した。同様の副作用は、5FU、UFT、カペシタビン(ゼローダR)などが有名だが、その他、ドキソルビシン(アドリアシンR)、メトトレキセート、エトポシド(ラステットSR・ペプシドR)、ドセタキセル(タキソテールR)、シタラビン(キロサイドR)でも報告されている。
最近の抗癌剤はどうも手足の皮膚にトラブルが多いようだ。汗、末梢循環、機械的刺激、角層の厚さ、などが関連するのか。何故手と足なのか知りたいところだ。
お好み焼きの摂食後のアナフィラキシーの原因は、紛れ込んだダニだった!
第38回日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成20年10月8日)
お好み焼き摂取後の口腔内違和感、喘息発作、膨疹、アナフィラキシーショックなどの即時型アレルギー症状。CAP-RASTで小麦、グルテンは陰性、ダニ類に強陽性。プリックテストでも小麦は陰性でダニが陽性。持参したお好み焼き粉で強陽性。新しく開封したお好み焼き粉では、陰性。持参した粉には、コナヒョウヒダニの死骸が無数確認された。同様の報告を集計すると、ほとんどが常温で数ヶ月以上、輪ゴムで止めるなどして保存された、ミックス粉で、コナヒョウヒダニ、ケナガコナダニが検出された。なお、すべて加熱したお好み焼きで症状が起こっていて、熱ではダニの抗原性が消失しないとのこと。
これは見過ごすことができない。製品の裏に、「長く室温で放置するとダニがわき、アレルギーの原因になることがあります。」と注意喚起が必要だと思った。一度開封したお好み焼き粉は水を通さないパックに入れ変え、冷蔵庫に保管する必要がある。
飛沫感染と飛沫核感染
某製薬会社主催講演会から(平成20年10月20日)
病原体含んだ患者の咳・くしゃみなどの飛沫が他人の粘膜に付着、侵入することで感染が成立するのもが飛沫感染。飛沫核感染は、飛沫より小さな微粒子(直径5μm以下)が原因。放たれてから2〜3時間は空気中を漂い、いわゆる空気感染をきたす。飛沫核感染(空気感染)を起こす病原体は、水痘・麻疹・結核である。
恥ずかしいが忘れていた。覚えかたは以下の通り。「空気が乾いたら、水(水痘)をま(麻疹)け(結核)!」それ以外の多くの急性発疹症は飛沫感染。伝染性紅斑や突発性発疹も?
災害医療のCSCATTTとは
保土ヶ谷区医師会災害医療講習会から(平成20年9月25日)
災害時は、傷病者が医療資源を上回り、医療の供給が需要に満たない。災害医療で重要なことは、Command(指揮命令)、Safty(安全)、Communication(情報伝達)、Assessment(評価)、Triage(トリアージ)、Treatment(治療)、Transport(搬送)である。トリアージは災害医療の一つの要素に過ぎないが、最大多数に最良の医療(Best for Most)を供給するために重要。災害現場では歩行、呼吸、循環、意識の評価のみで、1分以内に行うSTART(Simple Triage and Rapid Treatment)が用いられる。まず歩行可能なら緑、気道開放後に自発呼吸がなければ黒、呼吸数が10〜29でCapillary Refill Time(爪床5秒圧迫後の毛細血管再充血時間)が2秒以下で、簡単な命令に答えられるが、歩行ができない時が黄色、それ以外が赤となる。
災害医療は地域医療を担う以上、避けて通れない。以前に比べると格段に系統立って、分かりやすくなった。
頚部術後の患者には、食事で頬に汗をかかないか聞く必要がある
第820回東京地方会から(平成20年9月20日)
右頚部リンパ節廓清術の1年後から、咀嚼時に右の頬がぬれる感じが出現。耳下腺から唾液の分泌を促す耳介側頭神経が、再生の際に汗腺と連絡してしまうために生じる状態で、Frey症候群と呼ばれる。耳下腺腫瘍の術後合併症として有名であるが、同様の症候性味覚性発汗は外傷、糖尿病、帯状疱疹後にも発生することもある。
発汗異常は医者にとっても、患者にとっても発見が難しい。帯状疱疹後に起こる事があるとのことだが、今までは訴えを聞いたことがない。今後は頚部の帯状疱疹ではしっかり聞いていこう。
角化や色素は真皮が決める!
Foot-and Leg Conferenceから(平成20年9月13日)
皮膚の厚さやメラニンの量は表皮細胞ではなく、その直下の線維芽細胞が決めると言う話。そもそも足蹠に大腿の皮膚を分層で植皮するとうすいままだが、suction blisterを作って取った表皮だけを植えると、しっかりした足蹠の表皮に変化する。掌蹠の表皮直下にある線維芽細胞はDickkopf 1(DKK1)のレベルが他の場所の皮膚線維芽細胞より高い。DKK1は発生学的に頭部、骨・関節の形成に重要な因子であるが、厚い表皮の形成にも重要な因子で、表皮細胞に対し、掌蹠に特有のkaratin 9の発現を誘導する。また、メラノサイトの機能を抑制する働きもあり、メラニンの受容体として知られてるproteinase-activated receptor-2(PAR-2)の発現を抑制し、さらに毛包、脂腺系への分化に重要なβ-cateninの発現を抑制する。以上から、線維芽細胞のDKK1が高いことが、表皮が厚く、毛がなく、色が白い、掌蹠型の皮膚と深く関連している。
これはおもしろかった。削ってもすぐにもとの大きさになる胼胝のできる人がいるが、その直下の線維芽細胞のDKK1はどういうレベルなのだろうか。よほど高いようなら、真皮まで切除しないと再発すると言うことか。
足趾の潰瘍はデブリードマンと同時に骨を砕くと治りが早い?
Foot-and Leg Conferenceから(平成20年9月13日)
もう一つ、足趾の潰瘍の治療の話。末梢にできた潰瘍の壊死組織のデブリードマンの際に末節骨などの潰瘍の下にある骨を砕き、骨髄を露出させる。それをフィルムで閉じこめておくと肉芽形成が起こってくる。骨髄中の幹細胞が筋線維芽細胞や血管内皮細胞に分化するためで、一種の骨髄移植と潰瘍閉鎖療法を組み合わせた方法である。
やや過激な感じもするが、理論に基づく実践的な方法だと感心した。在宅のPADの潰瘍は難治なので、機会があれば試してみたいと思う。
末梢血単核球細胞移植による重症虚血肢の治療
Foot-and Leg Conferenceから(平成20年9月13日)
PADなどの重症虚血肢に対する血管再生治療。骨髄幹細胞ではなく、G-CSF投与後の末梢血中からCD34陽性細胞を選択的に集め、それを用いる方法。末梢血幹細胞を採取しやすくするために、まず、患者に4日間G-CSFを10μg/kgを投与する。その後、10?の血液を遠心し、CD34陽性細胞を1000万個ほど得る。それらを血管造影などで虚血のある部位に筋注し、その後痛みのscale、ABPI、経皮酸素分圧などを指標として評価する。なお、悪性腫瘍、糖尿病性網膜症、心・脳の不安定プラークの存在が疑われる症例は適応にならない。いままで16例で試み、4例で有効だったとのこと。
骨髄からでは大変だが、末梢血中から取るというのは優れた方法だと思った。末梢血管再生治療研究会という集まりがあり、もっと多くのretrospectiveな調査が行われているようだ。治療の一つとして、頭に入れておこう。潰瘍の周囲に局注したら難治の潰瘍がよくなるのであろうか。
在宅の褥瘡は皮膚科医が介入した方が早く治る
神奈川県皮膚科医会在宅医療勉強会から(平成20年9月11月)
在宅での褥瘡管理上、皮膚科医が往診をして介入したケースと介入しなかったケースの群間試験。皮膚科医が介入した方が早く治る、designが減少しやすい、患者・家族の満足度が高いという結果が出た。またdesignが下がりやすい状況は、Eが小さい場合、Iが大きい場合、皮膚科医が介入した場合であった。
褥瘡管理に在宅を診る皮膚科医の役割が小さくないことが証明できて、よかったと思う。もっと在宅患者をみる皮膚科医が増えて欲しいものだ。
Unna型の脂漏性皮膚炎
横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成20年9月4日)
頚部・腋窩などに類円形、小判型で、辺縁にやや浸潤が強い紅斑局面をきたす脂漏性皮膚炎のタイプを古くからウンナ型と呼ぶ。体部白癬、ジベルバラ色粃糠疹、癜風との鑑別が必要。なお、眼瞼など、好発部位でないところに生じた脂漏性皮膚炎を見たら、薬剤性を考える必要がある。原因となる薬剤はアンタビュース、D-ペニシラミン、金製剤、カルバマゼピンなど。
確かにこういうタイプがあるが、今後はUnna型としてまとめておこう。マラセチアの関与につては知りたいところである。まずは鏡検で調べてみよう。
オスの方がメスより皮膚のストレス感受性が高い
北里大学皮膚科同門会から(平成20年7月20日)
ストレスに対する皮膚反応の性差をラットで検討した。成熟個体のラットに急性ストレスとして電気のフットショック、慢性ストレスとして3ヶ月間の隔離飼育を行った。その後背部皮膚を採取し、ELISAによりsubstance P(SP)および神経成長因子(NGF)を測定した。急性ストレス下のオスではNGF量は直後から増加、3日後および5日後にも増加傾向が見られ、常にメスより高い値を示した。慢性ストレス下でも同様の変化が見られた。SP量はオスにおいて急性ストレスの3日後から減少し、5日後も減少は続いた。メスも同様の経過を辿ったが、オスの方がより顕著な変化を示した。慢性ストレスでも同様に、SP量はオスで顕著に低下した。ストレス負荷による皮膚SP量の減少は、皮膚神経からのSP遊離が亢進し、neutral endopeptidase(NEP)などの分解酵素によって即座に分解された結果であると考えられる。皮膚NGF産生とSP放出でみる限り、オスはメスに比べてストレスに対する皮膚の反応性が高いことが示された。
かゆみとストレスの関連が言われている。人でも同様であれば、ストレスによる痒み、さらには掻破行動がより男性に起こりやすいということか。
ustekinumabは乾癬治療薬としてかなり有望
第27回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成20年7月17日)
乾癬の生物学的製剤による治験の経過報告。infliximab(レミケード)TNF-α、adalinumab(ヒューミラ)TNF-α、etenercept(エンブレル)TNF-α、efalizumab(ラプティバ)LFA-1 α sub-unit(CD11a)、alefacept(アメビブ)LFA-3、ustekinumab IL-12/23についての報告。この中ではefalizumabとalefaceptが厳しい状態。infliximabとeternerceptは連続しようで効果が落ちる懸念。ustekinumabはPASI75が59〜81%と有効率が高く、皮下注で効果がすみやか、単回投与で34ヶ月まで有効例があるなどかなり有望とのこと。
いよいよ市場に登場しそうだ。ただし胸部レ線などがフォロー中必要と思われ、開業医はちょっと手を出しづらいかも。
血管炎にネオーラルは使えない?
第819回日本皮膚科学会東京地方会から(平成20年7月12日)
Churg-Strauss症候群の症例報告。多発単神経炎を伴う典型例。ステロイドにプログラフの内服を併用した。ネオーラルを用いなかった理由は、ネオーラルには血管の収縮作用(これが副作用である高血圧の発症機序と考えられている)があるので、血管炎には使いづらいためである。
細かい配慮で、大切な事だと思った。ネオーラルの血管内皮細胞への作用として、トロンボキサンやエンドセリンを分泌し、末梢動脈を収縮させ、腎血流量や糸球体濾過量が低下し、腎血管抵抗や平均血圧が上昇すると考えられているらしい。
第二世代抗ヒ剤の使い分け
某抗ヒ剤学術講演会から(平成20年7月5日)
第二世代抗ヒ剤は、化学物質としての構造から、三環系とピペリジンないしピペラジン系に大別できる。ケトチフェン(ザジテン)、アゼラスチン(アゼプチン)、エピナスチン(アレジオン)、ロラタジン(クラリチン)、オロパタジン(アレロック)が三環系、エバスチン(エバステル)、フェキソフェナジン(アレグラ)、ペボタスチン(タリオン)、オキサトミド(セルテクト)、セチリジン(ジルテック)がピペリジン・ピペラジン系に属する。慢性蕁麻疹などで、効果が不十分であった場合には、同系の薬剤に変更するより、別の系の薬剤に変更した方が有効性が高くなるかもしれない。
蕁麻疹やアレルギー性鼻炎などの慢性疾患では是非心得ておきたい。数多くの症例を蓄積すれば、結論が出るだろう。なお、ピペリジン・ピペラジン系に属する5剤の覚え方が紹介された。「アレグラい、エバった、ジーさん、セは、タリん」である。五七五でたいへん調子がよい。
小児の急性熱性疾患の鑑別と発疹症
第32回日本小児皮膚科学会から(平成20年6月28日)
発熱を伴う小児の急性感染症の多くは気道感染症であるが、それらを咳の有無で2つのグループに分け、咳があれば下気道、なければ上気道の感染症を考える。咳のない高熱では、溶連菌感染症、アデノウイルス、各種エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス、突発性発疹を考える。咳のある高熱では、インフルエンザウイルス、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルス、ライノウイルス、麻疹を考える。夏季にはエンテロウイルス感染症が多く、小児科では「夏かぜに、咳なし」といわれている。また、主に夏季に、頬と四肢に小紅斑をきたす「顔四肢発疹症」という疾患群があり、これはエンテロウイルスの中の、特にエコー、コクサッキーA9が原因らしいとのこと。
小児の感染症の鑑別に有用な話だった。顔四肢発疹症と仮称された疾患には、当院でも心当たりがある。2歳以下がほとんどで、指趾間などに紅斑性丘疹が出現し(いわゆる砂かぶれ様)、時に手背・足背・膝蓋部・両頬にも紅斑性丘疹が出るが、ジアノッティーほどしっかりした丘疹にはならない発疹症を経験する。冬季に多いような気がするが、いずれまとめてみよう。
rosaceaの原因はcathelicidinの過剰発現か
第32回日本小児皮膚科学会から(平成20年6月28日)
表皮は病原体との接触や表皮自体の損傷に際し、いくつかの自然免疫システム(非特異的防御機構)を発動させるが、その中の一つに内因性の抗菌ペプチドの産生がある。表皮が産生するhuman-cathelicidin(hCAP18)はプロテアーゼにより切断され、通常ではC末端の37アミノ酸残基が抗菌活性を持つペプチドLL-37を遊離するが、rosaceaにおいてはプロテアーゼインヒビターが壊れ、cathelicidinが多くの細かい産物となって出るようになり、それが炎症と血管拡張の原因になると考えられる。
抗菌ペプチドの産生は、アトピー性皮膚炎で減少し、乾癬では過剰発現しているという報告もあるらしい。皮膚疾患の原因としてどれだけ重要かは、まだはっきりしていない。
抗セントロメア抗体陽性シェーグレン症候群に合併した末梢動脈閉塞症
第818回日本皮膚科学会東京地方会(平成20年6月21日)
抗セントロメア抗体陽性の75歳、女性の原発性シェーグレン症候群。足趾に難治性の潰瘍があり、MR-angiographyで末梢動脈の閉塞を認めた。肺高血圧症を伴う。抗セントロメア抗体陽性原発性シェーグレン症候群は、抗SSA抗体陽性群よりも平均年齢が10歳以上高齢で、レイノー症状の合併頻度が50%と高く、高IgG血症の合併はまれで、白血球減少の頻度が低い、という特徴がある。
シェーグレン症候群でも抗セントロメア抗体を調べておく必要がある。なお、この症例では、肺高血圧症があるので、末梢動脈閉塞に対しボセンタンの使用が可能であるとの意見があった。強皮症の足趾潰瘍の予防・治療に有効という報告があるとのこと。
失神をきたすコリン性蕁麻疹で行うべき検査
第20回日本アレルギー学会春季臨床大会から(平成20年6月12日)
男子学童、入浴後、情動変化時の蕁麻疹と運動後の意識消失発作。脳波(てんかんの鑑別)、頭部MRI、頭部MR-angiography(もやもや病の鑑別)、心電図、ホルター心電図(房室ブロックや不整脈の鑑別)、心臓超音波検査(心筋症の鑑別)、立位負荷血圧測定(起立性低血圧の鑑別)では異常なし。head up tilt test(頭部挙上試験)で、失神様誘発があり、血管迷走神経性失神と診断。また、Treadmill excercise test(運動負荷試験)で、は、10分後に一瞬の失神発作と血圧低下があり、運動中止数分後から上半身に小型の膨疹が出現し、コリン性蕁麻疹と診断した。運動、緊張、情動変化などの交感神経優位の状態でコリン性蕁麻疹が生じ、その後の交感神経の緊張離脱で血管拡張が生じ、血管迷走神経性失神が起こったと考えた。
どんな検査をすればよいか、きれいにまとまっていて大変参考になった。失神が交感神経興奮のあとの離脱症状というのは、なるほどと思った。
カフェオレ斑は日本と欧米で定義が異なる
第5回相模原皮膚科学セミナーから(平成20年6月14日)
日本では茶あざが1〜5個であれば、扁平母斑(Nevus spilus)、6個以上であればカフェオレ斑と定義し、カフェオレ斑は神経線維腫症(NF1)やAlbright症候群に伴う皮膚症状とされるが、欧米ではこれらの母斑症の有無にかかわらず、ひとつの茶あざもカフェオレ斑と呼ばれている。また、欧米でNevus spilusと定義されている疾患は、Speckled Lentiginous Nevus、すなわち日本の点状集蔟性母斑をさすことが多いので、注意が必要である。
確かに、国外のアトラスを見るとその通りの写真が掲載してあって驚いた。Nevus spilusが、欧米ではメラノーマの発生母地になるが、日本ではならない、というのも釈然としない。最近の傾向から、結局は欧米の定義に変わってしまうのだろう。
アトピー性皮膚炎の頚部の色素沈着に似た皮膚病の鑑別
第30回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成20年6月5日)
アトピー性皮膚炎のduty neckに似た皮膚病の鑑別診断。1. dyskeratosis congenita(Zinsser-Cole-Engmann症候群):粘膜の白板症、爪のdystrophy、貧血、2. dermatomyositis:特に思春期の症例、3. 全身性強皮症、4. 扁平苔癬ないしlichen pigmentosus:高齢者の男性に多い、5. リール黒皮症(pigmented contact dermatitis)、6. 先天性ポルフィリン症、7. 黒色表皮腫:若年男子に多い、8. Darier病、などの鑑別が必要。
なるほど、色々あるものだ。特にdyskeratosis congenitaは見落とさないようにしないといけない。有名なtriasだがすぐ忘れる。
慢性蕁麻疹に続発するcutis laxaとmid-dermal elastolysis
第24回日本臨床皮膚科医会総会から(平成20年5月24日)
cutis laxaはエラスチンの遺伝子異常で生じる先天性の疾患であるが、まれに、多発性骨髄腫などに伴う後天性の症例がある。さらに、慢性に繰り返す蕁麻疹の患者で、顔面・腋窩・腹部などに皮膚の弛緩、しわの増加、弾力性の低下をきたす例が報告された。また、腹部や腰部などに多発する、毛孔一致性の柔らかい小結節で、細かいしわが表皮にみられ、組織学的に真皮中層と真皮乳頭層の弾性線維の欠如がある、mid-dermal elastolysisという疾患も、蕁麻疹や多発性環状肉芽腫に続発して起こることが知られている。いずれも浸潤する好中球などの炎症性細胞が放出するelastaseが皮膚の弾性線維を破壊したために生じると考えられている。
そういう症例があっても不思議ではないが、cutis laxaのようなびまん性の皮膚弛緩症にまで至るのは、遺伝的な素因があるのではないか。mid-dermal elastolysisの症例は探せば見つかるかもしれない。
LED光源による低温熱傷
第107回日本皮膚科学会総会から(平成20年4月20日)
小児科入院患者の全身管理で用いられることの多い、パルスオキシメーターのプローブによる低温燃焼が、装着部位の手指・足趾に発生することがある。これらのプローブの光源はLEDであり、正常に装着された状態では、発光部直下の温度上昇は1〜2℃であるが、環境温度が高かったり、発熱等で装着部位の皮膚温度がもともと高い場合や、プローブの上から必要以上にテープで巻いたりすると、表面からの発熱が妨げられ、局部的に熱傷を起こす温度となる場合がある。プローブは発熱源であることを認識し、装着部位の変更を心がける必要がある。
LEDによるやけどは今後は外来でも診る可能性がありそうだ。注意していこう。
ヘパリン起因性血小板減少症は静脈血栓を起こす
第107回日本皮膚科学会総会から(平成20年4月20日)
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)はヘパリンの使用中に血小板減少をきたす、ヘパリンの副作用で、ヘパリンの血小板直接刺激により投与2〜3日後に発症するtypeTと、一過性に出現するヘパリン依存性自己抗体(抗ヘパリン-血小板第4因子複合体抗体:HIT抗体)が血小板を活性化するために、投与5〜14日後に発症するtypeUに大別される。重篤な合併症を引き起こすのはtypeUで、その臨床上の特徴として、@ヘパリン(未分画、低分子分画を問わない)を投与中(血液透析のように間歇的投与や、点滴回路のヘパリンロックも含まれる)に発症する、A血小板数が急激に減少する、Bヘパリンの投与中止により血小板数が急速に回復する、Cしばしば、動静脈血栓を合併する、ことがあげられる。血栓は静脈に多く、カテーテル刺入部に起こると皮膚潰瘍の原因になるので、注意が必要。検査上、HITでは、血小板の活性化に伴ってトロンビンが産生されるために種々の凝固分子マーカー(D-ダイマー、プロトロンビンフラグメントF1+2、トロンビン・アンチトロンビン複合体など)が異常に増加し、あたかもDICを思わせる所見を示す。最近では抗ヘパリン-PF4複合体抗体(HIT抗体)の検出も可能となっている。治療は抗トロンビン剤であるアルガトロバン(ノバスタンR)が第一選択で、ワーファリンはプロテインC系の抑制のため皮膚壊疽を引き起こす可能性が高く、急性期での投与は禁忌である。
開業医が診ることは少ないかもしれないが、透析患者では注意が必要であると思った。
自己炎症性疾患とは!!?
第107回日本皮膚科学会総会から(平成20年4月20日)
自然免疫シグナル機構の遺伝的な異常によって、好中球、単球・マクロファージの機能が亢進する全身性炎症性疾患を自己炎症性疾患とよぶ。自己炎症性疾患の代表的な疾患である遺伝性周期熱症候群においては、多くがIL-1の産生機構に関与する遺伝子の変異であることが明らかとなってきた。若年性特発性リウマチやベーチェット病に類似する病態を呈するので鑑別疾患として重要である。さらに皮膚科的には、家族性地中海熱(FMF)では丹毒様の紅斑、高IgD症候群(HIDS)では血管炎による丘疹・結節、TNF受容体関連周期熱(TRAPS)では遠心性遊走性紅斑をきたすことがある。また、クリオピリン関連周期熱(CAPS)と総称される疾患には、家族性寒冷蕁麻疹(FCU)、Muckle-Wells症候群(MWS)、CINCA(Chronic Infantile Neurological Cutaneous Articular)症候群があり、いずれも皮膚症状としては蕁麻疹ないし持続性の紅斑をきたす。治療としては、CAPSではアナキンラ(IL-1R抗体)が特効薬で、FMFでも有効例が報告されている。
疾患群の雰囲気は十分伝わってきた。凍瘡様紅斑に限局性脂肪萎縮を伴う日本人だけに見られる遺伝性周期熱症候群(中條−西村症候群)というのもあるらしい。
異形麻疹と修飾麻疹は定義が異なる
第107回日本皮膚科学会総会から(平成20年4月19日)
ここ数年、高校生や大学生の罹患が社会問題となった麻疹は、そもそも1966年から、不活化ワクチンと生ワクチンの併用法(KL法)によって予防接種が開始された。しかし不活化ワクチンによって感作された後に自然麻疹に罹患すると、カタル症状が乏しく、発疹は四肢末端に強く、肺炎や胸膜炎を合併することがあり、これを異形麻疹と呼んだ。1969年以降はKLの併用方式は中止となり、その後は高度弱毒生ワクチン(FL)の単独接種に切り替えられた。1978年10月から開始された定期麻疹ワクチン接種はFLワクチンが採用されている。一方、母体由来の移行抗体が残っている乳児や、ヒトγ-グロブリンを投与された場合、また最近では麻疹ワクチン接種後数年を経過するに従い抗体が低下し、Secondary vaccine failureをきたした場合など、軽症の不全型麻疹を発症することがあり、これを修飾麻疹と呼ぶ。修飾麻疹は潜伏期が14〜20日に延長し、前駆期症状は軽いか欠落し、コプリック斑は出現しないことが多く、発疹の癒合傾向も少なく、通常合併症もなく、経過も短いという特徴がある。
恥ずかしながら忘れていた。麻疹ワクチンの歴史を知らないといけない。2006年6月からは1歳と小学校入学前の1年間の2回接種となり、さらに2008年4月からは中1と高3の何れかで接種をし、18歳以下では全てで2回接種となったわけである。
乳児の帯状疱疹の多くは、妊娠中の水痘罹患による
第107回日本皮膚科学会総会から(平成20年4月19日)
小児の帯状疱疹の統計的な話題。15歳以下の帯状疱疹を年齢別にみると、1歳未満が33%、小学校入学前が56%、それ以上が11%であった。乳児期に発症する帯状疱疹は、母体が妊娠中に水痘に罹患した症例が63%、乳児期に水痘に罹患した症例が30%であった。乳児期に水痘に罹患すると、母体からの移行抗体の影響で抗体の上昇が悪いためか、小児期の帯状疱疹発症につながるrisk factorとなる。
乳児の帯状疱疹はちょくちょくあるわけではないが、既往歴や水痘ワクチン接種歴の把握はもちろんのこと、抗体価の変動もみていく必要がありそうだ。
糖尿病患者の足潰瘍のrisk factorのひとつに爪白癬がある
Mycology Initiative Forumから(平成20年3月22日)
主に白人男性の糖尿病患者を対象とした統計の解析。1285名の患者を平均3.38年、フォローアップし、そのうち216名に足潰瘍が生じた。足潰瘍のrisk factorは、糖尿病の罹病期間が長いこと、インスリン治療を受けていること、HbA1cが高いこと、間歇性跛行の既往、知覚障害の合併、足潰瘍ないし足切断の既往、足の変形、足の浮腫、視力障害、網膜症の既往、爪白癬であった。足白癬では潰瘍の有無に有意差はなかった。
趾間型足白癬に細菌感染をきたす症例がたまにあるので、足白癬の方が爪白癬より潰瘍のriskが高いと思っていた。糖尿病患者の爪白癬も積極的に治療をした方がよいということだろう。
エビデンスに基づいた診療ガイドラインとQuolity Indicator
Mycology Initiative Forumから(平成20年3月22日)
Evidence-based consensus guidelineを用いることにより、医師の診療内容、患者のアウトカム(生存率、罹患率、症状、身体機能障害、満足度、コスト)が改善することが多くの調査で示されるようになった。例えば米国の気管支喘息では、ガイドラインができた1995年以降では、それ以前に比べると、ICUに入院した人が41%減り、在室時間が50分減り
、医療費が39万ドル減った。しかしこれらの推奨されるべき医療が施される患者は全体の60〜95%と言われ、この格差(Evidence-Practice Gap)を少なくすることが課題となる。そのためには医療提供の構造、医療の経過と結果を測定する必要があり、これは医療の質を表すため、質指標(Quolity Indicator:QI)と呼ばれている。今後は皮膚科の診療にもこのQIを取り入れることになるだろう。
日本も医療の質の公開を強制するような流れになっていくのだろうか。疾患ごとのQIをみて、患者がクリニックを選ぶ時代もそう遠くはないかもしれない。患者にはわかりやすいだろうが、医者側にはまだ多くの反発がありそうだ。
ミベリ被殻血管腫をみたら、関節リウマチを考える
第10回関東皮膚脈管懇話会(平成20年3月16日)
RAに伴う皮膚症状の総論。結合織のnecrobiotic conditionによる病変(リウマチ結節、superficial ulcerative rheumatoid necrobiosisなど)、中小動脈の血管障害(リベドなど)、免疫複合体の関与する細小血管炎などに加え、爪の点状陥凹、縦線を伴う斑状のアクロチアノーゼ、ミベリの被殻血管腫も多く、特に凍瘡の既往のないミベリをみたらRAが疑わしいとのこと。
ミベリは普通は凍瘡を考えるが、RAとの関連については知らなかった。今度から気にしてみていこう。
皮膚生体計測工学の手法と注意点
日本臨床皮膚科医会東北支部総会(平成20年3月9日)
皮膚の機能検査としては、角質水分含有量と経表皮水分喪失量が有名だが、それぞれは恒温恒湿の部屋で行わないと意味がない。それ以外にも皮脂量を計測する機器や皮膚の弾力性を計測する機器(痒いと感じる閾値を調べることもできる)など、様々な機器が利用可能である。
話にはよく聞くが、実際の機器は目にしたことがなかった。東北大学皮膚科のHPに製品の多くが紹介されているので参考になる
estrogen dermatitisってホントにあるの?
第7回横浜みなと・東部皮膚科懇話会から(平成20年2月28日)
月経前に顔面に紅斑を生じる患者の報告。紅斑は約1週間続き、また3週後に再発するという経過を繰り返す。estrogen 0.1%の皮内テストで即時型の反応が陽性。文献では、月経前に小水疱、湿疹が増悪する5例の患者でestrogen皮内テストの遅延型反応が陽性、慢性蕁麻疹の患者2例で即時型反応が陽性で、そのうち5例ではtamoxifenによる抗estrogen療法が有効だったとの報告があるとのこと。
estrogenの皮内テストはやったことがないし、実際こういう症例がいても乳癌に対する抗癌剤は使う気にならない。反対に更年期障害の治療薬であるル・エストロジェルという製剤があるが、一度女性の外陰部の硬化性萎縮性苔癬に外用で使ってみたいと思っている。
みずむしの歴史を知る
第9回横浜デルマカンファレンスから(平成20年2月21日)
足白癬を俗称では「みずむし」というが、この歴史は、江戸時代頃から、水田で仕事をする時期になると足にぽつぽつと水疱ができて痒いと記載された資料から始まる。これを水に虫がいて、皮膚が侵されるのに似ているところから「みずむし」と呼ばれるようになった。ただし当時はまだ頻度としては少なく、増えてきたのは明治に入ってからで、これは軍隊が靴を導入したことと関連が深い。また、「みずむし」の原因が白癬菌であると判明したのは、1910年で、日本では、太田正雄先生が1918年に「みずむし」から白癬菌を分離培養することに成功したのが皮切り。なお、1914年に長井新蔵先生が、製糸工場の女性に「みずむし」が多発したことを報告した。これが職業性皮膚疾患の始まりと言われている。
たまにはこういう話もよい。教科書には書いていないことだが、疾患を理解するということからすれば、大事なことであると思った。
MCTDの熱発後に生じる紅斑は膠原線維アタック型の組織反応を呈する
第5回皮膚膠原病研究会から(平成20年2月16日)
MCTDの患者に生じる皮膚病変のまとめ。抗U1-RNP抗体単独高値の24症例の皮膚症状は、Raynaud症状が96%、手指の腫脹が71%、acrocyanosisが50%、網状皮斑が33%であった。また、熱発を契機に不定の紅斑(滲出性紅斑・虫刺様紅斑・蕁麻疹様紅斑)をきたす例が6例(25%)あり、組織は全てに共通で、真皮中層に急性線維素性炎症に見えるような、好中球・組織球の浸潤があり、膠原線維は好塩基性に変性している。これを膠原線維アタック型反応と名付け、MCTDに特異的な変化であると思われた。
確かにMCTDに特異的と思われる反応があると思っている。同様の反応はシェーグレン症候群でも見られるらしいが、今後は自己抗体との関連から、なぜそういった組織の変化が起きるかの検討が必要だろう。
間歇性跛行をきたす閉塞性動脈硬化症の一歩進んだ検査法
第6回日本フットケア学会から(平成20年2月10日)
閉塞性動脈硬化症(下肢動脈疾患:PAD)のFonteinU度、間歇性跛行の患者から、重症虚肢を早期に見いだすための検査法の話。ABPIを運動負荷をかける前後で測定し、ABPIが20%以上低下した場合、あるいは下肢の動脈圧が20mmHg以上低下した場合は、重症になる可能性が高い。運動負荷は、トレッドミルを12%の傾斜で、2.4km/h、5分間あるいは、つま先立ち運動(toe raises)50回がよい。運動負荷後は2分ごとにABPIを測定し、ABPIが運動負荷の前の値に回復するまでの時間を計測することも有意義である。
最近の苦い経験から、当院では下肢のPAD患者の早期発見を心がけている。さすがにトレッドミルはないので、toe raisesで検討してみよう。
verrucous skin lesions on the feet in diabetic neuropathy
第6回日本フットケア学会から(平成20年2月10日)
下肢末梢の温痛覚障害がある糖尿病の患者に生じる、荷重部位である趾腹部や踵部に生じる難治な乳頭腫状角化性結節をこう呼ぶ。しばしば角化とともに血腫を伴い、角層を取り除くとその下には潰瘍になっている。糖尿病の管理やインナーソールを用いても、各種外用治療に抵抗性で、角質削りを定期的に行うことが、やはり必要である。
同様の皮膚病変はハンセン病でも以前から問題になっているようだが、末梢の温痛覚障害があるとなぜ乳頭腫状になるかはわかっていないようだ。また、papillomatosus citis carcinoides Gottron、epithelioma cunicuratumとの異同についても検討の余地があるだろう。
ペントシジンと酸化ストレス
第6回神奈川MMC研究会から(平成20年2月7日)
ペントシジンはAGEs(advanced glycation end-products)の一種で、高血糖や酸化ストレス下において、糖から変化したカルボニル化合物と生体蛋白との非酵素学的反応によって生成される。つまり、生体蛋白質が糖化及び酸化されたことを反映するマーカーである。特に腎機能の低下に比例して産生が増加し、血中濃度が上昇するため、慢性糸球体腎炎や腎硬化症等の診断に有用である。また、RAや重症アトピー性皮膚炎でもペントシジン高値の報告がある。皮膚・硬膜などの組織中のペントシジンは年齢とともに蓄積することが確認されていて、老化との関連が示唆される。また、皮膚のペントシジンが増加すると、動脈硬化のマーカーである脈波伝播速度(PWV)が上昇する。
ペントシジンが酸化ストレス、老化のマーカーとは知らなかった。120点の保険適応があり、糖尿病性腎症を除く腎機能低下が疑われた場合に、3ヶ月に1回算定できるとのこと。PADはもちろんのこと、他の皮膚病にも使えそうだ。
母乳にアレルゲンが出るピークは?
アトピー性皮膚炎治療研究会第13回シンポジウムから(平成20年2月2日)
乳児期のアトピー性皮膚炎の話。妊娠後期から授乳期にかけての母親に対する食物アレルゲン除去は、乳児期のアトピー性皮膚炎の発生率を低下させるが、幼児期以降の発生率には影響がなかったとのこと。母親が卵を食べたあとに、母乳中に出てくるovoalbuminは、摂取後3〜6時間で認められ、4時間後がピークとのことであった。なお、アレルゲンとは無関係に、アトピー性皮膚炎の母親から出る母乳中のTGF-β値は正常より少なく、乳酸菌(lactobacillus)を投与するとこれが上昇し、乳児のアトピー性皮膚炎の発生率を低下させると言われている。
乳酸菌であれば、妊娠後期でもOKか。母乳中にアレルゲンが出ることはわかっていたが、ピークが4時間後というのは知らなかった。まだ、卵を食べたことがないような4ヶ月以下の乳児で、卵白・卵黄のプリックテストが陽性になる例があるが、これも母乳経路の感作だろうと考えている。
lipogranulomaの原因
第29回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成19年12月6日)
下腿の皮下硬結の総論。lipogranulomaの原因として、考えられる疾患は、1)Weber-Christian症候群:組織に好中球が出る。2)Rothman-Makai症候群:原因不明で、いくつかの結節が集まって局面をなす。3)sclerosing lipogranuloma:炎症の結果で生じた硬化。4)lipogranuloma due to oil injection 5)addiponecrosis:lipaseが逸脱するような急性膵炎による、lipolysis。6)post-steroid panniculitis 7)cold panniculitis 8)外傷性 である
上記のいくつかは自らの最近の診療では鑑別診断から消えていた。静脈性の循環障害に伴う高齢者のlipogranulomaが近頃は多い気がする。大根足に生じやすいと教わったがそうでなくても起こっているようだ。
接触アレルゲンとしてのダニの話
アトピー性皮膚炎治療研究会第13回シンポジウムから(平成20年2月2日)
血清IgEが極めて高いアトピー性皮膚炎では、家屋中のダニの関与がある。屋内に生息するダニは、新しい家を建てると、まず最初にケナガコナダニが増え、数年でヒョウヒダニに入れかわり、この傾向が以後長く続く。屋内のダニが増える状況は、1) 気温が20℃前後、2) 湿度50%以上、3) 人が住んでいること、4)空気がよどんでいること、5) 産卵できる繊維の隙間があること、があげられる。屋内のダニ相はMBA法(Methyleneblue agar法)で分析が可能で、専門の業者もある。なお、ケナガコナダニの分泌物として検出されるα-acaridialは強力な強力なprimary sensitizerであり、パッチテスト陽性部が数ヶ月後も痒疹として残るとのことであった。
なかなか、ダニ相の検出まで試みようとは考えなかったが、治療上あるいは予防上、大事なポイントなのかもしれない。とにかく、カーペットなどを強力な掃除機できれいにすることは、やって損はないだろう。
アトピー性皮膚炎は入浴のしすぎが原因か
アトピー性皮膚炎治療研究会第13回シンポジウムから(平成20年2月2日)
チベットで、中学校1年生の皮膚科健診を行い、日本人と比較した。西宮では4.26%あるアトピー性皮膚炎の有病率は、チベットでは0%でであり、角質水分量が気候の特性のためか有意に低下しているにもかかわらず、経費水分蒸散量は日本人よりも低かった。ドライスキンがあるにもかかわらず、バリアー機能が保たれていることがわかった。入浴の回数を調査したところ、日本人の平均は週7.7回、石鹸を使う頻度も週7.3回であったが、チベットでは月に2.2回、石鹸を使用するのも月2.1回と極端に少なかった。アトピー性皮膚炎がチベットにない理由は、このことに加え、大気汚染がなく、ばい煙がないこと、ダニが少ないこと、伝統的な食事が関与しているかもしれない。
洗いすぎがアトピー性皮膚炎の悪化因子であることは、時々経験する。今後、チベットが発展していく中で、アトピー性皮膚炎を発症する子供が何年後に出てくるか、興味のあるところである。
プロトピック軟膏で治すと再発までの期間がステロイドより長い
第44回日本小児アレルギー学会から(平成19年12月8日)
小児用プロトピック軟膏とロコイド軟膏を、2歳から15歳までの、小児アトピー性皮膚炎の顔面の病変に使用し、寛解状態がどれくらい維持できるかを比較検討した。治療は治癒状態まで、それぞれを1日2回外用し、その後1週間は1日1回を継続し、中止。その後の再燃(治癒状態から、皮膚の症状が治療前の30%にまで悪化)までの期間を調査した。結果はロコイド軟膏では.2日めから再燃する症例があったのに対し、プロトピックでは26日目の再燃例が最初で、それぞれ7週間目の再燃率を見ると、ロコイドでは47.6%であったのに対し、プロトピックではわずかに8.8%であった。プロトピック軟膏で治療した方が、ステロイドで治療するよりも寛解を維持できる期間が長いことがわかった。
悪化までの期間を、治療をがまんしてもらって調査するという、ご家族の協力を得るのに大変な労力を使われただろうと敬服した。臨床に役立つ、貴重なデータである。プロトピックをたまに塗れば、寛解を維持できるという使い方もこれでうなずける。
尋常性狼瘡の組織像
第33回横々会から(平成20年1月31日)
尋常性狼瘡の組織は、真皮主体の類上皮性肉芽腫で、肉芽腫の境界は明瞭だが、不規則であり、周辺に向かって増殖する傾向がある。表皮の変化を伴うことがサルコイドーシスとの違いである。肉芽腫内の壊死は軽く、乾酪壊死が見られることは多くない(乾酪壊死はそもそもリンパ節の病変が典型である)。また類上皮細胞は核がはっきりしない、eosinにぼーっと染まるなど、元気がなく、この点もサルコイドーシスと違う。また肉芽腫内の壊死が激しかったらLMDFを考えないといけない。
なるほど、元気がない、はその通りだと思う。結核菌との死闘を物語っているのであろう。乾酪壊死についても、もともとリンパ節の話というのは知らなかった。
帯状疱疹から水痘への感染は冬に多い
神奈川県皮膚科医会編集委員会講演から(平成20年1月24日)
帯状疱疹に関連した論文の紹介である。非汎発性の通常の帯状疱疹患者から感染した乳幼児水痘の解析した。7例が秋冬に、1例が夏に発症した。感染経路から、従来は起こらないとされている接触感染や、帯状疱疹皮疹部あるいは帯状疱疹患者上気道からの水痘・帯状疱疹ウイルスの飛沫感染もあると考えられた。秋冬に感染が多かったのは、部屋を閉めきるためと推定された。
帯状疱疹の上気道からウイルスDNAが検出されるとの報告もあるらしい。日頃は覆っておけば大丈夫と話しているが、VZV抗体を持たない乳幼児への感染には注意が必要そうである。少なくとも痂皮になるまでは別室で寝るようになど、指導するようにしよう。
らい反応とは
第817回東京地方会から(平成20年1月19日)
ハンセン病の経過中に、らい反応と呼ばれる急性の炎症反応が起こる場合がある。1)1型らい反応(境界反応):B群の病像の経過中に急に紅斑が増強し、神経症状の増悪がある。Th1型の免疫応答の増強の結果と考えられている。2)2型らい反応(らい性結節性紅斑):LL型およびBL型に見られる反応で、病変部や正常に見える皮膚に、発赤と疼痛を伴う浸潤性紅斑が出現する。らい菌の菌体成分と、これに対する抗体との免疫複合体が血管壁に沈着して起こる症候群と考えられてる。
ハンセン病の分類、経過、合併症はもともとなかなか頭に入ってこないが、らい反応については知らなかった。
潰瘍性大腸炎とlinear IgA bullous dermatosis(LABD)の関係
第817回東京地方会から(平成20年1月19日)
潰瘍性大腸炎の経過中に、消化器症状の増悪に伴って、臀部に緊満性水疱が出現。病理組織と蛍光抗体直接法から、LABDと診断した。潰瘍性大腸炎の7%に合併し、血便・排便回数・血沈・Hb・Albを指標とした臨床的な活動性が高くなったときに出やすいと言われている。
なぜIgAが沈着するのかがわからないが、原疾患と明らかに関連している。腸管免疫と分泌型IgAか。
漢方薬は「証」が合うと赤ちゃんでも喜んで飲む
横浜領域別漢方医学講座から(平成20年1月16日)
皮膚疾患に使用する漢方の重要処方解説。赤ちゃんの湿疹は、胃腸障害による「気・血・水」のうちの気の異常で水がめぐらず発症する場合が多く、脾虚に対する小建中湯(99)が第一選択となる。なお余談であったが、漢方薬は証があっていると、赤ちゃんでも喜んで飲む、とのこと。
え、本当という感じだった。苦い粉というイメージがあり、赤ちゃんに飲ませるということすら頭になかった。漢方に関しては個人的には当たるも八卦処方で、重要処方といわれるものも聞いてもすぐ忘れる。
乾癬と心血管イベント
第26回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成20年1月12日)
イギリスで行われた乾癬患者を対象とした前向き研究によると、重症乾癬患者(メトトレキサートなどの投薬を要した患者)の心筋梗塞発症率は2.9%であり、軽症乾癬患者(2%)や対照群の発症率(1.8%)よりも高率であった。なお、年齢により心筋梗塞リスクは異なり、30才の若年乾癬患者においては、重症乾癬の場合心筋梗塞発症リスクは3.1倍、一方、60才の高齢乾癬患者においては、重症乾癬患者で1.36倍であった。乾癬は心筋梗塞の独立したリスクファクターであり、特に重症乾癬を有するの若年患者においてリスクが高い。乾癬の悪化によるTNFα上昇がインスリン抵抗性を亢進させることがその理由かもしれない。特にBMIが30を超える患者では注意が必要。
RAではTNF阻害剤の無効例は有効例に比べて心筋梗塞の発生率が2倍以上増加していたという報告もある。重症乾癬の治療には心血管イベントの観点からもTNF阻害剤を用いる必要がありそうだ。
樋口の点状紅斑はネッタイイエカの虫刺症である
第37回皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成19年12月16日)
2例の症例報告。47歳と77歳の女性患者で初診は夏。実験的にネッタイイエカを刺咬させたところ、白暈をともなう点状の紅斑が再現された。樋口の点状紅斑は蚊の刺咬に対して無反応になった患者が多数の蚊に刺されたときに出現する症状と考えられた。
47歳の症例ではヒトスジシマカの実験的刺咬では白暈が出なかった。ネッタイイエカというところがミソか。沖縄・奄美に生息すると書いてあるが、最近では本州にも定着しているらしい。刺されてもヒトスジシマカほど痒くならないという記載があるので、たぶん毒の成分が違うのだろう。ところで蚊の毒は酵素?という話だが何だったか、詳しくは知らない。
接触皮膚炎をおこす、影のアレルゲンの存在
第37回皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成19年12月16日)
これも自分の発表で恐縮だが、一般用医薬品には以前から指摘されているように、主成分以外にも様々な副成分が含まれていて、これらがかえって接触皮膚炎の原因になっている場合がある。水虫薬に含まれているクリオタミトンおよびジフェンヒドラミンの止痒剤による接触皮膚炎、湿布に含まれていたクロタミトンによる接触皮膚炎を経験した。成分のパッチテストが重要であることを再認識した。
OTC医薬品業界に、学会として色々な配合をしないように求める必要があるのではという意見もあがった。実は、OTC医薬品だけでなく、処方箋医薬品にもクロタミトンは副成分として使用されいる。ステロイド外用剤のマイザークリーム、湿布のセルタッチなど。セルタッチのかぶれにはマイザークリームを使わないように。
一般用医薬品はOTCでなくGTR(Go To the Register)になっている
第37回皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成19年12月16日)
自分の発表である。一般用医薬品はOTC(Over The Counter)医薬品と呼ばれ、医療費の削減にためにも促進が図られているが、皮膚障害を起こすことがまれではない。集計によると、夏期によく経験するOTC水虫薬による接触皮膚炎や、湿疹用薬・ニキビ用薬に含まれるNSAIDによる接触皮膚炎、外傷やおしゃれ(ピアスやタットゥー)に使用された抗生剤・消毒薬などが多かった。問題点として、最近では健康・衛生に関する商品を置く量販店、いわゆるドラッグストアが増え、一般用医薬品が薬剤師と対面することなく、商品を陳列棚から買い物かごに入れ、レジで会計をすますだけで購入されていることが多く、接触皮膚炎を生じた115症例のうち、GTRで購入されたものが73例(63%)に及ぶという結果だった。
一般用医薬品の購入に際しては、薬剤師の簡単な説明があった方がいいだろう。この問題については厚労省も懸念していて、現在、薬剤師が説明しないと購入できないもの、コンビニに置いたり、通販で購入してよいもの、その中間?の3種類に分類し、2009年4月から施行するための改正薬事法の省令を整備中とのことである。
Chinese Restaurant Syndromeとは
第37回皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成19年12月15日)
中華料理を食べた後に蕁麻疹、腹痛、悪心、眩暈、頻脈、手足のしびれなどの神経症状が出現することがあり、中華料理でよく用いられるグルタミン酸ナトリウムの大量摂取が原因で、不耐症と同様の非アレルギー機序、主として肥満細胞からの脱顆粒の閾値を下げるために生じると考えられる。
非アレルギー性の食物による蕁麻疹は診断が難しい。グルタミン酸ナトリウム以外にも防腐剤(安息香酸ナトリウム)や着色料(タートラジン、ニューコクシン)によるものがあるとのこと。
職業性皮膚疾患のエビデンスは経済的なアウトカムの検証が必要
第37回皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会から(平成19年12月15日)
職業性皮膚疾患の疾病管理・予防は患者に対する対応だけでなく、まだ発症していない他の従業員への対応、企業や行政への対応が必要となり、そのために得なければならないエビデンスは、1) 有病率・発生率などの疫学データ、2) 疾患の検査・加療に要する医療費、3) 疾病そのものによる、あるいは受診機会(割かなければならない時間)による労働生産性の低下・損失などの経済的なアウトカムである。
指摘の通りで、臨床医が取り組むのは簡単ではない。ただし、行政・企業向けのデータは是非必要で、開業医も協力しなければならない。皮膚疾患による労働生産性の低下についてはWPAI-AS(work productivity and activity impairment questionnaire: allergy specific)の検証がアトピー性皮膚炎では始まっていると聞いている。職業性接触皮膚炎でも集めていく必要があるだろう。なおWPAI-ASはMargaret Reilly氏のHPにある。
多汗症の治療の実際
第125回神奈川県皮膚科医会から(平成19年12月2日)
多汗症の治療では、段階的に、1)塩化アルミニウム水溶液、2)水道水のイオントフォレーシス、3)ボツリヌス毒の局注、4)交感神経節切除で対応する。塩化アルミニウム液は20から50%を用い、まず布の手袋に溶液を浸して、その上からゴム手袋をして就寝するという夜間密閉療法が単純塗布よりも有効で重症例にも使用できる。水道水のイオントフォレーシスは、10mAのやや強い電流が流せる機器が必要で、vectronics IP-30などがおすすめである。通常施術は10分から20分で、週1〜2回、8回ぐらいから効果がみられてくるとのこと。うすくワセリンを塗るとよい。ペースメーカー装着者や妊婦では行えない。自分で購入できるドライオニックも悪くはない。ボツリヌス毒は2単位/0.1mlを片手で20カ所ぐらいに皮内注射する。さらに、電位依存Naチャンネルをブロックする抗てんかん剤、topiramate(トピナ)も、発汗と関連するアクアポリン5を減少させる薬理作用があるため、乏汗症の副作用が知られており、多汗症に有効かもしれない。
具体的な内容でたいへんためになった。塩化アルミのODTはすぐにでもできそうである。イオントフォレーシスの機器も問い合わせをしてみよう。
Steal症候群の重症度分類
第184回大阪皮膚科症例検討会から(平成19年11月22日)
Steal症候群は、内シャントを施された血液透析患者の5%に見られる合併症で、動脈血が内シャントを通じて多量に静脈に流入するため、シャントより末梢の血流が減少し、虚血症状を呈する疾患である。PDAのFontaine分類と同様、T:アクロチアノーゼ、冷感、U:透析中の除水により出現する疼痛、V:安静時疼痛、W:潰瘍・壊疽、以上のように重症度分類されている。
動脈硬化、糖尿病、異所性カルシウム沈着がさらにシャントより末梢の動脈閉塞の誘因になり、前腕切断にいたる例もあるので注意が必要である。
SAAによって誘導された血栓症
第184回大阪皮膚科症例検討会から(平成19年11月22日
高齢女性で心房細動がある。手指の急速に進行する壊疽、足背のリベド、下腿の紫斑と潰瘍を伴う。抗MMP-3抗体がやや高く、CRPとSAAは著明に上昇。IL-6も高値。RA?に伴う慢性炎症が原因で生じた血栓症と診断した。SAAはmonocyte tissue factor(MTF)のrapid inducerであり、MTFはfactor 8と結合するため、血栓を生じることになる。
これは重要な病態であると思った。それはそれとして、RAの抗体検査もずいぶんと変貌し、抗CCP抗体、抗MMP-3抗体、抗ガラクトース欠損IgG抗体など、早期のRAの診断、関節破壊の程度などを評価できるようになってきた。
乳房に生じた乳房外Paget病
第815回日本皮膚科学会東京地方会から(平成19年11月17日)
胸部に生じたPaget病の症例。報告は男性で、乳癌はなく、副乳もない。乳頭以外の胸部に生じたPaget病は、本邦では女性例も含め4例の報告があるとのこと。いわゆるmilk lineに沿う、乳腺由来と考えられるPaget病の他、アポクリン腺由来と考えられる乳房外Paget病の症例もあるらしい。
乳房に生じても、腫瘍が乳腺由来ではなく汗腺由来であるなら、やはり乳房外Paget病と呼ぶべきか。ちょっと不思議な感じではある。
蒙古斑がない幼児に紫斑があったら、Hermansky-Pudlak症候群(HPS)1型を疑う
第118回横浜市皮膚科医会例会から(平成19年11月10日)
HPS1型は、白皮症、出血傾向、全身へのセロイド・リポフスチンの沈着を伴う、常染色体劣性遺伝性の症候性白皮症である。小胞体、ゴルジ体からリソソームやメラノソームへと続く分泌系のオルガネラ間の蛋白質輸送は、脂質2重膜からなる輸送小胞によって制御されており、メンブレントラフィックと呼ばれるが、HPSはこのメンブレントラフィックに破綻をきたす遺伝子変異によって、メラノソームやリソソームなどの各オルガネラの生合成障害や機能障害起こり、発症する。中年以降に高率に間質性肺炎を合併し、肉芽腫性大腸炎を伴う例もある。日本人の眼皮膚白皮症の10%を占め、まれではあるが覚えておく必要がある。
幼児期の紫斑は虐待と間違われることもあるという。蒙古斑のない乳児には注意をはらう必要があると思った。
プロトピック軟膏の顔面一八ぬり
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成19年11月1日)
アトピー性皮膚炎の顔面病変の管理、眼合併症の減少にプロトピック軟膏の果たした役割は大きい。プロトピック軟膏は治験時の顔面に対するhalf side testで、左右差が出ず、どちらにも有効だった。プロトピック軟膏外用当初に問題となる灼熱感は、外用する場所を狭めて、額と頬の一八塗りで充分かもしれない。
確かに遠隔効果は経験することがある。一八ちょんちょん。眼瞼炎などの患者に今度やってみよう。
慢性で広範囲の皮膚病変があれば、ADでなくても血清中IgEが上昇する
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成19年11月1日)
アトピー性皮膚炎以外にも、慢性の経過で広範囲におよぶ痒疹、貨幣状湿疹などでも血中IgEが上昇することがある。そこで、尋常性乾癬の重症度ごとに、IgE-RISTと抗原特異的IgEを計測した。血清総IgE値は、軽症の8例では平均95、中等症の5例では1425、重症の4例では7667で、重症度に平行して増加することがわかった。また総IgE値上昇例での抗原特異的IgEは、ダニ、HD1で平均スコアが3、スギ花粉で2で、アトピー性皮膚炎で陽性になる抗原と同様の傾向であった。
抗原特異的IgEが重症の乾癬でも高くなると言うことは、どのような意味があるのだろう。逆に言えば抗原特異的IgEの意味はどういうときにあるのだろう。
慢性蕁麻疹では凝固機能の亢進状態にある症例がある
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成19年11月1日)
慢性蕁麻疹患者の20%で、D-dimerの上昇があり、多くはFDP、CRPも同様に高値でそれぞれ症状の改善・増悪と平行して増減する傾向が認められた。血漿の凝固線溶マーカーが蕁麻疹の病勢の指標になる可能性がある。また凝固波形は深く急峻で、トロンビン生成試験ではtime to Peakが短縮し、Peak heightとEndogenous thrombin potentialが増加し凝固準備能亢進状態であることがわかった。ただし、蕁麻疹の病型とはいずれも関連はなかった。
これらの因子が血管内皮細胞の透過性亢進と肥満細胞のヒスタミン遊離促進に働くらしい。病勢を示すと言うことであれば、D-dimerは測ってみよう。抗ヒ剤の内服を中止してもいいかどうかの指標に使えるかもしれない。
自然型アトピーとIL-18
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成19年11月1日)
IL-18はマクロファージから前駆体として産生され、LPSで活性化したcaspase-1によって切断され、活性型となり分泌される。IL-18は抗原刺激がなくてもIL-12の存在下では、Th1サイトカインであるIFN-γを誘導するが、IL-12がないと、IL-2の存在下で、IL-4、IL-9、IL-13などのTh2サイトカインを誘導する。表皮細胞にcaspase-1を導入し、結果的にIL-18を過剰発現させたマウスは、抗原刺激がなくても高IgE血症をともなうアトピー性皮膚炎類似の皮膚病変を呈するが、stat6欠損マウスでもIgEの上昇なしに同様の皮膚炎が発症する。したがって、IgE非依存的、つまりアレルゲンが関与しないアトピー性皮膚炎があり、IL-18は自然型アトピーの誘導因子であると考えられる。
ちょっと難しいが、アトピー性皮膚炎でIgEが高くなく、アレルゲン特異的IgEも証明できない症例が確かにある。いずれは血中IL-18を調べるようになるのだろうか。
原発性抗リン脂質抗体症候群と補体の活性化
第57回日本アレルギー学会秋季学術大会から(平成19年11月1日)
SLEなどの合併のない原発性のAPSでも低補体血症がある。2回以上流産・死産を繰り返したAPSの症例は、C3の低下は60%、C4の低下は50%、CH50の低下は40%で認められた。補体低下群ではlupus anticoagulantの出現とも相関があり、また血中TNFαが高かった。しかし、C3a、C4a、C5aは逆に高値で、補体低下は補体の産生低下ではなく、活性化によることがわかった。
APSにみられる流産などの妊娠合併症は、胎盤の血栓が原因かと思っていたので意外だった。大事な報告だった。
認知症患者の感染症は非定型的である
第8回横浜デルマカンファレンスから(平成19年10月25日)
療養型病床の認知症患者に生じる感染症の話。1) 疥癬/異形のものが多い、手や頚部にないこともある、掻破痕もはっきりしない、感染ルートがわからない(血圧計のマンシェッット?)、神経系薬剤の内服をしているとイベルメクチンが効きにくい。2) 丹毒/発熱がないこともある、非定型的な紅斑、CRPやWBCの上昇がないこともある、胃瘻や気切のまわりに生じることがある。3) 膿痂疹/黄ブ菌性より溶連菌性が多い、丹毒の治ったあとに生じることがある。
確かにこれが丹毒かという症例は時々経験する。胃瘻や気切のまわりに起こるというのは気づかなかった。注意してみていこう。
サーカディアンリズム障害とアトピー性皮膚炎
第58回日本皮膚科学会中部支部学術大会から(平成19年10月21日)
アトピー性皮膚炎患者で考慮すべき心身状態のひとつに、概日リズム(サーカディアンリズム)睡眠障害がある。特に夜間の痒みがあって入眠時間が遅くなり、翌朝の社会的要請に対応できないという、睡眠相後退症候群(Delayed sleep-phase syndrome: DSPS)ととらえられる症例がある。ヒトにとっての概日リズムは、光同期性クロックと食餌同期性クロックがあり、早寝・早起き・朝ご飯を勧めることで、皮膚症状の改善がもたらされる可能性がある。
確かに、睡眠不足のアトピー性皮膚炎患者は多いように思う。いつも遅寝の私が言うのも説得力がないが、早寝・早起き・朝ご飯を勧めてみよう。なお、欧米ではDSPSの治療として、概日リズム障害の代表である時差ボケに有効と言われているメラトニンが用いられることもあるようだ。ただしこれはFDAが認めた医薬品ではなく、健康食品として売られている。日本でも通販で売られているが、意識障害を伴う中毒の症例もあるらしいので勧めるのはやめておこう。
KOHに自信がなかったら、陰性にしておく
第58回日本皮膚科学会中部支部学術大会から(平成19年10月20日)
真菌症を疑って、鏡検で菌要素が陰性の場合はもちろん、陽性であると結論する自信がなかったら陰性と判定しておくべきである。糸くずなどを見誤って陽性とした場合には、それが確定診断になってしまうことと、皮膚炎に抗真菌剤を外用すると自家感作性皮膚炎に発展してしまうなどのトラブルが多く、逆に白癬にステロイド軟膏を短期間外用してもさほど大きな悪化にはつながらないこと、抗真菌剤の外用で次回の適切な診療機会に検査上悪影響を及ぼす可能性があることがその理由である。
わかってはいることだが、はっきり言ってくれるとすっきりする。研修医の頃は、KOH(±)などと書いていた記憶があって、恥ずかしい限りだ。なお、カンジダの鏡検は検体のへりを見るとわかりやすいなど、ためになった。ちなみに当院では、忙しい時の見落としが心配なので、KOHの検体は翌日まで残しておくようにしている。
光トポグラフィーを用いた認知機能検査で、抗ヒ剤の副作用を評価する
某抗アレルギー剤発売記念講演会から(平成19年9月15日)
抗NIRS(近赤外線分光法)という装置で、working memoryを評価することにより、抗ヒ剤の副作用を測るという試み。working memoryとは、一般的に保持・操作して、答えを導く認知機能と定義される。頭にこの装置を当てて、光のはね返りを測定するのだが、強く活動している部分はヘモグロビンが多く集まるため、はね返り方が変化する。活動しながらの観察ができ、リアルタイムで測定でき、安全性が高いことが特徴。これを用いて、抗ヒ剤の内服をさせ、課題遂行時の前頭前野の皮質活動をみると、working memoryに支障をきたしたかどうかが評価できる。
この装置は血行障害の評価や血管拡張剤の効果判定にも使えそうだ。
プレイオトロピック作用って知ってますか
某抗アレルギー剤発売記念講演会から(平成19年9月20日)
抗ヒスタミン剤のベシル酸ベポタスチンは、ヒスタミンH1受容体拮抗剤としての薬理作用の他、1) 血管内皮のICAM-1発現を抑制する。2) ダニ抗原添加時にリンパ球からのIL-5産生を抑制する。といった働きがある。こういった、ヒスタミンに対する主な作用の他にその薬剤が持つ薬理作用をプレイオトロピック作用(多面的作用)と呼ぶ。
そもそもはスタチンの血管壁に対する作用などが、このキーワードの始まりのようだ。太藤病のインドメサシンや色素性痒疹のジアフェニルスルホンによる治療も、きっとプレイオトロピックだろう。言葉だけは覚えておこう。
OHIOチェンバーで抗ア剤の効果を評価する
某抗アレルギー剤発売記念講演会から(平成19年9月15日)
花粉抗原暴露室の話。湿度45%、気温22℃に保たれた、5m四方のガラスで密閉された部屋で中央に煙突があり、そこから8000個/m3のスギ花粉が出て、四隅の空調機で室内をグルグル回っている。12人までの被検者がほっかむりをして入室し、抗ヒ剤の内服前後のくしゃみの回数、かんだ鼻水を含んだティッシュペーパーの重量などを比較するという臨床試験を行うことが可能。
花粉は市販の袋詰めのものを買ってくるとのこと。売っているとは知らなかった。ほっかむりをしなければ、まぶたに皮膚炎が生じる人もいるのではないだろうか。
創底の細菌感染とNERDS&STONES
神奈川県皮膚科医会在宅医療勉強会から(平成19年9月13日)
褥瘡・下腿潰瘍などの慢性皮膚潰瘍の創底管理で問題になる細菌感染症の臨床的なアセスメント法。創底の細菌負荷を、以下の4つのステージに分類する。1)contamination:創底に細菌がのっかっている状態、2)colonization:組織障害や治癒の遷延には至らない安定した状態、3)critical colonization:治癒がストップし、生体の免疫反応としての炎症の初期の状態、4)deep infection:細菌がより深部に、または周囲に向かって増殖し、強い炎症反応とともに組織障害が進行する状態。3)のcritical colonizationでは以下のサインに注目し(NERDS)、局所的な抗菌剤を使用する。
Nonhealing wound:傷がよくならない(4週で20%〜40%の縮小がない)
Exudative wound:滲出が多く、創周囲が白く浸軟する
Red and bleeding wound:肉芽が盛り上がりすぎて、易出血性
Debris in the wound:黄色ないし黒色の壊死組織
Smell from the wound:緑膿菌ないし嫌気性菌の腐敗臭
4)のdeep infectionでは以下のサインに注目し(STONES)、全身的な抗菌剤を使用する。
Size is bigger:細菌感染による深達性ないし表在性の潰瘍拡大
Temperature increased:細菌感染による周囲の発熱
Os(probe to or exposed bone):骨髄炎の危険がある骨の露出
New areas of breakdown:主病変の周囲の潰瘍新生
Exudate, erythema, edema:炎症に伴う滲出、紅斑、浮腫
Smell:緑膿菌ないし嫌気性菌の腐敗臭
critical contaminationではAg含有の被覆材、外用剤が推奨されている。横文字の略語はともかく、今までの臨床的な経験から、だいたい見当がつく。
車いす用の褥瘡予防クッション
神奈川県皮膚科医会在宅医療勉強会から(平成19年9月13日)
寝たきりの褥瘡予防は体圧分散エアマットで飛躍的に進歩した。しかし、車いすに長い時間座りっきりが原因で生じる座位褥瘡は対応が遅れていた。特に施設入所の高齢者で、尾骨部周囲、臀列部上方の左右の褥瘡をよく経験する。そこで可視化車いす(ガラス張りで下からカメラを撮ることができる)を作成し、体圧分散と姿勢保持の両方を兼ね備えた車いす用エアーセルクッションが開発された。エア調整を自動化し、底付きを感知するセンサーを置き、体圧分散を行うとともに、両サイドに大きくやや硬いセルを配置し、座位の姿勢が不安定になるのを解消している。Medi-Airという商品名で近々商品化されるとのこと。
さっそく介護保険の適応になればと思う。なかなかうまい治療法がない、臀部角化性苔癬化皮膚にも有効か。
乾癬のcoral reefは外用していない証拠である
乾癬治療フォーラムから(平成19年9月4日)
coral reef psoriasisとは、厚くて岩のような鱗屑がガチッと付いている乾癬のplaqueをさす。一般的に外用に抵抗性といわれているが、鱗屑を剥がすような薬剤を使用しなくても、ステロイド軟膏の外用だけで改善することがわかった。つまり、coral reef plaqueをみたら、それはadherenceがpoorな証拠、つまり外用をしていないということを意味する。皮膚科医自身は外用の指導が不十分であったことを認識しなければならない。
われわれが反省しなければならないというのは、たしかにその通りかもしれない。頭の厚い鱗屑は、某先生に教えてもらった親水軟膏パックを入浴1時間前にやってもらうことが多いが、他の先生方はいかがであろうか。
NBI内視鏡で毛細血管をみる
第14回 Alliance Hodogayaから(平成19年9月1日)
消化器内視鏡の話。2006年6月から販売されている内視鏡では、狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)ができるようになった。血液中のヘモグロビンに吸収されやすい狭帯域化された2つの波長(390〜445nm/530〜550nm)の光を照射することにより、粘膜表層の微細構造や毛細血管を観察でき、拡大内視鏡とともに使うと、赤血球が動く様子さえみえる。これによって、上部消化管では咽頭癌、喉頭癌早期食道癌、バレット食道癌、大腸では平坦型病変などの前癌病変の発見が飛躍的に進歩した。
他科領域だが、先進的でおもしろかった。ダーモスコピーの先から出る光の波長を変えるなど、皮膚病変にも応用できるのではないかと思った。
在宅での褥瘡ケアの問題点とその対策
横浜市立市民病院研修会から(平成19年8月30日)
日本在宅褥瘡創傷ケア推進協会が設立された。多職種の在宅医療従事者同士が互いに情報交換することにより、在宅褥瘡の現状を把握し、問題点を抽出して、対策を立てることを目標としている。重要な項目としては@利用者、家族の意向の尊重、A在宅と施設間の適切な連携、B在宅における褥瘡治療法、C在宅栄養療法、D有効な体圧分散法、E寝たきりにさせない予防的運動療法、F壊死組織除去や難治化した創に対する有効な局所療法、を挙げている。
講師として参加したが、この協会の存在は知らなかった。活動を期待したいところだ。褥瘡学会からも在宅のマニュアルがでるらしい。
ストレスの定量とストレス感受性
第25回日本美容皮膚科学会から(平成19年8月18日
ストレスの定量は、従来は血中あるいは尿中コルチゾールを指標としていたが、日内変動が大きく評価が難しい。最近では、ストレスに際してのステロイド合成に重要といわれている末梢型ベンゾジアゼピン受容体(PBR)の計測が可能となり、有用である。ヒトの場合には血小板が測定に用いられる。血小板PBRの値は個人によって大きく異なり、最大20倍の開きがあるが、不安の心理テスト(STAI)を用いて検証すると、PBR値が高い人は不安になりやすく、PBR値が低い人は不安になりにくいことがわかった。血小板の寿命は8日から10日なので、測定されたPBR値は過去1週間にわたり血小板に写し撮られたストレス履歴と言える。また、日本人のPBR遺伝子485における遺伝子多型をみると、G/A置換のないGGの人が60%、GA置換をもつ人が33%、AA置換をもつ人が6%であったが、GAないしAAの人の血小板PBR値は置換のないGGの人の半分ほどで、ストレスに強いことを示唆している。
アトピー性皮膚炎や蕁麻疹ではどうなのか。臨床に使えそうだが、どこで測ってくれるのだろう。当院でもcocoro meterで唾液中アミラーゼの計測を行っていたが、あまり症状と相関せず、また、日内変動を考慮するといつ測ればいいのかがわからず、データを出すまでには至らなかった。
ダーモスコピーでプクプクをみたら、皮膚ウジ症と診断できる
第813回東京地方会から(平成19年7月21日)
コスタリカへ旅行、帰国後に側腹部の結節に気づく。粉瘤の疑いで切開すると、中からヒトヒフバエのウジが出てきた。ウジは、皮膚に穴を開けて尾端の気門を外に出して呼吸しているので、ダーモスコピーでみると、プクプクと泡が出てくるので、これだけで確定診断可能とのこと。
術前検査による術前診断も大切だが、ゆっくりみていないで、早く取ってあげた方が、、と思った。
経過の長い重症の乾癬に下痢と腎不全、何を考えるか?
第25回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成19年7月19日)
数10年来の重症な関節症性乾癬の患者。下痢に加えて血清中クレアチニンの上昇をきたした。腎障害は進行し血液透析に至る。診断は、慢性の皮膚の炎症によって、血清中amyloid A蛋白が持続的に高値であったことが原因のsecondary systemic amyloidosisだった。皮膚にはアミロイドの沈着はないが、十二指腸と腎に沈着があった。ただし、全例そうなるわけではなく、アミロイドの沈着を処理できない遺伝的背景が発症に関与しているらしい。先天性表皮水疱症でも同様の合併症があるので、注意が必要。
SAAは皮膚疾患においても、やはり大事な炎症マーカーだと思う。皮膚疾患でルーチンに測るようにして3年ほどたつが、そろそろまとめる必要があるかもしれない。
HAIR-AN症候群・SAPHO症候群
第25回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成19年7月19日)
HAIR-AN症候群:女性に生じる。hyperandrogenism(HA)、insulin resistance(IR)、acanthosis nigricans(AN)の頭文字。黒色表皮腫が診断の契機になり、U型糖尿病の診断に至ることがある。
SAPHO症候群:Synovitis、Acne、Pustulosis、Hyperostosis、Osteitisの頭文字。骨関節病変を伴う好中球の関与する疾患は、日本では膿疱性乾癬ないし掌蹠膿疱症、欧米ではacneの患者が多い。
頭文字症候群は冠名症候群以上にすぐ忘れる。知っていると症状・合併症が思い出せるので便利なのだが。CREST、POEMS、TORCH、HELLPなどなど。RUDやJOBは人名だったか、症状を思い出そうにも出てこない。だれかがまとめてくれるとよいのだが。
角化型足白癬は終局病態ではない!
第56回神奈川医真菌研究会から(平成19年7月14日)
高齢者施設からの報告。足白癬を治療しないで放置するとどうなるかという話。入所者80%に足の爪白癬をみとめるが、角化型足白癬はほとんどいない。足白癬は、その終局像として、角化型足白癬に至る、という経過を想像するが、実はそうではなく、寝たきりになると足蹠は、逆につるつる、ふにゃふにゃになってしまうという。小水疱を伴うことも少なく、薄い鱗屑ついている程度だが、鏡検ではしっかり糸状菌が認められる。寝たきりのため、表皮にも廃用が生じているのであろう。言い換えれば、角化型足白癬は、健康サンダルの使用に代表されるように、たえず足蹠に物理的な刺激が加わった状態で発症すると言える。
確かにその通りだと思った。つるつるふにゃふにゃ型足白癬という呼称が広く普及することを期待する。
涙による蕁麻疹
第2回横浜皮膚免疫アレルギー懇話会から(平成19年6月29日)
コリン性蕁麻疹の患者で時に眼瞼の浮腫をきたす例があり、時に開眼不能になる場合もある。これらの患者では、コリン性蕁麻疹を伴っており、涙に対する過敏症状がある。涙がやや黄色っぽいのが特徴。涙を採取して、それを薄めて点眼すると、症状の誘発が可能。運動をした際に出る涙の方が、タマネギで誘発した涙よりも症状が強い。汗によっても誘発されることがある。
汗過敏は聞いたことがあるが、涙過敏とは恐れ入った。神戸系の講演はいつも楽しく聞いている。ところでクインケの浮腫ではどうだろう。眼瞼の患者は涙過敏、口唇の患者は唾液過敏?今度調べてみよう。
組織でリンパ毛細管が拡張している時に考えること
第32回横々会から(平成19年6月28日)
正常の皮膚組織では、真皮のリンパ毛細管は見えない。これが見える時には、1)組織液をうまく吸収できない場合(浮腫)と、2)弾性線維が変性してしまっている場合(pseudoxanthoma elasticum、Pringle病、SLEなど)がある。リンパ毛細管の拡張を見逃さないことが大切。Nonne-Milroy-Meige 症候群という先天性の足背のリンパ浮腫を来す疾患があることも留意しておくこと。
先天性のリンパ浮腫は今まで経験がないが、外胚葉奇形を伴う遺伝性の疾患がいくつもあるようだ。今後は注意してみていこう。
蛇行性穿孔性弾力線維症の治療にビタミンA外用が用いられる
第812回日本皮膚科学会東京地方会から(平成19年6月16日)
ウィルソン病に対して使用中の、D-ペニシラミン内服によって腋窩に生じた、特有の皮膚病変。D-ペニシラミンは結合織の架橋形成の阻害作用があり、elastinのアルデヒド型に直接結合するため、経表皮的排泄をきたすことがある。治療では、tazarotene外用が有効な症例があるとのこと。
tazaroteneはビタミンA誘導体で、TazoracあるいはZoracという名前で欧米でacneに使用されているようだ。2008年に発売されるadapaleneではどうだろうか。
PRP(platelet rich plasma)による難治性潰瘍・瘻孔の治療
第22回日本皮膚外科学会から(平成19年6月10日)
自家血を採血し、遠心分離して得られたplatelet rich な血漿分画に、KClとトロンビンを加え凝集、活性化し、ゲル状となったPRP(platelet rich plasma)を難治性の下腿潰瘍や褥瘡の瘻孔に外用、注入する治療法があり、有効である。
これは知らなかった。PDGFやTGF-βなどの成長因子を多く含み、創傷治癒が促進されるとのこと。機会があればやってみよう。疣贅に液体窒素凍結を行ったあとにできる血疱をはがした時のねっとりした感じを想像した。調べてみると、歯科口腔外科のほか、しわ伸ばしなどの美容目的でも盛んに使われているようだ。
乳児の頭部脱毛斑ではcranial meningoceleに注意
第27回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成19年6月6日)
脱毛をきたす脱毛症以外の皮膚病の話。乾癬、掌蹠膿疱症、DLE、SLE、PSS、尋常性天疱瘡、癌の皮膚メタ、粘液水腫、Cronkhite-Canada症候群、aplasia cutisなど。色々な疾患を鑑別する必要がある。また、乳児の限局的な脱毛斑では、meningoceleが下にある可能性があるので、安易な処置や治療を行わないようにすることが大事。
経験はないが、触診が大事だろう。穿刺などしたら大変なことになる。
光毒性反応、春のアワビのキモには今でも注意が必要である
第12回横浜南西部皮膚科勉強会から(平成19年5月31日)
クロレラ加工品で有名になったな光毒性反応。クロロフィルからMgが抜けて、フェオホルバイトになると皮膚に光毒性反応を生じる。現在はフェオホルバイトの含有量を規制しているので、少なくなった。そのほか、最近はやりのアロマオイル、春のアワビのキモ、野沢菜の浅漬けなどには注意が必要。
アワビのキモは昔から有名らしい。私だけが知らなかったようだ。春先のphotodermatosisでは貝類の摂取を聞いてみよう。意外に、micropapular light eruptionなどでも関係がある?
多型慢性痒疹はピロリの除菌でよくなる
第23回日本臨床皮膚科医会総会から(平成19年5月20日)
多型慢性痒疹の患者14例で、便中のヘリコバクター・ピロリ抗原の有無を検索した。14例中10例で陽性だった。そのうち7例に対して、AMPC、CAM、PPIによる除菌治療を行った。5例で除菌終了後、3〜14日後に皮膚症状が軽快し、さらに4例では再発を認めなかった。
再燃を繰り返すため、当院では症例がたまっている。抗原の検出をやって、陽性なら除菌をお願いしてみよう。ただし、CAM自体が色々と免疫調整作用を持っているため、という可能性も否定できないと感じた。
「ステロイド軟膏を塗ると黒くなる」は文化結合症候群である
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月22日)
アトピー性皮膚炎の外用剤のEBMの話。ステロイド軟膏を塗ると色が黒くなるという、よくある患者さんからの不安に対し、炎症が治まった後の色素沈着であると常識的に答えるよりは、火事の焼けあとが黒いのは、火が燃えたためで、消防士が水をかけたからではないと答える方がわかりやすい。なお、ステロイド軟膏を塗ると色が黒くなると思っているのは全世界的には日本人だけで、これは文化結合症候群である。
ある地域・民族・文化環境によって発生しやすい精神疾患を文化結合(依存)症候群というらしい。その辺もおもしろかった。
特化則による皮膚検診とタールピッチ皮膚症
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
足背・下腿・手背などの多発性の有棘細胞癌と表皮細胞異形を伴うびらん。職業は漁師で50年にわたり、網の補強のためコールタールを素手で塗っていたことが原因のタールピッチ皮膚症と診断された。労働安全衛生法に基づき定められた、特定化学物質障害予防規則(特化則)では、タールピッチを使用する労働者には半年に一度の皮膚検診が義務づけられているとのこと。
電離放射線検診は大学時代に行っていたが、恥ずかしながら、法規自体を知らなかった。法律にはなかなかなじめないが、安全衛生情報センターのHPに詳しく書かれているので、ひまがあったら勉強しておこう。
寒いと体幹から多量の汗をかく遺伝性疾患
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
cold-induced sweating syndromeというまれな疾患がある。幼児期から生じる発汗異常で、夏には汗をかかず、冬になると体幹、腋窩などからの発汗が顕著となる。外気にさらされている顔や手足には発汗がない。脊柱側弯、外反肘、手指のPIP関節の腫脹・変形などの骨格異常を伴い、また指間の皮膚が水かき状で、歯牙の脱落も認めた。ciliary neurotrophic factor (CNTF) receptorの第2リガンドであるCRLF1の遺伝子変異が原因の常染色体劣性の遺伝性疾患であることがわかっている。
よくぞ、このような症例を見つけたものだと感心した。それにしても遺伝子変異まですでに見つかっているとは驚きである。
ペリシットはニコチン酸アミドのプロドラッグである
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
高齢者の水疱性類天疱瘡に対して、ステロイド全身投与前に試みてよい治療にミノサイクリン+ニコチン酸アミドの併用があるが、高脂血症治療薬であるペリシットはニコチン酸アミドのプロドラッグで、体内で代謝されニコチン酸アミドとなる。ペリシット1000mgが885mgのニコチン酸アミドに相当する。ただし、耐糖能異常の副作用があるので、血糖には注意しなければならない。
これは知らなかった。今度使ってみよう。特に高脂血症を伴う口唇炎や口角炎などにも使えそうである。
イトラコナゾールパルス後にウイルス性の急性発疹症がおこることがある?
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
イトラコナゾールパルス終了後に生じた発熱を多型紅斑の2例のうち、1例は内服テスト陽性。1例は内服テスト陰性で、その後の2クールでは発疹の出現なし。後者では一時的に白血球減少を伴い、イトラコナゾールによる免疫系の変調?が引き起こしたウイルス感染症かもしれない。
2例目は、よく残りの2クールを施行できたものだと感心する。白血球の低下が鑑別に重要なのかもしれない。
帯状疱疹の数年後に生じた肉芽腫
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
高齢者の腰部・下腹部(右Th11領域)に帯状疱疹が生じ、通常通りの治療を受けた。その2年後、罹患部位、およびそれからやや離れた背部にも、痒みを伴う多数の扁平に隆起する、やや硬い、大豆大までの赤い小結節が生じた。組織学的には類上皮細胞・多核巨細胞を伴う肉芽腫性病変で、帯状疱疹後肉芽腫(postzoster granuloma)と診断した。
これだけ帯状疱疹の患者をみているのに、1例の経験もない。組織も瘢痕ではないし、肉芽腫であることは間違いない。巨細胞中にvaricella-zoster virusを証明した報告もあるようで、いわゆる異物反応か。
亜急性結節性遊走性脂肪織炎という疾患
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
亜急性結節性遊走性脂肪織炎(Vilanova's disease)は、30〜60歳の女性に生じ、多くは片側の下腿伸側の無痛性の紅斑で始まり、2〜3週間で10〜20pの局面に変化し、古い病変は硬化を伴ってくる。潰瘍化や静脈炎の合併はない。生検では脂肪小葉間結合織に種々の程度の肉芽腫性、線維性の変化を認める。治療ではヨードカリが有効で、数週間で治癒するが、再発をきたすこともある。原因は不明だが、溶連菌感染や甲状腺疾患に伴うことがあるとのこと。
これは、初めて聞いた病名であった。今まであったかもしれないが、静脈瘤性症候群や結節性紅斑と診断しているだろう。記憶にとどめておこう。
水和が皮膚炎を起こす!
第106回日本皮膚科学会総会から(平成19年4月21日)
おむつや生理用ナプキンで生じる皮膚炎には高湿度環境による水和(hydration)が原因のひとつと考えられる。水和閉塞負荷が及ぼす影響を検討するため、生食を含ませた綿を健常人の膝膕部皮膚に24時間貼付密閉し、検討した。その結果、70%に皮膚炎が発症した。皮膚炎発症群では水和閉塞直後のTEWLが高く、角層の厚さの増加が少ない傾向にあった。また、皮表では皮膚炎の有無にかかわらず、Staphylococcus属の菌が増加したが、皮膚炎のない被検者では速やかに減少して通常状態に戻るのに対し、皮膚炎が生じた被検者では、細菌の減少が遅れる傾向にあった。したがって、水和閉塞による皮膚炎の発症には、角層の水分保持能の低下および、ブドウ球菌属の関与が示唆された。
もともと水分保持能のよくない、アトピー性皮膚炎やドライスキンがあると、高度湿潤環境で湿疹が誘発されやすいということ。細菌の増殖も関与しているようだ。これはまさに、サッカーシンガード皮膚炎で経験した状況であり、興味深かった。
疥癬虫は水尾(みお)の先にいる
第30回横浜西部皮膚科臨床懇話会から(平成19年4月14日)
疥癬トンネルの詳細な観察。疥癬虫は、角層が柔らかくて掘りやすいため、皮膚の皺を好む。また、角層に潜って前に進んでいくため、水面に水鳥が残すような水尾の先、Y字型鱗屑の根もと、ないし涙型の痂皮のとがった所にいる。また、ダーモスコピーでは、茶色い「ほっかむり」として成虫そのものを確認できる。
これは指摘の通りである。水尾・ほっかむり・涙型の痂皮など、表現が大変ユニークで忘れがたい。
ビタミンD3製剤は酸性の軟膏と一緒に使ってはいけない
アトピー性皮膚炎と抗アレルギー薬講演会から(平成19年4月12日)
乾癬の治療薬、ビタミンD3外用剤は酸に不安定なため、混合はもちろん重擦もしてはいけない。角質溶解剤のサリチル酸ワセリン、ウレパール軟膏(0/W)、また、デルモベート軟膏の後発品であるマイアロン軟膏にもクエン酸が入っているので、注意が必要。
当院でも足蹠の乾癬や掌蹠膿疱症で併用処方している例があるかもしれない。気をつけよう。
アフラビノーシス(ビタミンB2欠乏)による口唇炎と腺性口唇炎
第116回横浜市皮膚科医会から(平成19年4月8日)
糖尿病などでビタミンB2が欠乏した際に生じる、粘膜病変の臨床例。紅斑局面の中央にびらんがあり、その周囲に乾いた鱗屑を付着するのが特徴。また、これに似た疾患に腺性口唇炎(cheilitis grandularis)があり、下口唇粘膜の小唾液腺開口部に点状のびらんや陥凹を認め、分泌管の拡張と種々の程度の炎症を伴い、小児に多い。
口唇炎も原因の鑑別が難しい。口唇炎や口角炎は、広く一般的にもビタミン不足と思われているが、なかなかそれが原因だと確信をもって診断することはほとんどない。口唇炎の治療では、慣習的にB2とB6を用いることが多いが、実際の血中濃度を調べたことはそういえば、一度もない。今度調べてみようか。
DIHSはDIHS/DRESSで報告した方がよい?
第4回相模原皮膚科学セミナーから(平成19年4月7日)
DIHS(Drug-induced hypersensitivity syndrome)の診断基準は、日皮のHPにある通りで、1)限られた薬剤投与後に遅発性に生じ、急速に拡大する紅斑で、多くの場合、紅皮症に移行する。2)原因薬剤中止後も2週間以上遷延する。3)38℃以上の発熱。4)肝機能障害。5)血液学的異常。6)リンパ節腫脹。7)HHV-6の再活性化、である。この診断名は患者の救済を目的として提唱された診断名という一面があるが、これに対して、国外からは、薬剤性アナフィラキシーなどの即時型のアレルギーを想像させるという批判があるようで、欧州では、DRESS(Drug Reactions with Eosinophilia and Systemic Symptoms)という、臨床を重視し、HHV-6の再活性化を伴うことを条件としない病名が用いられている。DRESSの中に、HHV-6の再活性化を伴うDIHSが含まれると考えてかまわないが、横文字の報告は、DIHS/DRESSとして報告した方がよいとのことである。
米国ではDIDMOHS(Drug Induced Delayed Multi-Organ Hypersensitivity Syndrome)という病名もあるようだ。全世界的にDIHSでいいと思うが、政治と同様に、総意が必要ということか。
タバコが原因の口腔粘膜病変
Dermaフォーラム2007から(平成19年3月10日)
ヘビースモーカーの硬口蓋に生じる白板症(leukokeratosis nicotinica palati)、時に頬粘膜、下口唇粘膜にも発生する(stomatitis nicotinica)。早期には粘膜が乳白色に混濁し、その中に唾液腺開口部に一致する点状の赤い斑、ないし光沢のある白色の病変を伴う(粘膜上皮細胞の空胞変性)。慢性に移行すると不規則な白色角化局面となり、粘膜上皮は肥厚し表面が皺状に凹凸するが、全経過を通して炎症性の潮紅は伴わないとのこと。
そういう診断をつけたことがない。ただ、当院の電子カルテで使っているICD10にも、ニコチン性口蓋白色角化症、ニコチン性口内炎という病名がちゃんと入っていた。
ANCAに影響を与える因子
第8回関東皮膚脈管懇話会から(平成19年3月11日)
顕微鏡的多発血管炎の疾患マーカーであるMPO-ANCAに影響を与える因子のまとめ。1)シリカ:重症の肺・腎障害が多い。阪神大震災で倒壊した建造物の撤去作業に従事した症例がある。2)薬剤:プロパジールでは21例中13例(48%)、メルカゾールでは34例中3例(9%)で陽性になるという報告がある。3)黄色ブ菌:細菌感染がトリガーになり、MPAが発症することがある。
シリカについては知らなかった。なお、PR3-ANCA陽性のWegener肉芽腫症が欧州に多く、MPO-ANCA陽性のMPAが日本に多いという、人種、遺伝的要因も関連しているとのこと。
爪白癬のイトリゾールパルスは喫煙、飲酒、運動不足で効きが悪い?
Dermaフォーラム2007から(平成19年3月10日)
爪白癬のイトリゾールパルス療法の改善度を生活習慣によって比較した。パルス療法6ヶ月後の改善度は、著効・治癒が喫煙者で33%、非喫煙者で44%、また飲酒の週間がある患者では36%、ない患者では48%、また、スポーツ習慣のある人に治癒症例数が多い傾向があり、飲酒・喫煙・運動不足で効きが悪いという結果だった。
何となく、わかる気がする。治療に熱心かどうかの性格と生活習慣の関連か。
mutiple benign lichenoid dermatosesという病名
墨東病院オープンカンファレンスから(平成19年3月8日)
露光部に発生し、老人性色素斑に炎症を伴い、組織学的に苔癬型反応を認めるlichen planus-like keratosis、あるいはbenign lichenoid keratosisと考えられる個疹が、四肢の露光部に多発する疾患に対して、mutiple benign lichenoid dermatosesという病名がある。文献によると、比較的高齢の女性に多く、先行する老人性色素斑の完全ないし部分的な消褪をみることが多いようだ。
これは最近よく目にする疾患である。当院ではLPLK like LPと呼んでいたが、既報告に従うことにしよう。ただし、文献には自然消褪もあり、ステロイド外用で数週間で改善するということだが、それ以上にかかる例が多いような気がする。一度ちゃんとまとめてみよう。
ニキビをみたときに考えねばならないニキビ以外の疾患
第26回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成19年3月7日)
ニキビに似るがニキビでない疾患の話。perioral dermatitis、本態性のrosacea、油症、ヨード疹、クロールアクネ、ヒダントインやイソニアジドによるacneiform eruption、Nevus comedonicus、ざ瘡型の亜急性単純性痒疹、atrophoderma vermiculata、vascular spider、hydroa vacciniforme、eruptive vellus hair cystなど。このほか全身疾患の症状として、クッシング症候群、クローン病、ベーチェット病、副腎性器症候群を考えなくてはならない。
なるほど。「痒疹のざ瘡型」は印象的だった。顔に限局する痒疹で、血液透析に伴うことが多いらしい。さっそく明日からの診療に役に立つ。
表皮水疱症を骨髄移植で治療する!
第123回神奈川県皮膚科医会から(平成19年3月4日)
骨髄の中には造血幹細胞のほかに様々な臓器・組織へと分化する間葉系幹細胞がある。皮膚の再生に基底層にある幹細胞の他に、骨髄中の幹細胞が関与しているかどうかを調べるため、GFPという蛍光を発する蛋白の遺伝子を導入した骨髄を移植したマウス(GFP-BMTマウス)を作成した。そのマウスの皮膚にキズを作ると、特殊な条件下では半数近い表皮基底細胞がGFP陽性となった。生体には、組織が損傷した場合、その組織になる能力のある体性幹細胞を、骨髄から血流を介して引っぱってきて、できる限り短期間で組織の修復を行うという機構があることが証明された。また、皮膚が大量に欠損したときに、欠損部の皮膚が出す、骨髄幹細胞を呼んでくる因子(コイコイシグナル)も明らかになりつつある。先天性表皮水疱症や重症熱傷などに骨髄幹細胞移植が治療として用いられ、またコイコイシグナルの遺伝子導入によって皮膚の再生が短期間に行えるようになるかもしれない。
夢のある大きな仕事で感動した。再生医学と遺伝子治療の融合は、大きな可能性を秘めていると思った。
乾癬は10を超えたら全身療法の適応である
第1回横浜皮膚病免疫治療研究会から(平成19年2月22日)
乾癬患者では、特に衣服の選択、入浴、スポーツ活動においてQOLが障害されており、また、英国の調査ではうつ症状も62%の患者に認められた。また、QOLのスコアが高いほど服薬のアドヒアランスが低下し、それがさらに乾癬を悪化させる負のスパイラルが存在する。したがって、乾癬患者の治療ではQOLの評価が重要である。また、体表面積(BSA、手のひらが1%)、PASIスコア(self PASIスコアの方が楽)、PDI(Psoriasis Disability Index)のいずれかが10を超えた症例は重症と見なし、シクロスポリン内服などの全身療法を考慮する必要がある(10の法則)。
PDIのほかにもDLQI(Dermatology Life Quality Index)は知っておかないといけないようだ。さっそく準備しよう。
慢性皮膚疾患のセルフマネジメント
日本皮膚科学会東京支部総会から(平成19年2月18日)
糖尿病などの慢性疾患において、患者自身が管理しなければならないことは、以下の3つである。1.治療の管理:くすりの服用など、治療方針について医師と話し合い、自ら正しく実行していくこと。2.社会生活の管理:慢性疾患と上手につきあいながら、仕事をしたり、家事や育児をしたりといった役割をとっていくこと。3.感情の管理:病気があるために感じる怒りや疲労感、無力感、不安などと向き合い、対処すること。2005年秋に日本慢性疾患セルフマネジメント協会(http://www.j-cdsm.org/)が設立され、ワークショップの開催のほか、教材の開発、人材育成などの事業を行っているとのことである。乾癬やアトピー性皮膚炎などの皮膚科の慢性疾患でも有意義なプログラムである。
当院の患者さんにも紹介していくことにしよう。社会的な活動として、学会や医会が取り組んでいく必要があると思った。
女性のびまん性脱毛の原因と鑑別
日本皮膚科学会東京支部総会から(平成19年2月18日)
女性のびまん性脱毛は、@女性の男性型脱毛(female pattern AGA:FAGA)、A休止期脱毛(後頭部は起こりにくい)、B加齢(伸びるスピードが遅くなり、全体として少なくなる)C全身性疾患に伴うもの(polycystic ovary、粘液水腫など)があり、Aはさらに、(1)acute telogen effurium(出産後、ダイエット)、(2)chronic diffuse telogen effurium(内科的疾患)、(3)chronic telogen effurium(薬剤性など)にわけられる。原因となる薬剤には、抗癌剤以外では、三環系抗うつ剤、SSRI、リチウム製剤、βブロッカー、メチルドーパなどがあり、またベサフィブラート、シンバスタチンなどの高脂血症治療剤では内服して3〜4ヶ月たってから脱毛を生じることがある。また、閉経後にぐるりとハチマキ型に脱毛を生じる、post menopausal fibrosing alopecia(PMFA)という特殊なタイプの脱毛症がある。
いろいろあって難しい。薬剤性の脱毛症は診断が難しいが、具体的に名前が挙がったので、今後の診療に役に立つだろう。
シェーグレン症候群のリンパ球性血管炎
日本皮膚科学会東京支部総会から(平成19年2月17日)
下肢の筋肉痛、足関節の腫脹を伴う関節炎、しびれ、発熱。発疹は膨疹様の紅斑。ANCAは陰性。血管炎を疑ったが、細胞浸潤はリンパ球主体。抗SSA抗体陽性と下口唇の生検からシェーグレン症候群に伴うリンパ球性血管炎と診断した。PSL20mgの内服で軽快。関節症状が強いのが特徴のようだ。
病名はともかく、シェーグレン症候群のひとつの皮膚症状と考えよう。たしかに臨床症状は血管炎に似ていると思った。
花粉症ではクスリで眠くならない人の方がクスリが効いている?!
横浜市耳鼻科医会・花粉症講演会から(平成19年2月7日)
第2世代の抗ヒスタミン薬の効果の比較の話。3種類の抗ヒ剤を比較したところ、3者で優劣の違いはなかった。しかし、それぞれにおいて、日中の眠気があった患者となかった患者の2群間で医師の判定による改善度を比較すると、いずれも眠気がなかった患者の方が、眠気があった患者より改善度が高かった。これらの抗ヒ剤では「眠いと効かない」と結論できる。
同じことが蕁麻疹やアトピー性皮膚炎でもいえるだろうか。眠気と効果は必ずしも比例しないというエビデンスはアトピー性皮膚炎でも出ているようだが、患者さんに効いてみよう。眠くなる抗ヒ剤は、即変更の必要がある?
スギ花粉症予備軍とは
横浜市耳鼻科医会・花粉症講演会から(平成19年2月7日)
スギ花粉症には予備軍があり、無症候性スギ花粉症と呼ぶ。スギ花粉特異的IgE抗体の量とは関係がなく、閾値では説明できない。12月末に取ったTリンパ球と3〜4月に取ったTリンパ球それぞれにCriJ1抗原を加えた際のIL-4とIL-5の産生性を比較すると、健常人ではいずれも産生性の違いなし、鼻炎症状を伴う患者ではIL-4、IL-5ともに産生性が亢進、無症候性花粉症患者ではIL-4は産生するが、IL-5は産生しないという違いがあった。また、特異的減感作療法が奏功したスギ花粉症患者では、CriJ1に対するIL-5産生が生じなくなることが判明した。
スギ花粉皮膚炎の無症候性患者もあるのだろうか。同様の検査をするとおもしろいかもしれないと思った。
抗菌薬の効果を引き出す秘訣−PK/PDってなんだ
日本皮膚科学会東京支部・生涯教育セミナーから(平成19年2月4日)
抗菌薬のPK/PDとは、血中濃度と効果の間の相関性を示す指標である。体内動態(Pharmacokinetics:PK)のパラメーターは、最大血中濃度(Cmax)および曲線下面積(AUC)、薬理作用ないし抗菌活性(Pharmacodynamics:PD)のパラメーターは細小発育阻止濃度(MIC)を用いることが多く、PK/PDのパラメーターはCmax/MIC、AUC/MIC、t>MIC(time above MIC: TAM)などで示される。一方、抗菌薬には、薬物濃度がMIC以下でも菌の増殖が抑制されるというPAE(post-antibiotic effect)のある薬剤がある。キノロン、アミノグリコシドは濃度依存性で、PAEあり。抗菌力を高めるためには、1回投与量を増やして、Cmax/MICを高くする必要がある。セフェム、ペニシリンは時間依存性、グラム陰性菌にはPAEなし。したがって、抗菌力を高めるには投与回数を増やして、TAMを長くすることが必要。また、カルバペネム、マクロライドは、時間依存性でPAEありとのことである。
内服の使い方の革新。キノロンは3錠分1の方が、3錠分3より有効と言うこと。また、眼科領域の抗菌点眼薬でも様々なデータがある。皮膚科領域の外用抗菌剤には、だれも興味を持っていないようだ。
帯状疱疹後神経痛の病態とアロデニア
半導体レーザー治療研究会から(平成19年2月1日)
帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の発症によって壊れた神経が、治癒過程で本来つながっていない神経線維に配線がつながり(エファプス)、触覚・圧覚を伝達するAβ線維の刺激がAδ線維やC線維に伝わることによる痛み(アロデニア)を起こすことが主な原因で、シャツに触れた時などに感じる痛みはこのためである。また、交感神経からは常に電気的信号が送られており、それがエファプスを通してAδ線維に伝わるため持続痛と関連している。
皮膚に分布する神経については、かゆみの神経生理の話で時々耳にするようになったが、エファプス、アロデニアなどの単語は始めて聞いたような気がする。生理学や麻酔科の授業で出てきたかどうか、記憶にない。
歯周病菌が動脈内膜炎の原因になる
第30回皮膚脈管膠原病研究会から(平成19年1月25日)
歯周病菌のほとんどはグラム陰性桿菌で、通常は歯垢として歯と歯肉の間にバイオフィルムを形成している。しかし、、特に癌や糖尿病などの疾患あるいは高齢者などの免疫低下の状態では、これが血中に入ると心内膜炎や動脈内膜炎を起こし、それが血管の粥状硬化を増長させ、重要な心血管イベントの引き金になることが報告されているとのこと。
TV番組的であるが、おもしろい討論であった。
深部静脈血栓症の原因として、アンチトロンビンIII欠損症がある
第30回皮膚脈管膠原病研究会から(平成19年1月25日)
若い男性の症例。足を捻挫、ギブス固定をしていたところ、同側下腿に腫脹をきたし、血管エコーで深部静脈血栓症と診断された。へパリン投与で改善。原因は、先天性のアンチトロンビンIII欠損症で、父にも同症を認めた。本疾患は先天的な異常にもかかわらず、20歳から50歳ぐらいに外傷や妊娠を契機に血栓を生じることが多い。治療はアンチトロンビンIIIの補充療法が用いられる。
なかなかそこまで調べられない。血管エコーは皮膚科でも有用な検査であり、当院でも最近これを導入し、現在勉強中である。
腎不全患者では血清5-S-cysteinyldopa(5SCD)が高い
第811回日本皮膚科学会東京地方会から(平成19年1月20日)
血清5SCDは転移性のメラノーマの腫瘍マーカーであるが、慢性腎不全患者、化学療法中の患者、レボドーパを内服中の患者、さらに健常人でも夏季には高くなることがあるということで、注意が必要。
開業医ではまずやらない検査だが、一応そういうことがあることは知っておこう。
osteoimmunologyの最新の話題−Th17と関節リウマチ−
第2回筑駒医師会から(平成18年12月29日)
破骨細胞をめぐる免疫学の話。RAでは、滑膜が異常増殖し、そこに破骨細胞が過剰に形成されて骨破壊を起こす。滑膜内で破骨細胞形成を促す分子が、T細胞の膜上に存在し、リンパ球を活性化する分子として既知のRANKLであるとわかっていたが、T細胞はRANKLと同時に破骨細胞を抑制するIFN-γも作るため、どのようなT細胞が破骨細胞を増やすのかが不明だった。しかし最近、IL-23によって増えるTh17細胞だけが破骨細胞を増やす作用をもつことがわかった。Th17細胞は、IL-17を作り出すことで、周囲の細胞の炎症を引き起こすと同時に、RANKLを増やすことで、破骨細胞の形成を誘導している。
Th1、Th2、Tregまでは聞いたことがあったが、Th17は知らなかった。皮膚科で扱う自己免疫疾患にも関与していそうでおもしろそうである。
成人アナフィラクトイド紫斑病と抗カルジオリピンIgA抗体
第810回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年12月16日)
成人のアナフィラクトイド紫斑病患者20例(男性12例、女性8例)で、血中抗カルジオリピンIgA抗体を計測した。15例で検出され、平均は9.6U(正常は4.0U以下)であった。抗カルジオリピンIgG抗体、IgM抗体、および、抗β2GPI抗体は検出されなかった。臨床症状と平均測定値との関連では、15例の陽性例のうち、関節痛のある9例では12.0、ない6例では8.9、蛋白尿のある7例では13.0、ない8例では6.6、腹痛のある5例では7.5、ない10例では10.6であり、腎障害、関節痛と相関していた。
病因とも関連している可能性もあり、貴重な報告だった。
hypertrichosis lanuginosa
第31回横横会から(平成18年11月30日)
全身性の多毛症だが、そのすべてがうぶ毛で、ずっとhair patternが変わらない状態をいう。先天性と後天性があるが、後天性の全身うぶ毛は肺癌などの悪性腫瘍に合併する、デルマドロームである。
始めて聞いた疾患であった。調べてみると、直腸癌・膵癌などに伴った症例もあった。めったにはないだろうが、今後は注意してみていこう。
サイトメガロウイルス感染で生じた肛門部の潰瘍
第809回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年11月18日)
ネフローゼでステロイド内服中の67歳、女性。肛門部に深い潰瘍ができ、急速に全周に拡大した。発熱などの全身症状なし。生検でサイトメガロウイルス感染症に特異的な核内封入体を有する巨細胞が証明され、診断に至り、ガンシクロビルの投与で軽快した。
なかなか生検をしようと思わない場所だが、生検をしないとわからない。貴重な報告であった。HIV感染に伴って起こることも多いらしい。これは既感染の再活性化か、新しい感染の血行性播種か、それとも皮膚への直接の感染か、質問するのを忘れてしまった。
糖尿病性足病変のハイリスク因子と神経障害
第115回横浜市皮膚科医会から(平成18年11月11日)
糖尿病患者のフットケアについての総論。切断に至るようなハイリスク因子としては、1) 糖尿病の経過が10年以上、2) HbA1Cが7.0以上、3) 合併症特に糖尿病性腎症に対するHD、4) 喫煙、5) 独居の男性、6) 教育不足、7)切断の既往歴、があげられる。また、糖尿病性の神経障害と皮膚病変の関連は、知覚神経障害→痛みを感じない→潰瘍・壊疽の悪化や進行、運動神経障害→支配筋の萎縮→足の変形、自律神経障害→発汗の低下→乾燥・キレツの3つの要素がある。
足の皮膚の乾燥、キレツが糖尿病性神経障害と関連するのは知らなかった。角化型足白癬が糖尿病患者で多いのも、易感染性だけではないのかもしれないと思った。
ドライマウスでは口腔内のカンジダが多い
口腔カンジダ症学術講演会から(平成18年11月9日)
口腔外科の先生の講演。ドライマウスを主訴に来院した690名の患者の唾液分泌量を測定し、安静時唾液分泌量が15分で1.5ml以下、刺激時唾液分泌量(ガムテスト)が患者10分で10ml以下を指標とした。690名中295名では安静時、刺激時ともに減少、66名では安静時減少、刺激時は正常、106名では安静時正常、刺激時に減少、223名ではいずれも正常だった。これらの患者で唾液からのカンジダの培養を行ったところ、安静時、刺激時ともに低下していた295名のうち、69%からカンジダが培養され、コロニーの平均が375個、安静時、刺激時どちらか一方が低下していた、172名のうち、カンジダが培養されたのは67%でコロニー数の平均は66.8個、安静時、刺激時ともに正常であった223名からは、カンジダが検出されたのは48%で、平均コロニー数は7.8個であった。
きれいなデータである。カンジダが原因で口腔内乾燥が生じているとは思わないが、ドライマウスが口腔内カンジダ症の誘因になることがわかった。ちなみにドライマウスは、唾液分泌の低下(唾液腺の破壊・神経伝達の障害)と唾液の蒸発が原因だが、歯ぎしりをする人は、下顎の筋が疲れて口が開いてしまい、夜間口腔乾燥を訴えることが多いらしい。
キャッスルマン病とトシリズマブ
第65回日本アレルギー学会から(平成18年11月3日)
キャッスルマン病に対する、トシリズマブ(アクテムラ)の有効性の報告。キャッスルマン病、特に多発性のリンパ節腫脹をきたす多中心性キャッスルマン病では、IL-6の過剰産生が原因となって、臨床症状(発熱、倦怠感、やせ、皮膚の形質細胞腫、間質性肺炎など)あるいは検査異常(CRPや血清アミロイドAなどの急性期蛋白の上昇、血中アルブミン、ヘモグロビン、総コレステロールなどの低下)が生じるが、ヒト化抗IL-6受容体抗体(トシリズマブ)8mg/kgの2週間隔での静注によって、症状、検査異常ともに改善した。それに加えて、治療前には高値であった、total IgE、血中IL-4、RAST scoreや、血中VEGFも正常化したとのこと。
モノクローナル抗体の治療は非常に興味深く、期待している。癌の悪液質もIL-6の過剰産生による病態であるとのことで、コストはかかるが使えるのではないか。
アスピリン不耐症の治療はアスピリンの継続投与
第65回日本アレルギー学会から(平成18年11月3日)
アスピリン不耐症はCOX-1阻害作用を持つNSAIDに対して、喘息や蕁麻疹などの過敏症状を呈する後天的な薬理学的変調体質である。アスピリン喘息では、COX-1阻害薬による誘発のあとに2-5日間の不応期が生じる。これを利用して、アスピリンを連続投与することによって、NSAIDに対する耐性を維持し、発症の予防が可能である。まず50mg程度で軽度の喘息発作を誘発し、翌2日目はそれと同量、さらにその数時間後に2倍量を負荷。3-4日目はさらにその4倍量(200mg)、8倍量(400mg)を3-4時間ごとに投与し、耐性を完成させる。維持はアスピリン300mg-600mg/日で行っていくとのこと。ただし、皮膚型のアスピリン不耐症(蕁麻疹など)では病型が複雑で、耐性誘導の評価も一致していないらしい。
理論的には「確かにその通りだ」と思う。蕁麻疹での耐性誘導、維持療法の評価も必要だろう。
小麦の負荷は「おやき」で行う
横浜皮膚疾患研究会から(平成18年11月2日)
運動誘発性食物依存性アナフィラキシーの原因で最も多いのが小麦であるが、誘発テストの場合には小麦粉で作った20gないし100gの「おやき」を利用する。20gでは出ず、100gで出る症例がある。なお、アスピリン負荷をかける場合には、20mg、50mg、100mg、200mgと少ない量から始める必要がある。症例によっては200mgのアスピリン内服で、血中グリアジン濃度が5倍にもなることがあるとのこと。
このような負荷試験は、実際はどうやっているか、わからないことが多く、参考になった。ちなみに100g「おやき」は中力小麦粉(それがない時は強力粉と薄力粉を半々) を100g、サラダ油を大さじ1/2、塩を少々、熱湯を1/3カップ混ぜて、よくこね、棒状にまとめてぬれぶきんをかけ30分以上置いてねかせ、切り分け丸め、麺棒などで伸ばし、蒸すあるいは焼いて作るそうだ。また生地を小さく薄く伸ばすと、餃子の皮として使えるらしい。
フタロシアニン加工繊維がアレルゲンを吸着する
第2回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成18年10月28日)
金属フタロシアニンが花粉、ハウスダストなどのアレルゲンを吸着することが判明。加工繊維を用いて花粉症用のマスクの他、寝具、下着を開発。アレルキャッチャーという名称で商品化した。アトピー性皮膚炎でこの下着を使用したところ、かゆみスコアの低下を認めた(http://www.jst.go.jp/pr/info/info293/index.html)。さらに、給気口や空気清浄機・エアコンなどの家電向けフィルターもすでに商品化されている。
かゆみの抑制は理解に苦しむが、エアコンフィルターはいいだろうと思った。これから有名になるかもしれないので、名前は覚えておこう。
APSに対するワーファリンの使い方
第2回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成18年10月28日)
抗リン脂質抗体症候群では臓器や大血管の血栓予防が重要であり、抗血栓療法についての知識が必要である。ワーファリンの使用法については、まず、少ない量(1mg)から始めて、1.5mg、2mgと増やしていく。最初は3日に1回はINR(プロトロンビン時間のInternational Normalized Ratio)を測定し、1.6から2.0ぐらい、トロンボテストでは20〜30%で維持していくのがよい。いつまで内服するかについては、血栓に対する予防投与なので、一生涯とのこと。
皮膚科で治療することもあるだろう。覚えておかなくてはいけない。恥ずかしながら、INRという評価法を知らなかった。
抗核抗体、蛍光抗体直接法どこまでわかるか
第2回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成18年10月28日)
抗核抗体の検査は血清を希釈し蛍光抗体直接法を行う。この検査では@抗核抗体が陽性か陰性か、A抗セントロメア抗体(discrete speckled pattern)が陽性か、B染色パターンから抗原特異性がある程度わかる。逆に、SSA、SSB、Jo-1、1本鎖DNAは抗原が不安定で溶出してしまうため、この方法では抗核抗体としては検出できず、結果としては陰性となる。
検査結果を読む上で、大事な復習であった。
皮膚筋炎の顔の紅斑はマラセチアの菌糸型寄生がみられる
第50回医真菌学会から(平成18年10月21日)
脂漏性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さ、皮膚筋炎、ざ瘡の患者で、顔面脂漏部位のマラセチアの寄生形態をKOH直接鏡検で調べた。脂漏性皮膚炎では79例中、陰性15例、胞子型55例、菌糸型15例。アトピー性皮膚炎では50例中、陰性11例、胞子型28例、菌糸型1例。皮膚筋炎では5例中、陰性なし、胞子型1例、菌糸型4例であった。
癜風以外にも、皮膚筋炎の顔面脂漏部でマラセチアの菌糸がみられるらしい。どういう意味があるのか考えてみたい。
爪の空洞形成の原因菌はメンタである
第50回医真菌学会から(平成18年10月21日)
爪の先から中枢側に進展するクサビ状の混濁で、爪甲下に空洞を形成するものをdermatophytomaとよぶ。通常爪白癬の原因菌は90%がTrichophyton rubrumであるが、dermatophytomaから検出された真菌は90%以上がT. mentagrophytesであった。
SWOもメンタが多いようだし、メンタと爪の関連はなかなかおもしろそうだ。
ヤケイロタケと慢性咳嗽
第50回医真菌学会から(平成18年10月21日)
アトピー性咳嗽あるいは咳喘息の一部の患者の喀痰培養から、環境真菌であるヤケイロタケ(Bjerkandera adusta)が検出され、全例咳嗽に対して抗真菌剤が有効であった。即時型アレルギーを惹起する環境真菌として注目する必要がある。
サクラの木の幹にくっついているサルノコシカケのようなクチャっとしたキノコ。こんなのが病因になるとは知らなかった。アトピー性皮膚炎との関連もあったりするのだろうか。
napkin psoriasisの長期経過
第5回横浜デルマカンファレンスから(平成18年10月19日)
生後1ヶ月前後の乳児の股部に発症する炎症性角化症。乾癬なのか、脂漏性皮膚炎なのか、カンジダが関与するのかで、結論が出ていない。通常は1歳頃までに軽快・消褪すると言われている。しかし、その後6〜7年以上経過をみた11例のうち、3例で4歳、6歳、14歳で尋常性乾癬が発症した。napkin psoriasisではやはり乾癬の素因が関与していると考えられる。
脂漏性皮膚炎の特殊な形で、すべてが自然経過で改善すると思っていたので意外だった。
日本人では眼皮膚白皮症(OCA)2型の軽症例が多く存在する
第57回中部支部学術大会から(平成18年10月8日)
OCA2型(P遺伝子関連型)は日本人のOCAの10%に認められる。OCA1型(チロジナーゼ関連型)より症状が軽く、日焼けを起こしやすいことは自覚していても疾病として認識していない人が多い。100名ほどの調査では、メラノソームの生合成に関わる蛋白をコードするP遺伝子のA481T alleleの変異を有するキャリアーが、日本人健常人のうち、heteroが20%で、homoが2%で認められた。
美白変異とよばれてきたようだ。近くにもいるかもしれない。UVによる皮膚癌発症には注意が必要とのことなので、注意してみていこう。
パスツレラ感染症は猫に引っ掻かれてもおこる
第57回中部支部学術大会から(平成18年10月7日)
パスツレラ感染症は通常は犬や猫に咬まれたあとに発症する。ペットの口腔内の常在菌で、犬では75%、猫では97%に認められる。ただし、猫はグルーミングをする関係で、20%では爪にも菌の保有が認められる。したがって、猫に引っ掻かれたあとに発症することもあるので、注意が必要。
口腔内の菌という認識があったので、咬まれた後だけ注意すればよいかと思っていた。猫が前足の先をペロペロなめている姿を思い出した。
下痢用のおむつの開発秘話
第15回皮膚科在宅医療勉強会から(平成18年9月14日)
難治性の下痢を伴っている患者の仙骨部の褥瘡の汚染回避に対して有効なおむつ(軟便吸収パッド)を作って、すでに市販されている(http://www.elleair.co.jp/takecare/)。水様便が8g、10秒間連射であるという観察から、まず濾過して液体成分と固形成分に分離し、液成分を吸収することで便モレと便による一次刺激を軽減した商品とのこと。
8g、10秒連射を突き止めるまでがかなり大変だったと思われる。このほか、褥瘡のポケットを確認するために鑷子を差し込むのは野蛮との見解から、柔らかいファイバーで先端に赤いライトがつくポケット検査用ライトの紹介もあった。医者では考えつかない仕事にはいつも頭が下がる。
デング熱とデング出血熱の違いは?
横浜皮膚疾患研究会から(平成18年9月7日)
デング熱とデング出血熱は、いずれもネッタイシマカなどが媒介するデングウイルスが原因で、高熱とともに風疹様の中毒疹を生じる。東南アジアなどの流行地に行った人の急性発疹症では念頭に置く必要がある。デングウイルス感染後、デング熱と同様に発症して経過した患者の一部に、突然に血漿漏出と出血傾向を主症状とすることがあり、デング出血熱とよばれる。点状出血、鼻出血、消化管出血などをきたし死に至ることもあるので注意が必要。血小板数のフォローが大事。
デング熱とデング出血熱は違うウイルスかと思っていた。どうすれば出血熱にならないですむかが、臨床医としては知りたいところである。国立感染症研究所のHPに詳しい解説がある。
急性陰門潰瘍
第24回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成18年9月6日)
若い女性の外陰部にみられる深い潰瘍で瘢痕を残す。通常は慢性再発性だが1回きりで治癒する例もあり、感染症の除外が必要。かつては膣桿菌が関与するといわれていた。一般的には年齢とともに改善。幼児での発症はない。必ずしもすべてが不全型ベーチェット病というわけではないが、結節性紅斑を伴ったら、それも考慮するというスタンスでフォローすること。
不全型ベーチェット病が最近また増加してきたという報告がある。ちなみにベーチェットの陰部潰瘍は通常はアフタで、急性陰門潰瘍はsweet病の外陰部潰瘍にあたるとのことだ。
手を見てDarier病を診断する
横浜労災病院症例検討会から(平成18年9月6日)
手背から手指背面に径1mmほどの白色〜淡紅褐色の小結節が多発。一見、青年性扁平疣贅。疣贅状肢端角化症(acrokeratosis verciformis Hopf)と診断。爪甲が全体的に乳白色で、透明な縦の線条を伴うこととともに、Darier病にみられる手の症状の特徴である。
忘れかけた病名を思い出した。手背に扁平疣贅と思われる角化性小結節をみたら躯幹の観察が必要だ。
顕微鏡的多発血管炎(MPA)の皮膚科としての考え方
第7回関東脈管懇話会から(平成18年9月3日)
MPAの概説。ANCA関連血管炎のひとつで、MPO-ANCAが陽性であり、急速進行性糸球体腎炎、肺出血、皮膚症状が主症状。ときに多発単神経炎(乏血性末梢神経障害)と消化管出血をきたす。発症機序は、MPO-ANCAと結合して活性化された好中球が細小血管の血管内皮を損傷することであるが、罹患血管が細小血管であるため、血管壁の壊死性変化はおこらず、フィブリンも外へ流れてしまうため、フィブリノイドにはならない。また免疫複合体は関与しないので、DIFも陰性である。かつてはhypersensitivity angiitisといわれ、急性に増悪して生命予後が不良で、病因として抗甲状腺剤などの薬剤との関連が深かった。
血管壁の壊死性変化は認めないというところに注目。ここが内科・病理の意見といつも食い違うところだ。診断基準もPNと一緒では無理があると思われる。
フィンカー5分割って何のこと?
第2回神奈川県皮膚科医会サマーセミナーから(平成18年8月26日)
自分の講演で恐縮だが、AGAの内服治療の話。わが国ではプロペシア0.2mg錠あるいは1mgが認められているが、実はフィナステリドはプロペシアだけではなかったという事実を知った。そもそも前立腺肥大の治療薬である、フィナステリド5mgのプロスカー、あるいはそのジェネリックであるフィンカー・フィスタイドといった薬剤がインターネット経由の個人輸入で出回っている。5mg錠をを4分割、5分割してプロペシア1mg錠の内服と同じ効果を期待している。特にフィンカー5分割はコストが安くすみ(1mgあたり15円〜20円)、若者に人気があるとのこと。
そういう薬があって、そうしている人がいるという情報として大事。ただし適正使用ではなく、全く薦められない。ファイザーがバイアグラで調査をしたところ、正規品以外を内服している人が22%あったという。ただし、インターネットで販売されているものの半分は中国や南アフリカで作られている偽造品だそうで、WHOもこれについては警告を発した。プロペシアでも同じことが起こってきそうで、心配である。
油症を忘れるべからず
日本臨床皮膚科医会中国支部学術大会から(平成18年7月30日)
PCB、PCDFなどのダイオキシンが混入した米ぬか油を食したために生じた食品公害。クロールアクネが有名だが、そのほか歯肉・爪の色素沈着やコーラベビー(全身が黒い色素沈着の赤ちゃん)、マイボーム腺肥大とチーズ様眼脂、乳頭モンゴメリー腺増大などの皮膚粘膜症状がある。油症と認定された患者の検診では、30年たった今でも3-4割にクロールアクネの症状が残っているとのこと。
皮膚科医が覚えておく必要のある、歴史的事件だと再確認した。九大皮膚科のホームページに詳しい解説と文献があることを最近知った(http://www.kyudai-derm.org/part/yusho/)。
ダニと皮膚病の複雑な関係
日本臨床皮膚科医会中国支部学術大会から(平成18年7月30日)
害虫専門家による皮膚疾患と関連するダニの話のまとめ。@ヒトの血を吸うダニ(マダニ、ツツガムシ、イエダニ、ワクモ、トリサシダニ、スズメサシダニ):イエダニはネズミにつくダニで越冬のため11月頃に住居に侵入した際に持ち込まれる。ワクモ以下は鳥につくダニだが、5-6月に雛が巣立った後、ヒトを刺すことがある。Aヒトの体液を吸うダニ(ミナミツメダニ、シラミダニ):血は吸わないが虫さされの症状を起こす。ミナミツメダニは畳についていて夏に発生。シラミダニはシバンムシなどの室内の虫に寄生して、時にヒトを刺す。チクリとはせず、遅延型反応を起こすらしい。チクリとした場合は、同じくシバンムシに寄生する、シバンムシアリガタバチの可能性が大。Bヒト寄生性のダニ(ヒゼンダニ、ニキビダニ)Cアレルゲンとなるダニ(チリダニ、コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニ)。
夏場の虫さされの患者さんに、何に刺されたかを聞かれて困ることが多いので、参考になった。シバンムシアリガタバチが大穴だろう。最近は鳥の飼育歴、近くに鳥の巣がないかも聞くようになった。
スキンバリアーと出生前診断
第23回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成18年7月20日)
魚鱗癬はバリア形成不全であるという当たり前だが、実は細胞生物学の最先端の話。表皮のバリアは@角層蛋白(ケラチン・フィラグリン)、Acornified cell emvelope、Binter cellular lipid layerからなるが、それぞれの形成不全が@では尋常性魚鱗癬と水疱型魚鱗癬様紅皮症、Aでは非水疱型魚鱗癬様紅皮症と葉状魚鱗癬、Bでは道化師様魚鱗癬とX-linked ichthyosisの表現型をとる。その中でも道化師様魚鱗癬では表皮細胞の脂質輸送に携わる蛋白であるABCA12の高度な機能異常で細胞間脂質の形成が妨げられることが病因であると確認された。これによって胎児皮膚生検(19週から可能)あるいは絨毛膜生検(10週から可能)で得た検体のDNA解析による、道化師様魚鱗癬の出生前診断が可能になった。
アトピー性皮膚炎の乾燥肌にもフィラグリンの異常が関与しているとのこと。さらに一般的な疾患でも解明されていくに違いない。
加温で凝固するタンパク
第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月14日)
夏季に潰瘍をきたすlivedo racemosaの原因検索の話。通常加温で凝固する血清ないし血漿中の蛋白は、Bence-Jones蛋白ないし、pyroglobulineであるが、凝固にはいずれも56℃以上の必要である。しかし一部の夏季潰瘍をきたすlivedoの患者の血漿中には、42℃、6時間の加温で凝結する約40kDaの蛋白が認められた。これは、ESI-TOF/MSという方法による質量分析の結果、actinとくにβactinとの相関が示唆された。
生体内で夏季に何が変化するのかは以前から不思議に思っている。ただし、細胞に広く分布しているactin蛋白が、どのように血栓ないし塞栓と関連するのかは、解釈が難しいと思った。
βブロッカーを内服していると、アナフィラキシーの治療の妨げになる
第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月15日)
高血圧・心不全治療でβブロッカーを内服している患者では、アナフィラキシーを生じた際に通常の第一選択であるエピネフリンが効きにくく、この場合にはグルカゴンを投与する必要があるかもしれない。
めったに遭遇するわけではないが、覚えておく必要があると思った。ただし、どこの皮膚科外来にもグルカゴンは置いていないだろう。
fixed food eruption(食物摂取が原因の固定疹)
第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月15日)
四肢・腰部に色素沈着のある症例。ナタマメを煎じたお茶を飲んだあとにその部位に紅斑を生じた。組織も固定疹の反応。薬剤との因果関係は証明できず、お茶の再投与で、24時間後後に紅斑が誘発され、固定食物疹と診断。固定食物疹はこれまでに、アスパラガス、ラクトース、レンズ豆、チーズ、トニックウォーターによるものが報告されている。
確かにこういう症例はあってもいいだろう。固定疹をみたら、食物も原因として考えておく必要があると思った。
豆乳アレルギーは大豆アレルギーではなく、花粉症と関連している
第36回日本皮膚アレルギー学会から(平成18年7月15日)
豆乳アレルギー3例の報告。すべて女性でいずれも春季花粉症を合併していて、ハンノキ・シラカンバの特異的IgEが陽性。豆腐の摂取は問題なし。症状は口腔内アレルギー症候群からアナフィラキシーまで様々。抗原としてはT型アレルギークラス2抗原であるBet
v1 ホモログなどと関連があるとのこと。
豆乳アレルギーが花粉アレルギーだとは思わなかった。最近特に増えているとのこと。成人でなぜか女性?今度OASの症例があったら豆乳との関連も聞いてみよう。ハンノキ花粉症はスギと重なっているので忘れがちになる。
末期の乳癌・皮膚癌にはモーズペーストを試そう
第807回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年7月8日)
寝たきり高齢者の末期の乳癌・皮膚癌で、根治手術が行えないケースで、癌からの出血・疼痛・細菌感染による悪臭に対してモーズペースト(Mohs
paste)外用を試み、それぞれの症状に対して有効であり、また癌組織のvolumeの減少にも効果があった。モーズペーストによるchemosurgeryは古くからある方法で、塩化亜鉛と亜鉛化デンプンを主成分とする外用剤による組織硬化作用を用いる方法である。
在宅や介護老人施設で時々遭遇するようになった。切除不可能なターミナルな症例に対しては、今まではお手上げだったが、今後は試してみる価値があると思った。なお、私の出向いている横浜労災病院では、開放創用ダラシンパテという院内製剤があり、特に悪臭には有効とのことだ。
クローン病の皮膚病変とレミケード
第807回日本皮膚科学会東京地方会から(平成18年7月8日)
結節性紅斑と肛門部潰瘍をきたしたクローン病の症例。ステロイド内服で結節性紅斑は消褪したが、肛門部痛と肛門部潰瘍は改善せず。消化器症状も不変であったため、レミケードを投与したところ、潰瘍・疼痛ともに軽快した。
TNFαの抗体による治療がいよいよ皮膚科にも入って来そうである。経過表からはステロイドでいったん消褪した後、再燃した結節性紅斑にもレミケードが効いたようにみえた。
褥瘡のポケット形成は初期型と遅発型がある
第13回皮膚創傷治癒フォーラムから(平成18年6月24日)
褥瘡のポケット形成には2通りがある。初期型は虚血によって生じた壊死組織の融解が原因で、これは起こってしまったことなのでさけられない。その後、経過中に除圧がうまくいかないと、外力がかかるのは皮膚の表面に近い所と、下床の骨や筋に接触している所で、ちょうど砂時計型に虚血状態になるため、遅発型のポケット形成に至る。遅発型は圧迫とずれの力を排除すれば予防が可能である。
確かに同じようなことを経験する。だたし治療はいずれも切除をおこなうということで、かわりはないようだ。
コリン性蕁麻疹の病型分類
第105回日本皮膚科学会総会(平成18年6月4日)
コリン性蕁麻疹は毛孔一致性のものとそうでないものの2型に分類できる。前者は自己血清の皮内反応が陽性で、汗の皮内反応が陰性のものが多い。後者は汗の皮内反応が陽性で、アセチルコリン皮内反応で衛星膨疹を認めるものが多い。
なかなかできない検査だが、機会があったらやってみたいものだ。毛孔一致性かどうかはダーモスコピーが役に立つと思うので、今度見てみよう。
シクロスポリンは食前内服の方が吸収がよい
第105回日本皮膚科学会総会(平成18年6月4日)
ネフローゼ症候群の患者で、通常は食後に内服されるシクロスポリンを食前にすると吸収が改善されたという報告があり、乾癬の患者でもこれを検証した。結果は、全例で内服4時間のの血中濃度−時間曲線下面積、最高血中濃度ともに食前投与が食後投与の1.8倍に増加し、吸収が改善することがわかった。
危険性の問題が気になるところだが、高い薬だし、食前にすることにより減量が可能であれば、その方が良いかもしれない。
老人性疣贅に活性型ビタミンD3軟膏外用が効く
第22回日本臨床皮膚科医会(平成18年5月21日)
顔面の老人性疣贅の治療として、活性型ビタミンD3外用を試みた。1日1から2回を3ヶ月以上続けて外用した症例116例のうち、35例が著効、54例が有効であった。腫瘍は炎症性変化を伴うことなく退縮し、自覚症状を伴うこともないので、高齢者のQOLの改善には有効な方法である。
たくさんあると処置に時間がかかるし、液体窒素では炎症後の色素沈着も気になるところだ。我慢強く続けてくれる患者さんにいいかもしれない。
ダーモスコープの用語に慣れよう!
第7回横浜皮膚悪性腫瘍研究会(平成18年5月18日)
ダーモスコープの所見を読む勉強会。まず、第1段階として、pigment network、aggregated
plobules、branched streak、homogenous blue, pigmentation、parallel
pattern(掌蹠の病変)があるかないかで、メラノサイト病変かどうかを見分け、次に第2段階としてパターン解析を行い、メラノーマ、境界部または複合型母斑、真皮内母斑、Spitz・Reed母斑、青色母斑を鑑別していくという流れが説明された。なお、顔の真皮内母斑では白いドットは毛孔と脂腺で、ネットワークが見えないので、pseudonetworkという。
まだ、用語に慣れていないせいか、忘れる。私的には、purpuraといわれたらこんな臨床、というひらめきが、まだダーモスコープ用語にはないのが現状。勉強が必要だ。
ピチロスポルム特異的IgE抗体は、M.symposialisの抗体である
横浜北部地区皮膚科クリニック懇話会から(平成18年5月17日)
マラセチアがアトピー性皮膚炎の悪化に関与することが指摘されていて、抗真菌剤の内服が併用治療として用いられることがある。コマーシャルでもピチロスポルムIgE抗体の測定が可能であるが、これはM.synposialisの抗体であり、評価には注意が必要である。しかし、M.restrictaおよびM.globosaにも交叉反応があるので少しは役に立つとのこと。
あいかわらず、malasseziaは混乱している。ピチロスポルムIgE抗体を測定して、アトピー性皮膚炎の治療にいかすための指針がほしいところだ。
とびひでのMRSA検出率
横浜皮膚疾患研究会(平成18年5月11日)
東京郊外の基幹病院からの報告。伝染性膿痂疹の細菌培養を行った結果、MRSAが26%に認められた。前医のあり、なしで分類すると、前医がなく直接来院の場合は15%であったが、前医で治療を受けた患児では46%と効率であった。したがって市中での感染例は15%、抗生剤の内服や外用を行ったためにMRSAの頻度が高くなることが明らかになった。
前医のあり、なしでこんなに違うものかと思った。とびひでの抗生剤の使い方はいつも難しいと思う。個人的には毎年、10例に1例ぐらいの割合で、表在性ではない、滲出性紅斑のような伝染性膿痂疹を経験するが、必ずしもMRSAとは関連がないようだ。これについては、どうも細菌を抗原とするDTHのように思うが、解決できていない。
皮膚筋炎を自己抗体で病型にわける方法
第2回皮膚膠原病研究会から(平成18年4月8日)
抗CADM-140抗体陽性例:clinically-amyopatic DMの略。筋炎症状が少なく、急速に進行する間質性肺炎を合併する例が多い。
抗ARS抗体陽性例:Jo-1抗体もこの仲間。皮膚症状を伴わない多発性筋炎の症例に多い。レイノー症状が強く、間質性肺炎が合併する例が多い。
抗Mi2抗体陽性例:皮膚のみの症例で、光線過敏症を伴うことが多い。間質性肺炎なし。悪性腫瘍の合併が多い傾向がある。
皮膚筋炎・多発性筋炎がこのような病型にわけられるとは知らなかった。非常に参考になる発表だった。
SLEの黄色腫型反応
第2回皮膚膠原病研究会から(平成18年4月8日)
SLEの皮膚生検組織には、時にリポフスチンを含む組織球が多数浸潤し、これを黄色腫反応と称する。リポフスチンは、過酸化脂質と蛋白質の複合体で、UVをあてると自家蛍光を発することで確認できる。臨床症状としては萎縮を伴うリベド様、浸潤性紅斑のことが多く、SLEの病勢とも相関する。
組織をよく見るとなるほどと思う症例がある。この臨床だと生検すれば黄色腫型反応があるだろう、という感触が何となくわかってきた。
インターロイキン7と腸管免疫
第120回神奈川県皮膚科医会例会から(平成18年3月5日)
IL-7は骨髄細胞や胸腺細胞から分泌され、胸腺細胞の増殖に関与するる糖タンパクであるが、これが腸上皮細胞からも分泌されていることが確認され、IL-7の欠損マウスではパイエル板が形成されないことがわかった。腸上皮が周囲の免疫環境を自ら整えているということである。また、IL-7のover
expressionでは腸炎が発症、炎症性腸疾患との関連が考えられた。なお、皮膚の表皮細胞も同様にIL-7を分泌しているとのこと。
皮膚も周囲の免疫環境を自ら調節していることは想像できる。疾患との関連はどうなのだろう。関節リウマチと同様の慢性関節炎もIL-7のover
expressionで発症するらしい。今後の展開を注目しておこう。
スギの雄花の落ち方には3通りある
中予アレルギー性鼻炎懇話会から(平成18年2月23日)
スギの雄花が落ちるのは、以下の3通りがある。1) 2月から4月の開花して花粉を放出したあとに落下する。2)
8月から5月、特に晩秋から冬季にかけて、開花せずに緑色のまま落下する。3) 古くなった暗褐色のものが、落下する。
実際、2004年の11月にスギ花粉の飛散が観測されたのも2)のためか。秋にスギ花粉症があってもいいようだ。
アクトスはアディポネクチンを上昇させる
神奈川県高血圧・糖尿病を考える会から(平成18年2月22日)
メタボリックシンドロームは、内臓脂肪の蓄積、インスリン抵抗性、糖代謝異常、脂質代謝異常、高血圧、凝固亢進などが集積して、心筋梗塞、脳卒中などの動脈硬化性疾患発症のリスクが高い。この疾患では、正常脂肪細胞が産生するサイトカインである血中アディポネクチンが低下していることがわかっている。インスリン抵抗性改善剤であるアクトスは、大規模なprospective
studyで2型糖尿病のハイリスク患者で総死亡、大血管イベントの発症を抑制することが証明されたが、糖尿病患者で血中アディポネクチンを上昇させる働きがあること、また血管内皮に対する直接的な抗動脈硬化作用を有することがその理由である。
内科の話もたまにはいいものだ。糖尿病治療もずいぶん変わってきたと感じた。アクトスはおもしろい薬だ。necrobiosis
lipoidicaや下腿潰瘍などの皮膚疾患の治療薬にもなるかもしれない。
PNとPNCを皮膚症状で鑑別するには
第4回関東脈管懇話会から(平成18年2月19日)
PNCは主として皮膚の小動脈に血管炎を生じ、皮内結節を初発症状としてヘモジデリンによる色素沈着、atorophie
blanche、潰瘍、summer ulcerationなどの皮膚症状が主体で、時に筋、末梢神経の症状をきたす疾患である。これに対して、PNはそれに加えて、生命関わる主要な臓器(心、中枢神経、肺、腎)にも病変をきたす。病理学的にはPNCの方がPNより肉芽反応が強い。PNCよりPNを考える必要がある皮膚症状は、症状が多彩である場合、出血性の変化が強い場合、壊疽があげられる。
壊疽になりそうになったら注意。心、中枢神経、肺、腎を調べないといけない。
食物のパッチテストで食物アレルギーを診る
第29回小児皮膚科セミナーから(平成18年2月18日)
食物アレルギーを多く診ている小児科からの報告。食物アレルギーのガイドラインを日本小児アレルギー学会(http://www.iscb.net/JSPACI/)、厚労省(http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/index.html)がまとめている。この中に、食物アレルギーの関与する乳児アトピー性皮膚炎の記載もあるが、検討した乳児のアトピー性皮膚炎の症例のうち、70%では食物抗原による即時型反応がみられ、30%では遅延型反応が陽性であった。パッチテストの試薬はキューピーが提供した乾燥粉末食物抗原を用いて、48時間後に判定したとのこと。
食物パッチが陽性ということは何を意味しているのか。IgE-dependentの反応なのか、食物によって口のまわりなどがかぶれたことのある乳児で陽性になるのかなど、疑問もあるが、非常に興味深い。食物アレルギー検査が保険適応になったこともあり、近々食物パッチテスト用のスタンダード抗原が試薬として提供されるらしい。皮膚科医がしっかりと反応を見る必要があるだろう。個人的には乳児の湿疹では、アトピー性皮膚炎と自信を持って診断できていないので、今後は是非やってみたいと思った。
皮膚科医はシューフィッターと仲良くしよう
第1回神奈川フットケア研究会から(平成18年2月16日)
特に糖尿病で問題になるフットケアの話題。体重による圧迫、動静脈やリンパ系のトラブルが生じやすいこと、靴によるむれによって、足は特別なケアが必要である。鶏眼・潰瘍などのトラブルに対しては、シューフィッターに適合靴を使ってもらう必要がある。シューフィッターの所在は「足と靴と健康協議会」のHP(http://www.fha.gr.jp/)で検索できるとのこと。
近くにいないと紹介できないのが問題だ。最上級のスキルを持ったいわゆるマスターは全国に13名しかいないらしい。
パルボウイルス感染症後の慢性疲労症候群
第69回日本皮膚科学会東京支部総会から (平成18年2月12日)
慢性疲労症候群(CFS)は、日常生活を妨げる重篤な疲労(通常6カ月以上継続)にリンパ節の腫大、咽頭痛、頭痛、関節痛、筋肉痛、微熱のほか、認知障害、睡眠障害を伴う疾患であるが、ウイルスの持続感染や再活性化が発症誘因と考えられている。経過を追った154例の伝染性紅斑患者のうち、2名がCFSを発症、いずれも女性であった。
成人女性のパルボウイルス感染は、膠原病的な変な症状がおこる。妊娠の有無にかかわらず注意しないといけないし、経過を追う必要もありそうだ。治療、CFSの発症予防はどうしたらよいのだろうか。
喫煙で誘発される全身性湿疹
第69回日本皮膚科学会東京支部総会から (平成18年2月12日)
禁煙目的のニコチンパッチの部位に接触皮膚炎が生じて、その後、喫煙すると全身性の湿疹をきたすようになってしまった、systemic
contact dermatitisの症例報告。1日5本に減らすと改善して、喫煙量によって湿疹が悪化するという。
湿疹が出てはたまらんと言うことで、結果的には禁煙に結びつくかもしれないが、ちょっと気の毒だ。これから多くなるかもしれないので、注意していこう。
後頭部のブラシュコラインは渦巻きだった
第805回東京地方会から(平成18年1月21日)
汗孔角化症の症例報告。項部をやや斜めに上向する線状の汗孔角化症であった。線状汗孔角化症は母斑性と考えられ、表皮母斑などと同様、ブラシュコラインに沿って生じる疾患である。示されたブラシュコラインの説明図をみると、後頭部は、なんと渦巻きであった。
後頭被髪部の症例報告を探してみよう。
透析患者に生じた帯状疱疹の治療には注意が必要
神奈川県皮膚科医会広報委員会から(平成18年1月15日)
HD中の患者に生じた帯状疱疹の治療で、バルトレックスを添付文書にしたがって1回1000mgを使用したところ、ふらつき、ろれつがまわらないなどの精神神経系の副作用が出現した。HD中の患者では、推奨容量以下の500mgの単回投与でも同様の副作用の報告があって、添付文書の量では明らかに過量であると考えられる。
重要な報告である。HD中の患者では、血中濃度の上がりにくいゾビラックスの方が安全かもしれない。なお、血中アシクロビル濃度の測定には血漿が必要で、SRLで測定可能とのこと。副作用が起こったら血漿を採ることにしよう。
刺激性皮膚炎の評価は難しい
第22回神奈川皮膚科免疫アレルギー疾患懇話会から(平成18年1月7日)
パッチテストでアレルギー反応と刺激反応を見分けることは、本邦基準に沿った臨床教育のため、信頼性、再現性が高まってきた。しかし、皮膚刺激性の評価についてはさらに高いスキルが必要とされ、0から6までの7段階のスコアリングを試みたが、専門家の間でもばらつきがあるとのこと。また、肉眼所見と写真での評価の間にも、相違があって、今後の標準化が待たれるところである。
皮膚刺激の評価のためのパッチテストの際には、まず濃度の調整をどうするかで悩む。開業医の日常診療では、希釈系列をたくさん作ることや、正常人コントロールで行うことも容易ではなく、ついつい遠慮してしまうのが実情である。
retention hyperkaratosisとproliferation hyperkeratosis
第3回相模原皮膚科セミナーから(平成17年12月3日)
扁平苔癬など、基底細胞がターゲットになる疾患では、角化のスピードにブレーキがかかるため、角層剥離遅延が生じて、顆粒層の肥厚を伴う角化が生じ、これをretention
hyperkaratosisと呼ぶ。反対に、乾癬のように表皮細胞全体がターゲットの疾患は、角化のスピードが速くなるために、顆粒層の喪失した角化を生じ、これをproliferation
hyperkeratosisと呼ぶ。
病変の経過を考えると納得がいく。acneのcomedo形成の時にもretentionという言葉が使われるが、意味は若干異なるようだ。
自己免疫疾患のステロイドパルス療法中は血中IgGをモニターするとよい
第3回相模原皮膚科セミナーから(平成17年12月3日)
自己免疫性水疱症の治療の話。ステロイドパルス療法を施行する際には、non specificな血清中IgGをモニターするとよい。ステロイドパルス療法施行の2−3週後になると、血中IgGは20−30%低下する。この減少の傾向と、自己抗体のtiterが解離していれば、効果があったことになる。IgGと自己抗体のtiterの変動に差がない時には、2週間後にもう1回ステロイドパルスを行ってみる。1回目が無効でも、2回目に有効なことはまれではない。
なるほど、今後の治療の指針になる話だった。
IVRに伴う頭部の脱毛斑
横浜皮膚疾患研究会から(平成17年12月1日)
くも膜下出血のために、血管造影とintervensionを計9時間半にわたって施行、後頭から側頭にかけて4Gy、一部は8GyのX線の照射を余儀なくされた。施行後3週間後ぐらいから脱毛を生じてきた。4Gyの所は3ヶ月後から徐々に発毛、8Gyのところは脱毛斑として残った。難しいことができるようになった反面、処置に時間がかかるようになっているIVRの現状があるようだ。しきい線量が3Gyで一時的な脱毛斑、7Gyで永久脱毛斑になるということである。2004年にはガイドラインができて、皮膚障害の追跡調査を行うことを勧告している。
生検組織には慢性放射線皮膚炎の像はなく、脱毛の原因が放射線とは言えないという意見が多かったが、圧迫などの他の要素もなく、やはり被爆が原因ではないかと思った。皮膚科でフォローすることになるので病院勤務では重要かも。
FOYの静注による皮膚潰瘍と、遅発型皮膚障害
横浜皮膚疾患研究会から(平成17年12月1日)
不明熱で入院中の患者。治療としてFOYが右前腕から投与された。そのしばらく後に静脈に沿って皮下硬結。中央は潰瘍となった。ステロイド局注で加療し潰瘍は一旦消失、硬結もやや改善。2ヶ月後、FOYの投与は行っていないが、再び同じ部位に硬結と潰瘍が出現。遅発型の皮膚障害と考えられた。最初の硬結と潰瘍は、薬剤の血管内皮に対する障害で、若干の薬剤がにじみ出て、皮膚に損傷を与える機序。遅発型は、1〜2ヶ月後に生じる皮膚障害で、FOYのパッチテストで陽性となる例もあり、生検部の組織で好酸球が多いので、アレルギー性の機序も考えられると結論づけた報告もある、ということであった。
何もしないのに何ヶ月も後に、同じ部位に潰瘍が再発するのは納得できない。潰瘍や硬結の部分に薬剤が残っていて、その場でじわっと感作が成り立つと言うこと?アレルギーではないと思うが、、。
白髪は太い!
第13回毛髪科学研究会から(平成17年11月26日)
正常人の白髪の統計である。白髪のある人の全体を通してみると、後頭部は男女差なく頭頂部や側頭部に比べて白髪が少ない。個々を抜いて調べてみると、白髪はふつうの毛に比べると太く、のびが早く、成長期毛率が高かったが、60μm以上の太さの黒い毛と比較するとそれぞれについての有意差はなくなり、つまり、細い毛には白髪が少ないということであった。なお、白髪はふつうの毛よりもやや平べったい傾向があった。
白髪だけがピンとはねることがあるのは、ふつうの毛より扁平だからだということがわかった。自分の髪を見ても、細い白髪はあまり見かけない気がする。おもしろい観察であった。
デスモグレイン4の遺伝子変異による連珠毛を伴う乏毛症
第13回毛髪科学研究会から(平成17年11月26日)
先天性乏毛症の症例報告。ちぎれやすい毛で、毛孔性丘疹と連珠毛(monilethrix)を伴うがhair
keratin遺伝子は正常。しかしDSG4遺伝子の病的変異が見つかった。DSG4は正常のhair cortexに分布しているので、ここでの細胞接着が不十分なために、毛の発育に異常をきたすのであろうとのこと。DSG4は表皮顆粒層にも分布しているが、落葉状天疱瘡のような紅斑・水疱などは見らず。国外の報告ではひげや体毛には影響しないという。atrichia
with papular lesionsという先天性疾患にも似ているが、完全な無毛症ではないことが鑑別点。
なかなか見る機会はないが、連珠毛や先天性乏毛症の病因解析がここまで進んでいるとは知らなかった。hairに異常をきたす遺伝性の疾患は、奥が深くて難しい。
萎縮性脱毛症の分類
第13回毛髪科学研究会から(平成17年11月26日)
萎縮性脱毛症は、最近ではcentral centrifugal scarring alopecia(CCSA)という名称で包括され、この中にpseudopelade、folliculitis
decarvans、follicular degeneration syndromeなどの名称で呼ばれていた疾患が含まれる。組織所見の違い(炎症の多い・少ない、膿疱がある・ない)は生検した時期や部位が違うためで臨床的には明確に鑑別できない。また、眉から始まり上行して前頭部髪際の脱毛を来す、frontal
fibrosing alopecia(FFA)という疾患の報告があった。
CCSAなどという難しい名前は使わず、萎縮性脱毛症や瘢痕性脱毛症でいいだろう。FFAについては心当たりの症例があるので、今度よく見てみよう。これは何で起こるのだろうか。
知っていないとお母さんに説明できない、忘れそうな病名
第21回日臨皮三支部合同学術集会から(平成17年11月23日)
小児期、特に新生児に見られる、生理現象に近い皮膚の疾患(変化)のまとめである。
・新生児生理的落屑(胎児期の周皮の落屑で、生後数日後まで見られる)
・陰嚢生理的色素沈着(約30%にあって、数ヶ月で正常になる)
・sebaceous hyperplasia of the nose in newborn(病名の通り、鼻尖部の脂腺増殖)
・大理石様皮膚(機能的な血管の変化)
・infantile perianal pyramidal protrusion(肉芽腫性炎症で自然に消褪する)
・Epstaein's pearl(歯肉の角質嚢腫で自然治癒)
・neonatal adonexal polyp of skin(乳輪部に単発するmilium)
・新生児中毒性紅斑(膿疱に好酸球が多いのが特徴)
・traumatic anserine folliculosis(学童期のあごの毛孔性丘疹、別の名称で既出)
アメリカ式の名前に占領されている。protrusionはでっぱり。anserineはガチョウ?
尿膜管遺残の盲点
第21回日臨皮三支部合同学術集会から(平成17年11月23日)
尿膜管(urachus)は臍と膀胱頂部をつなぐ線維筋性索状構造で、発生学的にはアラントイス管に由来し、その退縮が不完全である場合に尿膜管遺残がおこる。その全長が開存すると尿膜管開存、膀胱側の一部が遺残すると尿膜管憩室、臍側の一部が遺残すると尿膜管洞、尿膜管中央の嚢胞状拡張を尿膜管嚢腫(urachal
cyst)とよぶ。このうち尿膜管嚢腫がもっとも頻度が高く、通常は無症状であるが、時に腹部違和感、腹痛、臍からの出血、皮下膿瘍、膀胱炎様症状、血尿・膿尿を来すので臍の皮膚病をみたらこれも念頭に置く必要がある。
実は症例の経験がなく、見落としているかもと思って、焦った。ヘソの周りには注意しよう。
EBERは痂皮の中でも局在が確かめられる
第21回日臨皮三支部合同学術集会から(平成17年11月23日)
慢性活動性EBウイルス感染症のスペクトラムの話。種痘様水疱症、蚊刺過敏症、血球貪食症候群などを見た際に重要な検査として、血中のアズール顆粒をもったLGL(large
granular lymphocyte)の確認、再活性化に伴うEBウイルス抗体価の上昇の有無、EVウイルスのDNAコピー数、EBER(EBV-encoded
small nuclear RNA)の局在がある。EBERは皮膚生検を施行しなくても、種痘様水疱症の痂皮の中にも存在が確かめられ、1〜2ヶ月間は常温で保管しても検出できる。疑わしいときには、痂皮を剥がして、テープで固定し、岡山大学に郵送すれば、検査をやって下さるとのこと。
種痘様水疱症では、水疱の時期をとらえるのはなかなか難しく、しかも子供に多いことを考えれば、痂皮を剥がすだけの処置ですむということは、大きなメリットだと思った。
superficial white onychomycosisと認知症
第112回東京地方会神奈川分会から(平成17年11月19日)
爪甲が膜様に白くなる爪真菌症の異型で、爪甲の肥厚を伴わない。療養型病床に入院している認知症を伴う患者64名のうち、全体の40%にみられ、手の爪に多かった。この施設では手の爪白癬の81%、足の爪白癬の9%がこの病型(SWO)であった。白く混濁した部分は表面からスライドグラスなどで容易に剥離でき、KOH直接鏡検では菌糸とともに分節胞子が多数みられるのが特徴。培養ではT.mentagrophytesがT.rubrumより多く、通常の爪白癬と反対である。削って外用するだけで改善するので抗真菌剤内服の必要はない。
認知症があることや拘縮があって手を握ったままにしていることと関連があるかもしれない。時々高齢者で見かけるが、私の往診している特養や老健では、全体の10%以下だと思う。これについては機会があったら回診をして、しっかり調べてみよう。
外用ステロイドの吸収に関する話題
第112回横浜市皮膚科医会から(平成17年11月12日)
角層にはreservoir(レザバー)機能があって、外用したステロイドは5日間はそこにとどまるが、その後は角層と共に排泄される。この間吸収されるステロイドの量は前腕で約1%である。ステロイドはもともと脂溶性なので、脂腺が多いところは吸収が良い。吸収率が部位によって差があるのは1967年にMeibachが報告した通りだが、C14でラベルし、アセトンに融解したステロイドを外用したのち、5日間蓄尿中に排泄されたC14を測定した結果であり、その後追試は行われていない。また副腎抑制を来すにはどのくらいの外用が必要かというと、strongestで1日10g、very
strongの単擦では1日30g、very strongのODTでは1日10gが目安とのこと。
5日間そこにとどまるというのは初耳だった。湿疹でも軽い場合は5日に1回塗ればいいと考えていいのだろうか。確かに光かぶれをおこすケトプロフェンでも、もっと長く表皮に残っているようだし、皮膚の生理も簡単ではない。
「アフタ性潰瘍」はまちがった使い方である
横浜労災病院症例検討会から(平成17年11月9日)
アフタは直った後に瘢痕にならない、つまり粘膜のびらんと定義される。これに対して粘膜でも潰瘍は瘢痕を残す。したがってアフタ性潰瘍という言葉はまちがい。皮膚に置きかえると、びらん性潰瘍になってしまう。また口内炎は口腔内の炎症の総称で、ヘルペス性歯肉口内炎などは、アフタ性口内炎を来す疾患と呼んでよい。クローン病では腸外症状として口内炎が生じるが、この場合はアフタよりも潰瘍が多い。
自分で使う事はないが、確かにたまに耳にする用語である。定義をしっかりとすれば、なるほど、理解しやすい。
APSは家族によく説明しておくことが大事
第1回皮膚膠原病研究会から(平成17年11月5日)
SLEに合併した、抗リン脂質抗体症候群の症例。皮膚症状としては手掌の皮内結節があり、組織学的に血栓が認められた。経過中、家族が患者の行動や言動が普段と若干異なり、やや反応が遅いことに気づいたため、大事をとって入院したが、その直後に急性腹症を発症。APSが原因で生じた、上腸間膜動脈閉塞症が原因だった。APSの患者に生じる急性動脈閉塞症は、SLEなどの合併症の増悪とは関係なく、また、APSの検査異常(β1GPT抗体など)とも平行しないので、余地が難しい。しかし、頭痛、数分程度の半盲、めまい、さらに不定愁訴が初発症状となることがあり、今回の症例のように、何か普段と違う、ということが初発症状のこともあるので、家族によく説明をして、日常を管理することが大変重要であると思われた。
家族が偉い。家族に何か変だったらすぐ連れてきて、というムンテラをしていた医者も偉い。
抗CD20抗体(リツキシマブ)によるループス腎炎治療
第1回皮膚膠原病研究会から(平成17年11月5日)
ステロイド、シクロスポリンなどの免疫抑制剤に反応しない中枢神経症状とループス腎炎をともなったSLEに、B細胞リンパ腫の治療薬であるリツキシマブを投与して、劇的に症状が改善した症例のレポートが出たという情報。B細胞をリセットすることで、自己抗体の産生に抑制がかかったということであった。SLEの新しい薬として期待されており、欧米ではすでに治験が進行中とのこと。
皮膚科ではSLE以外にも多くの自己抗体と関連する疾患がある。ステロイドや免疫抑制剤で管理できない水疱症にも効果がありそうで、今後注目していきたい。
マラコプラキアって何?
第57回日本皮膚科学会西部支部学術大会から(平成17年10月30日)
腰部の深いところに生じた膿瘍を考えた高齢の女性。切開で排膿を認め、培養では大腸菌が陽性。また周囲の組織に、豊富な細胞質を持つ組織球の反応性増殖を認め、特徴的なVon
Hansemann細胞の出現とその胞体内にPAS染色陽性のMichaelis Gutmann小体が認められ、マラコプラキアと診断した。マラコプラキアは膀胱、前立腺などの泌尿器科領域に多く、今回のように後腹膜に生じることもある。慢性膀胱炎を繰り返す高齢女性に多い。組織で認められる空胞化した細胞質を要する組織球が特徴で、これは尿の細胞診でも検出可能らしい。
初めて耳にした。皮膚科領域では聞いたことがない。確かに組織は1回見たら忘れないほど特徴的。ただし大腸菌の感染が証明され、しかも実際に排膿があるにも関わらず組織に好中球がないのが納得できなかった。
血管炎のようで血管炎でない疾患
第57回日本皮膚科学会西部支部学術大会から(平成17年10月30日)
血管炎診断の条件としては1)好中球の核破潰を伴う浸潤と出血、2)血管壁のフィブリノイド変性の両方が必要。血管壁のヒアリン変性が主体で、Leucocytoklasie
がない場合や、血管内腔および壁のフィブリン沈着が主体で、Leucocytoklasie がない場合、また、強い線維素性炎症で、Leucocytoclasieがあるが、フィブリノイド変性のない場合は血管炎に似るが、血管炎ではない。こういった病理組織を呈する疾患に、livedo
racemosa、SLE、PSS、RA、心粘液腫、亜急性心内膜炎(Osler結節)、コレステリン結晶塞栓症、多血症、血小板増多症、抗リン脂質抗体症候群などがある。
理屈ではわかっていても、臨床的には大変苦労する分野である。開業医としても色々な鑑別疾患に対して充分な検査をしていかなければならないと思った。
ふつうの腱黄色腫ではない、脳腱黄色腫
第57回日本皮膚科学会西部支部学術大会から(平成17年10月30日)
小児期からアキレス腱部に黄色腫があった。それに加えて精神発達遅延、錐体路症状、小脳機能異常、若年性白内障がある成人例。検査では血中コレステロール値はなんと正常。そのかわり血中コレスタノールが異常高値で、これだけで脳腱黄色腫症と診断できる。脳腱黄色腫症はsterol
27-hydroxylase遺伝子 (CYP27)の変異が原因で生ずる常染色体劣性遺伝の疾患。コレスタノールが皮膚・腱・脳・目・肺に沈着するのが特徴で、腱黄色腫と知能低下は学童期前半から、小脳症状は思春期ごろから生じる。
経験がなく、知識としても持ち合わせていなかった、知っていそうで知らない、古そうで新しい病名であった。
ATLはTregの、セザリー症候群はTh2の腫瘍である
第1回神奈川皮膚アレルギー疾患研究会から(平成17年10月22日)
T細胞のマーカーのおさらい。ケモカインレセプターの解析が進み、CD4陽性T細胞(Th)は、表面マーカーから以下の通りに分類されるようになった。
Th1:CD7陽性、CXCR3陽性。Th2:CD7陰性、CCR4陽性。Treg:CD28陽性、CTLA-4陽性、Foxp3陽性、G1TR陽性。T細胞の増殖する疾患を、細胞のプロフィールから分類すると、セザリー症候群はTh2の腫瘍、ATLはTregの腫瘍であると考えられる。
最近はずいぶんと進んだものだ。リンパ腫だけはどうも苦手で、なかなかついて行けない。大学病院にお任せしよう。
抗酸菌の増殖至適温度は、菌がどこから来たかを知っておく
第4回横浜デルマカンファレンスから(平成17年10月20日)
抗酸菌は、もともとの宿主が何かを考えると、培養の至適温度がわかる。ヒト型結核菌(M.tuberculosis)はもともとヒトを宿主としているので37℃、海水魚についていて皮膚に肉芽腫をおこすM.
marinumは海水なので30℃、24時間風呂で繁殖し、皮下膿瘍を生じるM.aviumはもともとは体温の高いトリが宿主なので、40℃。
なるほど、わかりやすい。インキュベターを置くところがないので、抗酸菌培養までは自院ではしないが、検査の指示を出すときに、役に立つはずである。
静脈血栓塞栓症と周術期のケアについて
メディカルフォーラム2005から(平成17年10月15日)
肺血栓塞栓症(pulmonary thrombo-embolism: PTE)と深部静脈血栓症(deep
venous thronmosis: DVT)はまとめて、静脈血栓塞栓症(venous thrombo-embolism: VTE)と呼ばれることが多い。古くは横綱玉ノ海が虫垂炎の術後の肺梗塞で死亡、少し前には、いわゆるエコノミークラス症候群(ロングフライト症候群)でサッカー日本代表の高原選手が肺梗塞を発症。また、昨年の新潟県中越大震災で車内での長時間生活を余儀なくされた方でも問題になった。最近ではe-thrombosis(電子血栓症)といって、オフィスで長時間座っているだけでもVTEの危険とは背中合わせらしい。しかし、もっともVTEが多く発生するのは、危険因子が重複しやすい病院内で、ことに周術期である。これを受けて、2004年にはVTE予防ガイドラインが公表された。最近の病院の手術現場では、麻酔科医、循環器内科医が術前のリスクレベルの評価を行い、それに応じて、弾性ストッキングや間欠的空気圧迫法(IPC)、低容量未分画ヘパリン投与(LDUH)などを行うのが常識になっている。
開業医はこういうことを知らないから、よくない。ガイドラインにさっそく目を通した。
タクロリムスにはMalasseziaの増殖抑制効果がある
第49回医真菌学会総会から(平成17年10月6日)
Malasseziaがアトピー性皮膚炎の湿疹、特に顔面の病変に対して、増悪因子になることが知られている。ケトコナゾールクリームの外用やイトラコナゾール
100mg/日の4週間内服で、Malasseziaの菌量の減少、Malasseziaに対する特異的IgE抗体価の減少と平行して臨床症状もかなりの割合で改善した。また、タクロリムス軟膏にはMalasseziaの増殖抑制効果があり、特にケトコナゾールやイトラコナゾールと相乗的に作用し、MICを低下させることが示された。
癜風にタクロリムスを外用すると、症状が改善するかどうか。脂漏性皮膚炎でタクロリムスを使用してdemodexが増殖し、rosaceaを生じた経験がある。その辺がよくわからないところである。
Imiquimodの使用経験
北里大学特別講演会から(平成17年9月22日)
ドイツ人Proffesorの講演。日本ではまだ使われていないImiquimodクリームの使用経験の話。この薬剤はtoll-like
receptor(TLR)に直接結合し、免疫担当細胞を活性化させる働きがあり、尖圭コンジローマの治療薬として欧米ではすでに用いられている。しかしコンジローマ以外のウイルス性疣贅や伝染性軟属腫にはもう一つ効果が明らかではない。しかし、日光角化症と表在性の基底細胞上皮腫には有効で、単純に外用するだけなので、特に高齢者では手術に代わる有効な治療法である。
日光角化症に対する効果は5FU軟膏と同等とのこと。個人輸入で入手は可能なので、機会があれば使用してみたい。
円形脱毛症は「免疫学的特権」の破綻によって生じる
第21回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成17年7月21日)
免疫学的特権部位(immunological privileged site)とは、容易に自己に攻撃されることがないように、免疫学的に保護されている部位のことをさし、1)古典的MHC-1分子を発現しない、2)TGF-βの恒常的発現がある、3)Fas-ligandを常時発現しているという特徴を持ち、脳、精巣、卵巣などがこれにあたるが、正常毛包もこれらの特徴を備えている。円形脱毛症ではこの「免疫学的特権」が何らかの理由で破綻し、自己のeffector細胞(CD4+-killer
cellか?)によって攻撃を受けるために脱毛になってしまう、という可能性がある。
ちょっとわかりにくいが、頭の片隅に入れておこう。確かに寒いところのほ乳類ではhairも生命の維持に必要な大事な臓器といえるかもしれない。
乾癬がなおってしまうってどんな時?
北里大学皮膚科同門会講演から(平成17年7月18日)
全身性汎発性の乾癬が完全緩解した症例の報告でそれぞれ、1)加齢によって自然軽快した症例。2)乳癌の手術後に改善した症例。3)心筋梗塞・大動脈瘤で人工血管バイパス術を受けた後に改善した症例。4)生活習慣病のコントロールを厳重に行った症例。5)病巣感染の除去によって改善した症例。6)膿疱性乾癬から紅皮症化したあとに改善した症例。7)合併するnon-Hodgikin
lymphomaに骨髄幹細胞移植を行った症例であった。
大きなストレスがかかった時に乾癬が消えてしまう場合があることは全く予想外であった。乾癬は完治しないということが間違っている証拠で、今後も長く患者さんたちとつきあっていきたいと思った。
蕁麻疹と蕁麻疹の合併!
第35回日本皮膚アレルギー学会から(平成17年7月17日)
数ヶ月前に公表された蕁麻疹・血管性浮腫の治療ガイドラインでは、「特定の刺激ないし負荷により、皮疹を誘発できる蕁麻疹」を可能な限り鑑別していくという方向性が再確認された。これに伴って、特発性の蕁麻疹に、特定誘因のある蕁麻疹が合併することが多いことが報告され、特に、慢性蕁麻疹+機械的蕁麻疹、慢性蕁麻疹+アスピリンイントレランスの合併は多く、アスピリンイントレランスは慢性蕁麻疹の30%に合併しているということであった。
慢性蕁麻疹の患者さんはたくさんあるが、個人的にはアスピリントレランスの経験は少ない。ちゃんと悪化因子を聞いていないからだろう。もっと問診をしっかりしないといけないと思った。
重症薬疹でDLSTが陽性となる時期
第35回日本皮膚アレルギー学会から(平成17年7月17日)
Stevens-Johnson症候群(SJS)やdrug-induced hypersensitivity
syndrome(DIHS)などの重症薬疹では、再投与試験が難しく、DLSTが原因薬剤の被疑薬検索に用いられるが、陽性となる期間は一時的であり、この時期を逃すと陰性になってしまい、原因薬剤の同定ができなくなってしまう。SJSでは発症後2から3週までの間、一方DIHSでは病初期には陽性にならず、発症後1ヶ月以上たってから陽性となる。
SJSとDIHSの免疫学的違いとは何だろう。薬疹も実に奥が深い。
マイクロリベド(micro-livedo)をはやらそう
第4回関東脈管懇話会から(平成17年7月10日)
マイクロリベドは主として手掌・足蹠あるいは手指・足趾などに部分的、限局的にみられる、非閉鎖性のリベドで、末梢の皮膚小動脈ないしそれよりも小さい血管の閉塞性変化を示す状態で、血栓(抗リン脂質抗体症候群など)や塞栓(コレステロール結晶、左房粘液腫、高γグロブリン血症など)による閉塞性の循環障害、あるいはこのレベルの血管炎に基づく変化で、臨床的にlivedo
racemosaとまではいえない皮膚症状を表す、よい症状名である。
元々はAPSの皮膚症状として用いられたようだ。今後さらに、病理学的変化に基づく定義や関連する疾患を整理していってほしいところだ。
トリコフィチン反応からみた真菌と皮膚免疫
第54回神奈川医真菌談話会から(平成17年6月18日)
アトピー性皮膚炎患者にみられる足白癬は、角化型・鱗屑型が多く、小水疱型は少ない。一般的に足白癬の患者でトリコフィチン反応を行うと即時型反応が陽性の人と遅延型反応が陽性の人があり、再発性で角化型の人は即時型が陽性で、炎症の強い人では遅延型が陽性である。アトピー性皮膚炎の患者の多くは、即時型が陽性で遅延型は陰性である。
知らなかった。実際のところ、手に入らないので検査ができないのが残念だ。T.tonsurans感染症でも炎症の強いタイプと、弱いタイプがあるが、是非やってみたいと思う。
癜風が変わってしまった
第54回神奈川医真菌談話会から(平成17年6月18日)
Malasseziaは好脂性酵母でヒト皮膚、特に脂漏部に高頻度に定着している。real-time-PCRを用いて菌叢を解析すると、正常皮膚でも、アトピー性皮膚炎患者でも、脂漏性皮膚炎でも、癜風でもM.
globosaとM. restrictaが多く検出され、疾患による菌叢の違いは明確でない。ただし、病変部とそうでないところを定量的な非培養法によって比較すると、脂漏性皮膚炎の病変部ではM.
restrictaが他の菌種に比べて多く、癜風ではM. globosaが多いとのことであった。したがって、癜風はM. globosaが主因となって発症する疾患であるといえる。なお、M.
furfurは正常でも疾患においてもマイナーで検出率の低いMalasseziaである。
Malasseziaの分類が変わってしまって、すっきり理解できないところがある。いくつもの菌種が検出されてしまうのは、テープストリップで病変部以外の菌も拾っているからではないだろうか。一つの病変は1種類の菌で成り立っていてほしいし、癜風という疾患は、病変部をこするとたくさん鱗屑がとれて、鏡検すると菌糸がたくさん見える皮膚病である、というところは変わってほしくないと思う。ちなみにミコナゾールシャンプーはコラージュ・リストリクタに名前を変えないといけないかもしれない。
ハチ刺されにはポイズンリムーバーが効く
第21回日本臨床皮膚科医会から(平成17年6月12日)
ハチ毒によるアナフィラキシーの講演の中で、刺された直後に試みて損にはならない処置ということで紹介された。何のことかと調べてみると陰圧をかけて毒を吸引する道具で薬ではなかった。山歩きには必需品で、キャンプ用品を扱うネットショップでも購入が可能であるhttp://www.iizukaco.co.jp/catalog/index.html。
備えあれば憂いなし。一つ購入しておこう。
ダウン症に伴うElastosis perforans serpiginosa
横浜皮膚疾患研究会から(平成17年6月2日)
大腿伸側に典型的な発疹を認めた症例の報告。Elastosis perforans serpiginosaは弾性線維の変性をきたす疾患、特にpseudoxanthoma
elasticumに伴うものが有名だが、ダウン症(trisomy 21)に伴うこともある。ダウン症では四肢に多く発生し、男性に多い傾向がある。
今後は注意して見ていく必要があると思った。ダウン症でも弾力線維に変性をきたす事ががあるということだろう。
nevus spilus上のSpitz's nevus
横浜皮膚疾患研究会から(平成17年6月2日)
Spitz nevusは若年にみられる後天的な母斑細胞性母斑であるが、これが顔面にあった先天性の扁平母斑上に生じた症例の報告である。黒褐色のコニーデ型の結節で中央のへこみは増殖の早さを物語っている。組織では左右対称性の細胞浸潤・増殖で、melanomaと鑑別できた。ドイツの統計によれば。946例の扁平母斑上にSpitz
nevus'sが3例、melanomaが2例生じたとのことであった。
Spitz's nevusも診断が難しい疾患だと思う。特に最近は、若年者のspitzoid melanomaという疾患も提唱されていて、注意が必要だと思われた。
フェリチンは血球貪食症候群のマーカーである
第799回日本皮膚科学会東京地方会から(平成17年5月21日)
血球貪食症候群では血中のフェリチンが増加し、病勢を反映するマーカーとなる。鉄の代謝を考えたとき、体内に入った鉄は腸管から吸収され、まずフェリチンと結合し、肝で蓄えられる。フェリチン鉄は血清鉄の減少があると、ヘム合成に利用されるので、貧血の最初の過程はフェリチンの減少から始まる。反対に血球貪食症候群では、網内系への鉄貯留や、肝・骨髄などの細胞破壊による血中への逸脱血中フェリチンが上昇すると考えられている。
ところで、診断基準にもあるが成人スティル病で血中フェリチンが上昇する理由は何だったか?
pollen-food allergy syndrome
横浜皮膚科臨床懇談会から(平成17年5月19日)
果物を食べたあとに口腔・咽頭がイガイガする口腔アレルギー症候群(OAS)の多くは、花粉によって感作された個体に生じる交叉反応で、pollen-food
allergy syndromeないしclass 2食物アレルギーと呼ばれている。北海道で有名なシラカンバ花粉症に合併するリンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、メロン、キウイ、スイカのOASが多い。関東のOAS患者ではハンノキ花粉によって感作されている頻度が高いようだ。シラカンバ以外にも、スギ・ヒノキ→トマト、カモガヤ・オオアワガエリ→トマト・メロン・スイカ、ブタクサ→メロン、ヨモギ→リンゴ・キウイの交叉反応が指摘されている。一方、食物そのもので感作された場合をclass
1食物アレルギーと呼び、ラテックスアレルギーを合併することが多く、latex-fruit syndromeと呼ばれる。クリ、アボガド、バナナなどで生じ、重症例が多い。
OASではハンノキの特異的IgEを測ってみよう。各種花粉のプリックが陽性だったら、OASの合併の有無を聞いてみなければいけないと感じた。スギ花粉患者でトマトによるOASの合併はどのくらいあるのだろうか。
食物依存性運動誘発性アナフィラキシーは消化不良が原因?
第104回日本皮膚科学会総会から(平成17年4月23日)
小麦によるについての研究報告。まず小麦の主要なアレルゲンと考えられるω5-グリアジンに注目し、ELISAによって血中の抗原量を測定した。個々の症例で見ると、アナフィラキシーの症状が出ているときの血中グリアジン濃度が症状のないときより高くなっていた。小麦摂取後に運動負荷をかけると血中グリアジン濃度が上がり、アスピリンの内服によっても、同様に血中抗原量の増加が見られた。運動やアスピリンのために、未消化な原因抗原がたまることによって、アレルギー症状が励起されるという可能性がある。
抗原量が増加するというのは驚きで、貴重なデータだと思った。消化酵素と併用することで運動をしたりアスピリンを内服しても、発症を予防できるのであろうか。
トンズランスはもともと日本にあった
第104回日本皮膚科学会総会から(平成17年4月23日)
柔道、レスリング競技者のタムシ、頭部白癬で有名になったTrichophyton tonsuransは、ribosomal
RNAのITS領域の塩基配列から、柔道型のNTS1とレスリング型のNTS2に分けられる。最近では競技人口の多い柔道型が増え、レスリング競技者でも半分は柔道型になってきている。これとは別に1926年に長崎で、black
dot ringwormから検出された、Trichophyton coccineumという菌があり、T. tonsuransと同種である可能性が高いとのこと。塩基配列のパターンからNaeI型と呼んでいる。
古くから日本にあったとは驚きである。歴史をたどる仕事というのは大変だが貴重だと思った。
妊娠中のメルカゾール内服による児の先天性皮膚欠損
第104回日本皮膚科学会総会から(平成17年4月23日)
30週で帝切で出生した双生児が、ともに頭頂部の皮膚欠損を伴っていた。母が妊娠26週まで甲状腺機能亢進症治療剤であるチアマゾール(メルカゾール)を内服していたことが原因かもしれない。添付文書にも、妊娠中の投与により、新生児に頭皮皮膚欠損、臍帯ヘルニア、臍腸管遺残、食道閉鎖症などがあらわれたとの報告がある、と書かれているとのこと。
全く知識として持ち合わせていなかったので、勉強になった。
フィブリンとフィブリノイドの違い
第6回北里臨床皮膚フォーラムから(平成17年4月7日)
フィブリンはまさに急性期の線維素性炎症の際に出てくるもので、PTAH染色陽性。皮膚の毛細血管はそれを支えきれるほど太くないので、周囲の結合織に流れてしまう。フィブリノイドはフィブリンに免疫グロブリンや補体がくっついているもので、PAS染色陽性。フィブリノイドになると核などの細胞成分も線維成分も見えなくなって、均一な染色性になる。なお、HEでエオジンに濃く染まるのがフィブリンで、フィブリノイドはそれよりやや薄く、もっと薄いのがヒアリンで、これは無構造で脂質が多く含まれている。
何度聞いても忘れてしまうので、今回はきっちりメモっておこう。
stasis panniculitisという病名は正しいか
第6回北里臨床皮膚フォーラムから(平成17年4月7日)
中年女性でいわゆる大根足の人に生じる、下腿の皮下脂肪織炎をどのような病名にするかの議論。病理学的にはlipolysisが一番最初に起きる変化で、進展すると組織学的にはlipogranulomaになる。これをそのまま症状名として用いて、その原因として@静脈性の循環障害、A外傷、Bリパーゼの逸脱(膵癌など)を検索し記載するのがよいと考える。
確かにlipogranulomaという症状名ないし病名は最近使わなくなってきてしまった。idiopathic
nodular panniculitis、Hypodermitis sclerodermiformis、Rothman-Makai症候群なども概念のはっきりしない病名で、lipogranulomaに戻った方がかえってすっきりするかもしれない。
後天性対称性真皮メラノサイトーシス
第110回横浜市皮膚科医会から(平成17年4月3日)
もともと幼弱な真皮メラノサイトが潜在しているところに、多くは紫外線照射が誘因となって色素斑が後天的に顕在化してくる、日本人に多い疾患。女性に圧倒的に多く、男性の約10倍の頻度。約10%の症例で母と娘に同症をみとめる。やや青みがかった灰褐色の色素斑は、頬では点々、額ではべたっとなる。女性では思春期以降の発症が多く、女性ホルモンとの関連も考えられる。男性では中高年に多く、アトピー性皮膚炎の増悪に伴って額や手背に発症することが多い。治療はQ-switch
ruby laserが有効である。
実際よく観察すると、決してまれな疾患ではないことに気づいた。アトピー性皮膚炎の男性例の手背にも、たびたびみられる変化である。「しみ」の鑑別疾患としても重要だと再認識した。
ベンハミエがやってきた
相模原真菌症講演会から(平成17年3月24日)
ペットショップ勤務の若い患者。形は環状でタムシを思わせるが、滲出性の炎症が強く水疱をきたすなど、まるで膿痂疹のような臨床症状が、前腕などのペットとの接触部位に生じる。原因菌はzoophilicな真菌であるArthroderma
bemhamiaeで、Torichophyton mentagrophytesのvariantと考えられている。ハリネズミなど、齧歯類のペットと一緒に輸入され、今後は一般の家庭ににも拡大していく可能性があり、注意が必要である。
「ペットショップ勤務」が問診の際のキーワードだろう。柔道部のトンズランスとともに覚えておかなくてはならない。
肉芽腫性口唇炎の鑑別疾患
横浜労災病院症例検討会から(平成17年3月17日)
肉芽腫性口唇炎を診たときに、考えるべき原因疾患は、1. Melkersson-Rosenthal症候群(日本人には顔面神経麻痺は少ない)、2.
クローン病・潰瘍性大腸炎の腸外症状、3. サルコイドーシス(顎下腺の肉芽腫を伴う)で、それ以外の場合には慢性の感染病巣の有無を検索すること。なお、肉芽腫性口唇炎はほとんどの場合に顔面にrosaceaを伴っており、先天的な血管・リンパ管の異常が基盤にあるのではなかろうか。
特にrosaceaとの関連については注目してみていこう。
栄養障害特に低アミノ酸血症による壊死性遊走性紅斑
第19回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成17年3月17日)
グルカゴノーマ症候群に典型的な壊死性遊走性紅斑は、メープルシロップ症候群、肝硬変などに伴う低アミノ酸血症においても認められる。治療的には外用のみでは不十分で、アミノフリードの点滴で改善するが、原疾患の検索がもっとも必要である。組織学的には表皮の壊死、栄養障害で、真皮に炎症がないのが特徴であり、したがって臨床的には丸くならず、辺縁が不規則な暗紅色斑となる。
グルカゴノーマ症候群では血糖の上昇のためにタンパク質が動員され、したがって低アミノ酸血症が発生するとのことであった。基礎疾患の鑑別が、確かに重要であると感じた。
皮膚欠損創の治り方(contractionとepithelization)
第13回皮膚科在宅医療勉強会から(平成17年3月3日)
マウスの熱傷モデルで、皮膚欠損創被覆剤の治療効果を、上皮化(epithelization)と創収縮(contraction)にわけて観察した。一般的にepithelizationが主体だと若干時間がかかるが創はきれいで、contractionが主体だと早いが、創は瘢痕になる。いくつかの被覆材の中では、ハイドロゲル製材がもっともcontractionが少なく、epithelization主体で創が閉鎖していくため、美容的にはもっともきれいであった。
ハイドロコロイドに比べて自着性がないために、使いづらいと考えていたが、逆にそこが重要なポイントであると理解した。臨床の現場でもいわゆるモイスト・ウンド・ヒーリングを活用していく必要があると思った。
「くま」の鑑別
第68回日本皮膚科学会東京支部総会から(平成17年2月20日)
眼の下の「くま」は鑑別が必要で、1. 眼精疲労などによるうっ血で、青っぽい色調、2. 炎症後の色素沈着で、褐色。3.
加齢に伴う眼窩脂肪のherniation、いわゆるbaggy eye formation。このうち、3. は形成外科的な治療が有効である。
治療方針が異なるので、今後はしっかり鑑別していこう。
眼瞼下垂と肩こり、頭痛の関係
第68回日本皮膚科学会東京支部総会から(平成17年2月20日)
まぶたを上げる筋肉、上眼瞼挙筋が瞼板に付着している部分の挙筋腱膜が剥がれることによる眼瞼下垂を腱膜性眼瞼下垂と呼ぶ。この際、挙筋腱膜の裏にあって上眼瞼挙筋と瞼板をつなぐミュラー筋が伸ばされ、支配神経である交感神経が緊張し、通常は物を見上げる時、びっくりした時に反射的にしか収縮しない前頭筋や肩や首周囲の筋群が正面視でも常に収縮しているために頭痛・肩こり、人によっては便秘、手足の冷えなど自律神経症状が引き起こされる。
眼瞼下垂の手術を薦める際の参考になった
ストローク(ふれあい)の法則
第19回皮膚科心身医学研究会から(平成17年1月30日)
交流分析(TA)で用いられる「ストローク」ということばは、ある人の存在や価値を認めるための言動や働きかけと定義される。ストロークには、陽性のストローク(それを受けると快適な気持ちになるもの)、陰性のストローク(それをもらうと不快感や苦痛を味わうもの)、条件付きストローク(相手の行為や業績と引換に与えるもの)、無条件のストローク(その人の存在や人格そのものに対して与えられるもの)がある。ストロークには法則があって、1.
人は陽性のストロークを無条件に得ている限り安定している。2. 人は陽性のストロークが不足して心理的飢餓状態になると、陰性のストロークを集め始める。3.
陰性のストローク集めは、陽性のストロークが与えられないかぎり永遠に続く。4. 条件付きのストロークばかりを得ていると、陰性のストロークを集め始める。5.
ストロークがないことは人にとって最大のデメリットである。
特に家族の交流を評価する上で、重要な考え方である。皮膚疾患を抱える小児や老人にもあてはまるのではないかと思った。
心身症治療における家族面接の意義
第19回皮膚科心身医学研究会から(平成17年1月30日)
患者の治療に必要な家族とのかかわり方は、A. 診療関係の支援、B. 患者の心的環境の調整、C.
家族メンバー間の病的な相互作用の治療、D. 家族そのものの病理の治療、E. 家族代理の役割(小此木)であり、このうち、子供や思春期の患者では、家族面接、特に母親並行面接が有効である。家族関係のあり方が患者の症状に影響を与えている場合、患者への対応に家族が途方にくれている場合、家族が子供の病状を子育ての失敗と思いこみ、その責任を強く感じている場合、家族と子供の共生関係が強い場合、患者と家族の関係が心理ゲームになっている場合に考慮しないといけない。
アトピー性皮膚炎などの慢性疾患で、必要とは感じながらも、なかなか時間がとれない現状であるが、確かに必要な事だと感じた。
livedoを呈する抗リン脂質抗体症候群にみられた様々な自己抗体
第28回皮膚脈管・膠原病研究会から(平成17年1月27日)
livedo、難治性下腿潰瘍をきたす抗リン脂質抗体症候群では、ループスアンチコアグラント(LA)、IgG、IgM抗カルジオリピン抗体(aCL)、β2-グリコプロテインI依存性抗カルジオリピン抗体(β2-GPIaCL)以外にも、IgA-aCL、フォスファチジルセリン依存性抗トロンビン抗体(aPS/PT)が陽性の症例があり、これらの自己抗体も測定する必要がある。
血栓症と抗トロンビン抗体の関係は念頭におく必要があると思った。なお、LAの責任抗体といわれているaPS/PTは強皮症やCNSループスでも陽性率が高いとのことで、注目する必要がある。
抗DSG-1と抗DSG-3は両方測定する方が望ましい
第797回東京地方会から(平成17年1月15日)
臨床的にも病理学的にも落葉状天疱瘡から尋常性天疱瘡に移行したと考えられる症例において、経時的に抗デスモグレイン抗体を計測した結果、当初はDSG-1が単独陽性だったが、尋常性天疱瘡への移行とともにDSG-1とDSG-3の両方が陽性となった。また尋常性天疱瘡に移行したあとも粘膜疹は出現せず、それは粘膜疹を発症させるには抗DSG-3の値が低かったためと考えた。抗DSG-1と3を両方測定することは、1.
病型の判定、2. 病勢の把握、さらに3. 移行の予測のために必要である。
抗DSG-1と3は初診時以外では両者の保険算定ができないが、こういう症例をみると、やはり両方を定期的に追っていく必要があると感じた。
中枢性の痒みの制御薬
第19回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成17年1月8日)
皮膚の発疹がなににもかかわらず、全身性のかゆみをきたす、胆汁うっ滞や尿毒症患者では血中オピオイドペプチド値が上昇していることから、これが中枢性のかゆみのメディエーターと考えられる。オピオイドはμ、δ、κの3種類の受容体に結合し作用を発揮するが、μ−オピオイド、κ−オピオイドはいずれも鎮痛的に働き、かゆみに関しては、μ−オピオイドで増強し、κ−オピオイドでは抑制する。今後はμ−オピオイド拮抗薬(ナロキソン)、κ−オピオイド作動薬(TRK-820)による治療が、特に透析中の患者の中枢性かゆみに対して行われていくだろう。
待望の薬剤であるが、注射剤らしい。
「かゆみ過敏」とC線維
第116回神奈川県皮膚科医会から(平成16年12月5日)
健常人ないし健常皮膚では痒みを感じないようなわずかな刺激(熱・電気・酸・ピンプリックなど)に対しても、痒みを感じてしまう状態を「かゆみ過敏」という。また、かゆみ刺激が続いた状態で痛み刺激を加えると、かゆみを感じるとのことである。アトピー性皮膚炎や乾燥はだでは、この「かゆみ過敏」の状態である。また、乾燥はだが48時間持続すると、末梢神経のC線維が表皮まで到達することが観察され、「かゆみ過敏」さらには湿疹の病態と関連している可能性が高い。
実際の生理学的実験によるデータであり、今まで何となく印象として思っていたことを実証する貴重な話であった。
intransit metastasis
第2回横浜みなと皮膚科懇話会から(平成16年11月18日)
悪性腫瘍において、原発巣に接触せずそこから少し離れた場所に転移巣を認める場合を、intransit(原発巣がリンパ節に向かって転移する途中の)metastasisと呼ぶ。皮膚腫瘍ではメラノーマで時に認められるが、有棘細胞癌やメルケル細胞癌でも同様の報告がある。メラノーマでは、領域リンパ節を超えない、原発巣から2cm以上離れた場所の皮膚転移ないし皮下転移と定義され、これがあるとTMN分類ではN2bに分類され、stageIIIと評価されるので、治療方針を決定する上で注意が必要である。
いままで、認識していなかった。多中心性に発生した場合には鑑別が難しそうだが、今後は原発巣の周囲に注意して診察する必要があると思った。
片側性の舌苔
第109回横浜市皮膚科医会から(平成16年11月14日)
舌が通常は白く見える状態、舌の上に何らかのものがのっかっている状態(角化ではない)を舌苔(belaq)という。口腔内の温度の上昇、乾燥が原因であり、咽頭炎や扁桃炎に伴うことが多い。注目すべきは片側性の場合で、舌苔がついている側の耳下腺腫瘍や片麻痺があって、唾液の分泌低下を伴う際に生じる。
すばらしい観察であった。今後は舌の診察も心がけていこう。
舌に丘疹性、多発性の血管拡張をみたときに考える全身疾患
第109回横浜市皮膚科医会から(平成16年11月14日)
舌に多発性の丘疹性血管拡張をみたときに念頭に置かなければならない全身疾患は、(1)PSS、(2)Osler病、(3)POEMS症候群、(4)blue-rubber-bleb
nevus syndromeである。(4)は青みがかっているのが特徴で、鑑別が可能である。
POEMSは鑑別診断としてなかなか出てこない。大変参考になった。
乳児の額の癜風はまれではない!
第109回横浜市皮膚科医会から(平成16年11月14日)
乳児の額の癜風の報告。数ヶ月で12名の患者が集まったそうである。脂漏性皮膚炎との関連がありそうだが、鱗屑の鏡検で菌糸が証明される。額や眉間に多く、お母さんがだっこをする時に、癜風の好発部位である胸と接触するために発生するのではないか、とのことであった。
これまで、そのように診断したことがないと思う。今後は乳児の眉間・額に注目して診察し、鏡検を行っていこう。母の癜風についてもみていこう。
学童のアゴに生じる毛孔性角化症
横浜労災病院症例検討会から(平成16年11月10日)
学童期の小児のオトガイよりやや頚部に近いところに、毛孔性の角化性丘疹を混じる表皮肥厚を伴った局面をきたす疾患があり、follicular
keratosis of the chinとして報告されている。テレビを見たり、マンガを読むときに、膝でアゴを支える姿勢をとるのが癖になっているために生じると考えられている。
おもしろい疾患である。今後、注目してみていきたい。
PSSに合併した角化性胼胝様結節
横浜皮膚疾患研究会から(平成16年11月4日)
PSSの末梢循環障害に基づいて発症した難治性の潰瘍と胼胝様の角化性変化を足趾にきたした症例の報告である。第1趾の切断後も断端周囲や足蹠にも同様の角化が再燃している。末梢神経障害、特にコントロール不良の糖尿病やハンセン氏病などにみらる病態と同じと考えられ、papillomatosis
cutis carcinoides Gottronと診断した。
忘れかけていた病名であった。最近、脛骨複雑骨折後に生じた末梢神経障害によって、足趾の潰瘍と鶏眼様角化性病変をきたした症例を経験したが、こう呼ぶのがふさわしいかもしれない。
スポロトリコーシスの潰瘍化は生体の防御機構である
第2回横浜デルマカンファレンスから(平成16年10月20日)
スポロトリクスを皮内に注入すると、そこには、まず好中球の浸潤がおこり、膿瘍を形成する。2週間ほどすると組織球も浸潤してくるが、注目すべきは、膿瘍がだんだん真皮の上方にあがって行くことで、膿瘍ごと病原体を上に押し上げ、最後は潰瘍化をきたして、それを経表皮的に排泄していくという免疫・防御機構が認められるようになる。
症例があれば、組織での膿瘍の位置に注目して見てみよう。
胸鎖関節炎に伴い、前胸部鎖骨下に生じた分枝状血管拡張
横浜皮膚疾患研究会から(平成16年10月7日)
RAが原因と考えられる胸鎖関節炎で、左胸鎖関節部に腫脹を来たし、それに伴って、左前胸部鎖骨下に分枝状の毛細血管拡張を生じた症例の報告であった。左腕頭静脈に閉塞があることが確認されている。
解剖学の知識が必要であると感じた。貴重な症例であった。
褥瘡が改善するまでの期間を予測する
第12回神奈川県皮膚科医会皮膚科在宅医療勉強会から(平成16年9月8日)
褥瘡の経過評価用DESIGN分類を、別々の症例・患部で比較できるように、各項目の重みを再評価した。D:深さが15点、E:滲出液が30点、S:大きさが150点、I:感染が15点、G:肉芽組織が10点、N:壊死組織が3点、P:ポケット形成が80点とすると、治癒までの日数の予測を行うことができるようになった。予後予測用DESIGN修正版はこちら。
詳細な観察に基づく多くのデータの蓄積からなる、敬服すべきデータである。さっそくあしたからの褥瘡診療に応用していきたい。
褥瘡の治癒遷延状態に見られる症状
第12回神奈川県皮膚科医会皮膚科在宅医療勉強会から(平成16年9月8日)
褥瘡の肉芽形成期に治癒の遷延をきたす場合は、以下の4点に注目する必要がある。1.DinD(褥瘡の中に圧迫による褥瘡を生じている)。2.白っぽい不良肉芽(潰瘍の底が除圧不足による血流障害をきたしている)。3.創縁の血流障害(潰瘍のふちに圧迫が加わり、壊死をきたしている)。4.クレバス(肉芽組織中がしわになって、中央にスジを形成し、優良肉芽の形成が見られない)。
日常よく目にする状態が整理できた。それぞれに対応が異なるので、注意して見ていきたい。
コントロールが難しい乾癬:男性、若年発症、肥満
第19回乾癬学会から(平成16年9月5日)
尋常性乾癬の管理上、コントロールが難しい症例はどういった特徴があるかを統計的に観察すると、1.男性、2.初診時年齢が25歳以下、3.BMI(body
mass index)が25以上、の3点が重要であった。今後、治験や統計的観察を行う際には、例えば「男性で、25歳以上で、BMIが25未満の症例」など、それぞれのグループにわけて解析をする方がよい。
コントロールの難しい群と容易な群が混ざっていると、治験の際の効果判定などにばらつきが出てしまうので、非常に重要な指摘であった。日常の臨床にも役に立つデータだった。
足の第4趾の爪が丸い病気
横浜皮膚疾患研究会から(平成16年9月2日)
足の第4趾の爪が丸くなっていて、のびると下に食い込んでくるという疾患がある。第4趾爪甲前方彎曲症といい、伴性劣性遺伝で男性に多い。症状は出生時からみられ、通常は両側性であるが、片側の場合もあるとのこと。
始めて耳にした疾患である。何となくこの疾患の患者さんに遭遇したことがあるような気がするので、過去の症例を調べてみよう。こういう疾患は知らないと診断できない。なお、手の第2指におこる、先天性示指爪甲形成異常症との関連はなさそうである。
乳酸菌を摂るとかぶれがよくなる!
第34回日本皮膚アレルギー学会から(平成16年7月18日)
乳酸菌を加熱処理した菌末を内服すると、接触皮膚炎の感作経路と発症経路の両方で抑制がかかり、接触過敏症が起こりにくくなる。ニッケルや松ヤニなどの接触皮膚炎の症例で、症状が改善し、パッチテストの反応も弱くなった事が示された。
歯科金属が原因の1つと考えられている異汗性湿疹や、職業上、原因物質との接触が避けられない美容師さんのかぶれに使ってみる価値があると思った。
one fingertip unit(軟膏使用量のめやす)
第34回日本皮膚アレルギー学会から(平成16年7月18日)
軟膏を塗る際に量のめやすとなる単位である。指の先からDIP関節まで、チューブを搾って軟膏を出すと、これが0.5gにあたる。これをひとつの単位として、one
fingertip unit と呼ぶ。片手の裏表に軟膏の外用をすると、ちょうど 1unitでまかなえる。さらに足は 2unit、上肢は
3unit、下肢は 6unit、胸とおなかであわせて 7unit、背中とおしりであわせて 7unit、顔面・頚部は 2unitがめやすである。全身に軟膏を塗るには、計算上1x2
+ 2x2 + 3x2 + 6x2 + 7 + 7 + 2 = 40unit、つまり1回20gの軟膏が必要である。
どのくらい患者さんが軟膏を塗っているかの把握、どのくらい塗るべきかの説明、保険請求の時に処置で使った軟膏の量の目安として使えると思った。
PSSでプロスタグランジンを使う理由
第115回神奈川県皮膚科医会から(平成16年7月4日)
末梢血管拡張作用のあるPGI2誘導体は、PSSの指端潰瘍に有効だが、そのほかにも肺高血圧症の予防、また抗リン脂質抗体症候群の血栓形成予防にも有効で、一石三鳥である。PSSの診断がついたら早期に使っていく方が良い。
なるほど。脳出血などの心配はあるが、その通りにしよう。
ステロイド全身投与のQ&A
第115回神奈川県皮膚科医会から(平成16年7月4日)
ステロイドの全身投与の際に知っていくべきことのまとめ。
・生体は1日プレドニソロン(PSL)を5mg作っている。
・PSLを恒常的に5mg/day以上使用する場合は、ビスフォスフォネートを使用する。
・PSLが20mg以下なら日和見感染なし。20-40mgでは7倍、40mg以上では35倍。
・静注するときには50%増しで内服と同量になる。
・減量の目安は2週間で10%。60→50→40→35→30。
・内服は分割の方が効果的。40mg 朝1回より、20mg 朝夕2回の方が効く。
・減量中の再燃は2倍量に戻って再スタート。
・PSLは胎盤を通らない。rinderonは胎盤を通過する。通常妊婦にはPSL。胎児の治療はrinderon。
・授乳は4時間あければ問題なし。特に30mgまでならいつでもOK。
知らなかったことがたくさんあった。とても大事な内容だった。永久保存版。
肺線維症の血清中マーカー
第115回神奈川県皮膚科医会から(平成16年7月4日)
肺線維症では以下の2つのマーカーを同時に測定した方が良い。1. KL-6:
特異度が高い。2.SP-D (surfactant protein D): 特異度は低いが感度が高く、治療による反応を見る際にふさわしい。
SP-Dは知らなかった。どちらも保険適応だが、残念ながら両方の請求はできないようだ。
PSSにおけるtopoI 抗体価と活動性の相関
第115回神奈川県皮膚科医会から(平成16年7月4日)
PSSでtopoI 抗体が陽性であっても、その30%はlimited typeである。diffuse
typeのPSSでも発症から6年をすぎると硬化が改善し、topoI抗体価が低下する例がある。抗体価が100u/ml以下の場合は、症状は安定しており心配はない。100u/ml以上の症例では、そのうち45%が抗体価の変動がなく症状も不変、30%は抗体価が低下して、症状も改善。25%が抗体価の上昇をきたし、症状が増悪するという結果が得られた。
topoI 抗体はdiffuse typeのPSSの診断に有用であることは常識だが、抗体価の変動が活動性の指標になる事は知らなかった。重要な統計であったと思う。なお、抗U3-RNP抗体(抗核抗体でnucleolar
pattern)が陽性のPSSが肺高血圧症をきたしやすいこと、抗RNA polymerase抗体陽性のPSSが肺線維症が軽く、ステロイドで硬化が改善する予後良好タイプであることも初耳だった。
抗ARS抗体症候群
第115回神奈川県皮膚科医会から(平成16年7月4日)
抗アミノアシルtRNA合成酵素抗体は皮膚筋炎で検出されることのあるJo-1抗体の親戚で、免疫沈降法で検出可能である。この抗体が陽性である症例は、1.
MCTD的な臨床症状であるにもかかわらず、抗RNP抗体が陰性。2. 間質性肺炎・肺線維症を伴うが慢性進行型で致死的ではない。3.
メカニックハンドと呼ばれる手指の関節変形と多関節炎をともなう。4. 発熱、レイノー症状をともなう。5.
皮膚筋炎の30%でみられるが悪性腫瘍の合併はない。6. 筋力低下が軽く、ステロイド反応性がよい。以上のような特徴がある。
恥ずかしながら初めて耳にした。北里大学の膠原病外来をやっていた頃には、きっとそのような症例を診ていたのではないかと思う。今後は疑わしいケースがあったら検査を依頼しよう。
パルボB19による紫斑を混ずる紅斑
第16回横浜北部皮膚科臨床懇話会から (平成16年6月2日)
伝染性紅斑(リンゴ病)の原因ウイルスであるヒトパルボウィルスB19の感染によって生じた、papular-purpuric
"gloves and socks" syndrome (PPGSS) の11歳女児の症例が報告された。発疹は左右対称性に手関節部、足背・足関節部にみられる紫斑を混じる紅斑性丘疹で、組織学的には血管障害を伴う滲出性紅斑の所見であった。ヒトパルボウィルスB19のIgM抗体は高値であった。関節痛を伴うこともあり、臨床的にアナフィラクトイド紫斑病との鑑別も重要なポイントである。
伝染性紅斑以外にもパルボB19感染症があることを再認識した。あやしい症例があれば抗体価の測定をしてみよう。
小麦アレルギーのアレルゲンは「小麦」ではない!
第20回日本臨床皮膚科医学会から(平成16年5月23日)
小麦に含まれる蛋白質は、水溶性蛋白と不溶性蛋白に分けられる。小麦アレルギーや小麦の関与する食物依存性運動誘発性アナフィラキシーのアレルゲンはグルテンと考えられているが、これは不溶性分画に属する蛋白である。通常のRASTの「小麦」および鳥居のプリックテスト用試薬の「小麦」は、実は水溶性蛋白抗原であり、グルテンは含まれていないので、解釈の際には注意が必要である。なお、RASTではグルテンに対する特異的IgEが測定可能であり、また、鳥居のプリックテスト用試薬では「パン」がグルテンを多く含む強力粉を用いて作成されている。
これは皆、知らないのではないか。当院でもプリックテストを施行するケースがあるが、「小麦」を用いていた。さっそく明日「パン」をたのんでおこう。
歯科治療後に生じた蕁麻疹の原因は?
第20回日本臨床皮膚科医学会から(平成16年5月23日)
症例の報告である。歯科治療の30分後に全身に蕁麻疹が生じ、アナフィラキシーに至ったケースで、原因の検索が行われた結果、根幹貼薬剤のホルマリン
グアヤコール(FG)が原因であった。ホルマリンはガスなのでそれ自体はアレルゲンとはなり得ず、ホルマリンで変性したアルブミン蛋白がT型アレルギーの原因となったらしい。
蕁麻疹と歯科治療との関連を今後患者さんに聞いてみよう。
紅斑でもない、血管拡張でもない赤み
第20回日本臨床皮膚科医学会から(平成16年5月22日)
赤く見える発疹で、紅斑でも、血管拡張でもないものがある。表皮の栄養障害をきたす病態がそれである。これにあたる疾患は、亜鉛欠乏症、壊死性遊走性紅斑、ペラグラの3つで、それらの臨床と病理を想像すること。
なるほど、共通点があるなと思った
ジクジクした場所で真菌が見つかりにくい理由
第20回日本臨床皮膚科医学会から(平成16年5月22日)
白癬菌がスーっと根をはるように四方八方に広がるのは、菌にとって住みやすい環境にある場合である。ひとたび滲出液や白血球に出会うと、白癬菌はのたうち回るように徐々に鎖状になり、さらに丸いイースト状になって休眠状態に陥る。そのうちのいくつかが生き残り、再び根を伸ばしていくことになる。
ジクジクした趾間型白癬で、糸状菌が見つからないことをよく経験する。丸い隔壁のイーストを見落としているかもしれないので、今後は気をつけてみてみよう。
アトピー性皮膚炎発症の予測
第4回横浜心身症アレルギー研究会から(平成16年4月22日)
予防医学的な見地からの話で、数多くのお母さんと赤ちゃんの前向きコホート調査から、次のような事が判明した。臍帯血の非特異的IgEが500u/ml以上で、かつ新生児の血清中の非特異的IgEが5u/ml以上だと、その児が3歳児検診でアトピー性皮膚炎を指摘される確率がきわめて高いとのこと。
悪い予測はなかなかしたくないし、新生児の採血も難しい。開業医にはできないが、なるほど、そういうものかと思った。
スギ花粉の季節に肌があれる理由
第4回横浜心身症アレルギー研究会から(平成16年4月22日)
スギ花粉症の人はその季節になると、皮膚の「チクチク度」が増加する!乳酸に対する刺激性を頬の皮膚でみた結果であるが、その原因として、角質水分量や経皮的水分喪失量は異常がなく、形態学的に角層の乱れもなかった。しかし角層内の神経栄養因子(NGF)が増加していた。花粉飛散の時期を過ぎると改善するとのことで、スギ花粉が皮膚過敏性に対して何らかの作用をしていると考えられる。
スギ花粉症の患者さんにこの季節、まぶたの湿疹ができてしまうことをよく経験するが、何か関連がありそうだ。
疥癬が歩いた!もぐった!
第103回日本皮膚科学会総会から(平成16年4月18日)
疥癬虫が歩いた、というか走った。1分間に5cm移動した。そして、テントウムシのように指を登ったりくだったりして、30分後にしわに沿った所で止まって皮膚を掘り始めた。20分後に頭半分をもぐりこませ、その後は1日に0.4mm、途中で空気穴をあけながら、トンネルを作っていった。疥癬虫は体長0.4mmで、10円玉の裏にある平等院の屋根のはじっこに乗っかっている鳳凰と同じ大きさだとのこと。胸の黒い点は、皮膚にもぐっていてもダーモスコピーがあれば確認できる。それにしても楽しい人体実験であった。ただし1年後の今も時々かゆくなるらしい。
いやぁ、疥癬が動いているところを始めてみせていただいた。わざわざ京都に行った甲斐があった。
皮膚筋炎の「ゴットロン疹」をどう定義する?
第15回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成16年3月11日)
皮膚筋炎の皮膚症状の一つにゴットロン疹があり、難病情報センターのHPでは、「手指関節背面の皮が剥けた紫紅色の皮疹」と説明されている。しかし、この皮膚症状は
Dr. Gottron が定義したものではなく、色々な Dr. の色々な解釈であって、どういう皮膚症状をさしているか、統一した見解がない。我々が目にすることの多い、皮膚筋炎の手指関節背面の皮膚症状は、上記のような紫紅色萎縮斑であるが、これは、罹病期間が長いためにそうなるのであり、始まりは、おそらくムチンの沈着による丘疹の変化であると考えられる(皮膚筋炎のムチンはメタクロマジーを呈する事が特徴で、
SLEに伴うムチンとは性質が異なる)。その後、基底層の液状変性が顕著となり、 始めは顆粒層の肥厚や表皮の乳頭腫状の変化があって、臨床的にも敷石状にみえるが、その後は徐々に表皮の萎縮が生じ、血管拡張もめだってくる。
ゴットロン疹は年齢や罹病期間とともに変化すること、組織学的には皮膚筋炎の皮膚症状そのものであることを覚えておくことが重要である。
よく使用する用語でも、よく考えると、定義が曖昧なものも多い。記載をするからには、それが何を指しているのかを理解し、場合によってはその用語の歴史を知る必要があると思った。
表皮の stem cell
第2回神奈川皮膚臨床研究会から(平成16年3月6日)
表皮には増殖・分化のかなめとなる stem cell が存在する。stem cell は真皮乳頭の突端が接触する表皮基底層にある。β1インテグリンを強く発現し、真皮と強く癒着して局在を維持している。それ自身の増殖は遅いが、増殖の早い
transient amplifying cell (TA細胞) の「もと」となる。そしてさらに、TA細胞は post mitotic
cell へと分化し、表皮の最外層である角層を形成していく。尋常性乾癬においては、表皮細胞の増殖が通常より亢進するため、乳頭部の直上に存在するすべての
stem cell を支点として表皮細胞が増殖し、2つの増殖する表皮がぶつかり合ったところが、下へと伸びていくために、表皮の延長が病理学的に生じることになる。また、尋常性疣贅においては、ヒト乳頭腫ウィルスの感染がこの
stem cell におこると考えられており、一つの stem cell が増殖する範囲で表皮細胞の増生が起こるために、となりあったイボがモザイクを形成することになる。
表皮に stem cell があることは何となく理解していたが、その局在や、疾患との関連を認識したのは今回が初めてで、非常に勉強になった。
ステロイド軟膏外用による「異型湿疹」
第1回横浜デルマカンファレンスから(平成16年2月26日)
ステロイド軟膏の外用は湿疹・皮膚炎の治療において、きわめて一般的で、かつ有効な治療法である。しかし、生物学的に皮膚という臓器をとらえると、たとえば接触皮膚炎の病態は、角層に付着した生体にとって有害な異物ないし抗原物質に対する生体防御反応であり、これらの侵入を防ぐために、(1)
角層は増加し、(2) 表皮が肥厚し、(3) 角化のターンオーバーが促進されることによって、有害物質を除去するように働いている訳である。ここで、ステロイド軟膏を外用すると、角層がはがれにくくなり、spongiosisが見られなくなり、表皮の肥厚も起こらず、ターンオーバーが抑制され、異物や抗原物質の除去が遷延化してしまう。さらに、Langerhans細胞の数も減って、樹状突起も少なくなってしまう。今後は、湿疹がステロイド外用剤によって「異型湿疹」と呼ぶべき状態に陥っていないかを見極め、いわゆる局所的免疫不全が病態に関与していないかを念頭において診療にあたるべきである。
「かぶれ」のステロイド外用は、皮膚科医にとってごく当たり前の治療であると考えていた。しかし、今後は、ステロイドの外用で、かえって免疫抑制をかけてしまって、不都合がないかどうかを考えながら、治療にあたる必要があると思った。
肝硬変の人は、夏に生魚を食べてはダメ
第788回東京地方会神奈川分会から(平成16年1月17日)
肝硬変の人が、夏場にアジやボラなどの生魚を食べると、Vibrio vulnificusによる敗血症を生じ、急性腎不全で死亡する例がある。症状は生食いの24時間後ぐらいから急速に始まり、抗生剤で救命できないことが多い。皮膚症状は、四肢の敗血症疹(有痛性紅斑)で、急速に壊疽に陥る。この菌は食中毒のVibrioとは関係なく、22℃以上の海水に住む魚には、ほとんど付着しているとのこと。日本近海では7月から9月には海水が22℃以上となるので、九州などの南日本では、特に注意が必要。ただし、温暖化の影響もあって最近では東北地方の海水もこの温度に達するようだ。しかし、この感染症は、正常人で発症することはまずない。この菌は鉄の多いところで増殖するらしく、肝硬変の人は血中トランスフェリンの減少のため、血清鉄が高くなっており、したがってこの菌の増殖が早いらしい。
発症すると生命に関わる事態になってしまうので、肝硬変の患者さんに教えてあげる必要があると思った。
蕁麻疹がステロイドで悪化する?
第17回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成16年1月10日)
アスピリン不耐症はCOX1阻害剤に対する過敏症で、皮膚科的には蕁麻疹やアナフィラキシーを生ずることが知られている。この疾患では、コハク酸エステル構造のステロイド剤(ソルコーテフ・サクシゾン・ソルメドロール・水溶性プレドニン)に過敏症を示すことがあり、これらの静注によって症状が増悪することがある。したがって、リン酸エステル構造のステロイド剤(水溶性ハイドロコートン・デカドロン・リンデロン)を選択するほうが安全である。また、抗ロイコトリエン受容体拮抗薬(オノン)が有効なことがある。
即効性のステロイドというと今まではソルコーテフを使うことが多かったが、考え直さねばならない。
ACE阻害剤による血管神経浮腫
第17回神奈川皮膚科免疫アレルギー懇話会から(平成16年1月10日)
高血圧症や蛋白尿の治療で用いられるACE阻害剤の内服によって、血管神経浮腫(クインケ浮腫)を生じることがあり、注意が必要である。内服を開始してから5日後に生じる例もあり、診断が容易でない。あごのまわりや舌に好発するが、まれに気道に生じて呼吸困難につながることもある。治療は薬剤の中止に加え、抗ヒスタミン剤が一般的だが、抗エストロゲン製剤であるダナゾールやトランサミンも有効とのことである。
知らないと質問ができない。今度さっそく聞いてみようと思った。
ビタミンB12欠乏による色素沈着
第14回横浜北部皮膚科臨床懇話会から(平成15年12月11日)
顔面、体幹、手掌、爪の色素沈着がビタミンB12の欠乏によって生じる!呈示された女性の症例は悪性貧血があり、顔面や体幹にまだら状の不規則な褐色色素斑を伴っていた。Hunter舌炎はなし。手掌や爪も濃さの違う汚らしい色素斑を認めた。しかし、悪性貧血の治療で、ビタミンB12の筋注続けたところ、次第に色素沈着が改善していき、爪は基部から、正常色へと変化していった。
絶対に見逃していると思うので、変な色素沈着の患者さんがあったら、貧血、場合によってはビタミンB12の検査をしようと思った。
LDLアフェレーシスによるコレステロール結晶塞栓の治療
横浜皮膚疾患研究会から(平成15年12月4日)
コレステロール結晶塞栓の治療に、LDLアフェレーシスという方法が有効である。リボソーバーという血漿中のLDL(及びVLDL)を選択的に吸着する機器を用いて、二重濾過膜血液浄化を行うもので、従来は家族性高コレステロール血症、巣状糸球体硬化症、閉塞性動脈硬化症(ASO)の治療に利用されている。なぜ効果があるかに関しては、塞栓をきたしたコレステロール結晶がぬけるのではなく、血液、血漿粘度の低下や血液凝固因子の減少、ブラジキニン産生増加に基づく血管拡張作用が改善の理由と考えられている。
治療に困る疾患なので、今度からは紹介しよう。ちなみに皮膚科でもASOの潰瘍でやってみてもいいのではないかと思った。
女性のうす毛の病態・治療
第1回神奈川皮膚臨床研究会から(平成15年9月13日)
特に更年期以降の女性にみられる「うす毛」をfemale pattern hair lossという。男性と同様にandrogenic
alopeciaと考えられている。時には思春期頃から認められ、心理的ストレスやダイエットが原因のことがある。貧血と甲状腺疾患に伴うこともあり、血算とマイクロゾーム抗体は調べた方がいいらしい。治療は欧米ではミノキシジルの外用をまず試みるようだが、日本で使えるミノキシジル(リアップ)は、いまのところ男性専用で、そのうちに女性用のリアップが出るそうだ。ケトコナゾール(ニゾラール)にも若干の発毛効果があるとのこと。
あまり今までは意識しなかったが、これからは検査や治療をやっていこう。ケトコナゾールがよいなら、ミコナゾールシャンプーはどうだろうか。薬局で手に入るので勧めてみよう。
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